第183話 CASE:ちゅん介 with カッポレ(3)
「ちゅん介、いいか?この森の何処かに見た事が無い魔物がいるはずだ。探し出して俺に報告するんだ。わかったか?」
ご主人に連れられて、ようやく目的地に着いたちゅん。
今回のご主人の仕事は、この森にいる見た事が無い魔物を探す事らしい。
結構、大きな森だけど空から探せば、きっとすぐに見つかると思うちゅんよ!
ご主人の問いかけに「わかった」と頷いてみせ、僕は大空へと羽ばたいていく。
まずは西の方へ向かってみるちゅん!
そう進路を定めて、森の些細な変化を見逃さないように慎重に気をつけながら飛んでいく。
「特に変わったところは無いと思うちゅん……」
今の所、生息が確認出来た魔物はコブリン、オーク、芋虫、カブトムシ……その辺りの何処の森でも見かけるような魔物ばかりだ。つまり取り立ててて、おかしな魔物では無いと言う事だ。
「取りあえず、端まで飛んでいくちゅん!」
まだ、探索は始まったばかり。今のところはまだ確かに変わった所はないけれど、ご主人がいるって言ってるのだから、きっとおかしな魔物はどこかにいると思うちゅんよ。
僕がその魔物を見つけたら、きっとご主人は喜んでくれるちゅん!
そんな事を考えると、もりもりと力が湧いてくるちゅんよ!
もし、見つけたらご主人なんて言って褒めてくれるだろうなあ?
『ちゅん介、よく頑張ったぞ!さすが俺の従魔だ!』
きっとこんな感じちゅん!むむむ、これはやる気が漲ってくるちゅん!
すごく張り切って探すちゅん!!
脳内ご主人に褒められて、やる気マックスになった僕は少しずつ場所を変えながら、探索を続けたちゅんよ。
「あ、あれはなんだちゅん!?」
よく見ると鷲型の魔物に、僕と同じの雀族の魔物が襲われているちゅん!
これは一大事だっ!助けないと食べられちゃうちゅん!
僕は上空から鷲魔物の背後を取り、全力で種族スキルの【雀アタック】を使って吶喊する。
「ちゅーん、ちゅんちゅーん!!」
【雀アタック】は1分間の間だけ、体が石のように硬くなり、音速で飛ぶ事が出来るようになるスキルだちゅん!僕たち雀族の切り札ちゅん!
僕という伏兵の存在に最期まで気がつかなかったのだろう。
そして、口に咥えている同族を食べる事に夢中になっていたのだろう。
全く無警戒な鷲族の背中に僕の【雀アタック】は会心の一撃を与えたのだ。
「ピギャーーーー!!」
鷲族は加えていた僕の同族を放り出し、錐揉みしながら地面に激突する。
僕は反撃される可能性を考えて、更に追い打ちで【雀アタック】を敢行する。
地面に衝突し、ピクピクと痙攣する鷲族の体に再び僕の【雀アタック】が炸裂し鷲族は絶命する。
「やったちゅん!」
僕は鷲族に咥えられていた同族の元へと、急いで飛んでいく。
「大丈夫かちゅん!?もう大丈夫ちゅんよ!鷲族はもういないちゅん!」
鷲族に強く噛みつかれたのだろう、翼は折れ曲がりちぎれ掛かっていた。
そして、胴体からはどくどくと血が流れている姿を見て、僕は動揺してしまう。
!!!!!!
そして、同族の顔を見たとき、僕の心は張り裂けんばかりに高鳴った。
「ちゅん美ちゃん!!!!!」
そう、目の前で無残な姿になって横たわっているのは、僕の大好きな幼馴染みのちゅん美ちゃんだったんだ。
あわわわわ、どうするちゅん?どうするちゅん?ちゅん美ちゃんが死んじゃうちゅん!!
『わふっ!これをちゅんすけ、おまえにやる!』
脳裏に最近知り合った狼の魔物、わっふるの言葉が蘇る。
そ、そうだ!わっふる達から回復薬を貰ったんだった!!なんでもわっふる達のご主人が作った薬らしい。
緊急用にとわっふる達の首輪にいつも入れている物だそうだ。
この前の迷宮で、死にかけた僕にわっふるはすごく気を遣ってくれていた。
回復薬をくれたのも、僕の身を案じてくれたからだ。
ありがとうわっふる!今、貰ったこの薬、使わせて貰うちゅんよ!!
回復薬を早速、今にも死にそうなちゅん美ちゃんに振りかけると、流れ出ていた血が止まり傷が回復していくのが分かる。
これで、ひとまずは安心だちゅん。……けど、予断は許さないちゅん。
お医者さんに見せないと、ちゅん美ちゃんは死んじゃうちゅん。
とにかく、ちゅん美ちゃんを背負ってご主人のところに戻るちゅん。
きっとご主人なら、僕を助けてくれたときみたいにちゅん美ちゃんを助けてくれるちゅん!。
「……だ……れ?」
「ちゅん美ちゃん!気がついたちゅん!?僕ちゅん、ちゅん介ちゅん!」
「……わたし……死んで……ないの?」
「大丈夫ちゅん!僕が絶対にちゅん美ちゃんを死なせないちゅん!少しだけ頑張って欲しいちゅん」
「あ、ありがとう……ちゅん介……」
◆◇◆◇◆
『ご主じーーーーーん、ご主人~~~~~~~~っ!!』
弱っているちゅん美ちゃんを背負って僕は急いでご主人の下に戻った。
「ん?えらく早いじゃねえか。……ああ?何だ?その死にかけの雀は?」
『ご主人!僕の幼馴染みのちゅん美ちゃんだちゅん!助けて欲しいちゅん!お願いだちゅん!!』
僕は必死に身振り手振りでご主人に訴える。
今ほど、ご主人と意思の疎通が出来ない事を呪った事は無いちゅん!!
ご主人!ご主人!!!お願いだちゅん!!!ちゅん美ちゃんを助けて欲しいちゅん!!!
「んー?今夜のおかずに取ってきたのか?流石ちゅん介じゃねえか、中々気が利くじゃねえか!よしよし美味そうだぜ」
ち、違うちゅん!!!!!ダメだちゅん!!!!!!!ご主人、違うちゅん!!!!
ちゅん美ちゃんを食べたらダメだちゅん!!!!
僕の必死の訴えもご主人には届かない。
ご主人は僕の背中から、ちゅん美ちゃんを掴み取ろうと手を伸ばしてくる。
『ご主人、ちゅん美ちゃんを食べないで欲しいちゅん!!!!』
僕は慌てて、ご主人の伸びてきた手を避けて、空中へと逃げる。
こんな事をしている場合じゃないちゅん!ちゅん美ちゃんが死んじゃうちゅん!!
「ああっ!?何してんだ!ちゅん介ぇぇ!!!さっさとソレよこしやがれってんだ!ああっ!」
ご主人……。
「コラァ、ちゅん介ェェェ!!!俺の命令が聞けねえのか!!!この役立たずが!」
ダメだちゅん、涙が浮かんできたちゅん。
ご主人が僕を助けてくれた時の事が頭に浮かんでは消え、浮かんでは消えていくちゅん……。
『ご主人!ちゅん美ちゃんを助けて欲しいちゅん!!ちゅん美ちゃんは僕の大事な幼馴染みちゅん!!!!……お願いだからたすけてほしい……ちゅん……』
僕のお願いはご主人に届かない。
ご主人の頭の中にはちゅん美ちゃんを食べる事だけみたいちゅん。
……ダメだちゅん。ご主人……。
ちゅん美ちゃんは、……例え、ご主人のお願いだって絶対に渡せないちゅん!!!
ご主人……さよなら……ちゅん。
僕は、唯一ちゅん美ちゃんを助ける事が出来そうな相手。
わっふるとそのご主人を探すべく、一路王都へと向かうのだった。
お読み頂きありがとうございました。
活動報告とツイッターでも書かせて頂きましたが、書籍の発売日が決定しました。
6月10日(土)となります。
アマゾンでも予約販売が開始したようです。
また、活動報告にラフイラストを公開しております。
良かったら感想などお聞かせください。
■マインとアイシャ
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■シルフィとライル
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咲夜@小説家になろう:@Sakuya_Live
基本的にリプは行わない予定で、何かしらの報告事項があった時につぶやきます。
また随時行っております、名前募集等の読者様参加イベントの告知などもつぶやく予定です。
※スピンオフの更新を3/20に行わせて頂いております。
http://ncode.syosetu.com/n2978du/
今後ともどうぞ宜しくお願いします。