第182話 CASE:ちゅん介 with カッポレ(2)
CASE:ちゅん介は連続投稿の予定では無かったのですが、急遽(3)までは連続投稿しようと思います。一応、ちゅん介は幸せに、カッポレには悲惨な結末を考えておりますので、ところどころ、ちゅん介が不憫な感じになりますが、ご理解の程、お願いします。
「……まったくセシル団長にも、困ったもんだよな」
「ああ、第一騎士団のフランツ元団長が居なくなってから、歯止めがきかなくなったよな」
「いや、フランツ団長もそうだろうけど、やっぱりメリッサ副団長が居なくなったのが原因じゃないか?」
ちっ、騎士団って言ってもその実体は大した事はねえな。
陰でこそこそと愚痴ばかり、言ってやがる。
どいつもこいつも、俺の事など居ないように振る舞いやがって……!
俺はてめえらのボスから、スカウトされて来てやったんだぜ!言うなれば俺は剣客だ。
もっと、しかるべき態度って奴があるだろうよ。
……とは、言っても俺は生まれも育ちもこいつらとは違って下の下だってのは理解している。せっかくの好機なんだ、表面上は大人しくしておいてやるぜ。
だが、見ていろ!俺はでかい事をやり遂げる男だ。
今はこんなチンケな雀一匹しか配下がいねえが、もっとすげえ魔物を手に入れて必ずこいつらを見返してやるぜ。ククク、そのときになって慌てても俺はおめえらを許さねえぜ。
王都の診療所で、第二騎士団長自らのスカウトで一先ず、騎士団の別働隊員見習いとして所属する事になった。
主な仕事としては、有事の際は偵察任務。それ以外の通常時は寄宿舎内の雑用が主な仕事となる。
日常時の給金は、正直大した額じゃない。だが、有事の際の偵察任務では金貨1枚が最低限保証されている。
それに偵察の結果、何か大きな発見をすれば、更にボーナスも支給されると言う話だ。
はっきり言って、従魔の輪廻に所属していた時よりも給金はいいときてる。しかも、ここでテイマーは俺しかいないので、特殊な任務になれば、ほぼ俺一人で手柄を立てられるって言う寸法だ。
だから、俺はここを出て行く訳にゃいかない。
大手柄を立てて、こいつらに泣いてここにいて下さいと言わせなきゃならないからな!
しかし、テイマーのスキルをくれた神様にゃあ、感謝しなきゃならんな。
こうして足が動かなくても従魔が、雑用をどんどん片付けてくれるぜ。
ちゅん介の奴、魔物のくせに中々器用だからな!どんどん働いて俺を楽させてくれよ!
◆◇◆◇◆
「カッポレはいるか!?」
休憩室で俺が一息ついていると、セシル団長が呼ぶ声が聞こえてきた。
「ここにいますぜ、セシル団長さんよ」
俺がそう声を掛けると、セシル団長は珍しく少し緊張した様子で俺の元まで歩いてくる。
「カッポレ、仕事だ。従魔と共にエルムの森に行け!厄介な魔物が現れたという情報が騎士団の方に届いた。既に第一騎士団はエルムの森に向かっている。あいつらより早く、魔物の情報を手に入れなければならん。いいか、お前の従魔ならば空から索敵が出来る筈だ。いいか、あいつらを絶対に出し抜くんだ。抜かるなよ?」
「セシル団長よ、俺は足が動かねえんだ。エルムの森なんてどうやって行けばいいんだ?」
「馬を用意してある、騎士団の若い奴に馬は扱わせるから、お前はその後ろに乗せていって貰え。いいか、急げよ」
……やれやれ、噂には聞いていたが……。
やはりセシル団長さんは、第一騎士団に対して対抗意識が高すぎるって言うのは本当みたいだな。第一騎士団を出し抜くって、簡単に言ってくれるぜ。
だが、俺の力をアピールするいい機会ではあるな。
ここで手柄の一つでも立てておけば、今後の立場も変わってくるだろう。
「ちゅん介ぇぇぇ、仕事だ!とっと来やがれっ!」
◆◇◆◇◆
おや、ご主人が仕事で僕を呼ぶ声が聞こえる。珍しい事もあるもんだ。
声の感じからすると、どうも急いでいるみたいだね?
よし!僕、頑張っちゃうぞ!僕が頑張ればご主人の立場は良くなる筈ですちゅん!!
僕達を助けてくれたわっふるとクゥの恩に報いるためにもがんばるちゅんよ!
僕は手にしていた雑巾をきちんとたたみ、バケツのへりにヨイショとかけてから翼をはためかせる。
「ご主人、今いくちゅーーーーん!!!!」
僕がご主人の所にたどり着くと「遅いっ!」と怒られた……。
ご主人の言いつけ通り、おいら頑張って窓拭きしていたちゅん!!
……だからそんなに怒らないで欲しいのでちゅん……。
……ご主人のいいところは、一度怒ったらすぐに忘れる事!けど、なんだか今日は何度も何度も怒られるちゅんよ。最近のご主人は少し、様子が変わってしまったちゅん。
1年前、ご主人は弱って倒れている所を助けて貰ったのです。
ご主人は弱ってる僕に残り少ないパンを食べさせてくれたちゅん。
すごく、僕は嬉しかった……だから、僕はご主人が大好きなんだちゅん!
優しいご主人に戻って欲しいのです……ちゅん……。
ご主人に連いていくと、いきなりご主人は馬に乗った騎士に連れられてどこかに走り出していったのです。
「ちゅん!?」
僕は慌ててついて行きますが、馬と違って体が小さいのでスタミナがないでちゅん。
そんなに早く走られると……どんどん、離されていくでちゅん。
ご主人、待って!待って欲しいでちゅーーん。
◆◇◆◇◆
ん?ちゅん介が居なくなったぞ?……ああ、随分後ろの方にいるな。
ちっ、全く使えない奴め。
何かの役に立つかと思って、餌付けしてみたが見た目通り、弱っちいわ、体力は無いわで全く使い物になんねえ。
このまま、放っておいても構わないんだが、今回の仕事にはあいつが必要だしな。
仕方ねえ、待ってやるか。
「騎士の旦那、すまねえがうちの従魔が付いて来れねえみたいだ。追いつくまで少しまってもらえねえか?」
「……急いでいるのは分かっているな?」
ちっ、偉そうにしやがって!これもみんなちゅん介が悪い。
行き先が森だって言うからな、現地についたら何か他の魔物でも使役してみるか?いい魔物が手に入ったらら、ちゅん介は首に……いや、焼き鳥にして喰っちまうか?
まあ、今は取りあえず、ちゅん介の回収が先決だな。
「すまねえな、旦那。今回の任務はあいつがいねえと出来ねえし、悪いが少しだけ待ってくれ」
何とか、騎士を説得する事が出来た。馬は徐々にその速度を緩め、ゆっくりとその歩を進めていく。
少し待っていると、ちゅん介がはっきりと視界に入ってきた。
俺達が待っているのを確認出来たのだろう、少し飛ぶ速度が上がったようだ。
「遅いっ!」
そうちゅん介に怒鳴りつけると、申し訳なさそうな仕草を見せながら俺の肩へと着地する。
「旦那、すまねえ。行ってくれ!」
下げたくもない頭を下げ、騎士にそういうと再び馬は歩みを早めていく。
そして、遅れた分を取り返すかの如く、疾走を始めるのだ。
そう、エルムの森を目指して。
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