第18話 迫りくる不穏なモノ達
目当てのスライムから【獲得経験十倍】を奪い、一目散に森の外へと走ってきた。
流石に疲れたよ……。
スキルは使えば使う程、精神的に疲弊していく。
気分が高揚していれば余り疲弊しないが、落ち込んでいたりすれば疲弊度は高くなる。
とはいえ、そんなに極端に消耗するわけでは無いため、今まではそれを感じる事は無かった。
だけど、あの大量のスライムを相手にスキルを使用しまくれば流石に疲れちゃうよね。
草むらの上で寝転がり、自分を鑑定する。
名前:マイン
LV:9
種族:ヒューム
性別:男
年齢:15歳
職業:冒険者(F級)
【スキル】
鑑定・全LV2 (26/200)
カット&ペースト (19/200)
獲得経験十倍 (-/-)
短剣・極 (43/50)
片手剣 (0/50)
両手剣 (0/50)
片手斧 (0/50)
身体強化・小 (33/50)
脚力強化・小 (24/50)
視力強化・中 (16/50)
俊足(小) (26/50)
豪腕 (11/50)
鉄壁 (16/50)
扇動 (0/50)
気配遮断・中 (0/50)
魔法・火 (0/50)
魔法・水 (0/50)
魔法・風 (12/50)
魔法・回復小 (0/50)
補助魔法・速度低下 (2/50)
補助魔法・睡眠 (1/50)
補助魔法・徐々回復小(体力) (16/50)
火属性・耐性 (0/50)
水属性・耐性 (0/50)
風属性・耐性 (0/50)
土属性・耐性 (0/50)
光属性・耐性 (0/50)
闇属性・耐性 (0/50)
料理 (2/50)
裁縫 (0/50)
礼儀作法 (0/50)
交渉術 (3/50)
錬金術 (6/50)
清掃 (0/50)
テイム (0/50)
武技:サクセスィブショット (0/200)
……自分で言うのも何だけど、とんでもないなコレ。
使用していないスキルも含めて実に35種類。
神様から授かれるスキルが最大で三つだと言う事を考えれば、この数のスキルを持っているのは異常だと自分でも思う。
このまま成長すれば、王様よりも強くなっちゃいそうだ。
今日手に入れた【獲得経験十倍】が破格すぎるよ。
まさか、最弱と名高いスライムがこんなスキルを持ってるなんて……。
こんなスキルを持ってたなら、スライム最弱なんて言われない筈だ。
だけど余りに彼らは弱すぎて、こんなすごいスキルを持ってはいても、たった一体の敵を倒す事が出来なかったんだろう。
だから、こんな凄いスキルが無駄スキルとなってしまっていたんだろうなあ。
【獲得経験十倍】:常時発動型スキル、何か行動をし、得た経験値や熟練度等を本来得る値の10倍で得る事が出来る。
うん、何度見てもやばい。これは絶対に人に知られる訳にはいかないよなあ、やっぱり……。
貴族とか権力者に知られれば、面倒な事になりそうだし、騙されて奴隷のようにこき使われるかもしれない。
やっぱり誰かとパーティを組むのは難しいだろうなあ……。
そこからばれてしまうかもしれないね。
誰か強い力を持つ人が後ろ盾についてくれればいいんだろうけど、そんな人は都合良くいないしね。
だけど、せっかく冒険者になったのだから”仲間”という存在には憧れがある。
けど、それは叶わない夢だと思うと、無意識のうちに溜息が出てしまうのだ。
「はぁ……仕方ないかっ、よし大分疲れも取れたし急いでギルドに戻ろうっと!」
寝転がっていた状態から、一気に立ち上がると【身体強化・小】【脚力強化・小】【俊足(小)】を使用し、ルーカスの町へ向かって走り出した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「おい、やめておけって!」
酒場で騒ぎを起こし、自ら絡んでいった冒険者達にフクロにされたC級冒険者ライルに同じパーティメンバーの男が必死に声を掛ける。
ライルは顔や腕、足等に治療テープ(薬草を浸した回復効果のあるテープ)を張りつけた姿で、鎧などを順々に装備していく。
パーティの仲間の言葉を無視しつづけ、黙々と手を動かしていった結果、ライルの武装は整ったのである。
だが、不思議な事に彼の周りにいる他のパーティメンバーは誰もが軽装のままだ。
ましてや武器すら身の回りに置いていない。
ライル唯一人が完全武装しているのだ。
「マジで止めとけって……ギルド員同士の争いは不味いってのはお前だって知ってんだろ?ついこの前、揉め事起こしたヒヨルドの野郎がギルド長に制裁を喰らっちまった事だって知ってる筈だろ?」
仲間達が次々にライルを諭すべく声を掛けている。
どうも話の内容からすると、同じギルド員と戦うつもりのようだ。
基本的にギルドは同じギルド員同士の揉め事に口を挟む事は無い。
だが、それが命のやり取りに発展しそうな場合については積極的に介入される。
ギルド員同士が戦い、どちらかが命を落とすなどと言う事があっては、ギルドの戦力を自ら低下させる愚行となるからだ。
また、ギルド員が未加入の一般人を害した場合も当然介入はされる。
冒険者ギルドとは一般人を”客”とする営利団体に他ならないからだ。
客に対して暴力行為を行う、そんな団体に誰が好んで依頼をするのだろうか。そんな奇特な者は殆どいないだろう。
だからこそ厳格にルール化しているわけだ。
そう言ったルールを知っているからこそ、ライルの凶行を必死にパーティメンバーは止めようとしているのだ。
何しろ、パーティメンバーは一連託生である。
いわゆる連帯責任というヤツだ。
パーティの誰かが専属受付嬢を得た際、同じパーティメンバーが恩恵を受けれるように罰についても同様にメンバー全員が受ける事となる。
ライルが暴走した結果、ギルドに裁かれれば自分達も同様に裁かれる事になるわけだから、それは必死にもなるだろう。
しかし、そんな仲間達の必死の訴えはライルに全く届いていないようだった。
「ルーキーにこれだけ虚仮にされて、黙ってられるか!!俺はC級だぞ!?」
「何言ってんだ!?あの餓鬼はお前に対して何にもしてないだろうがよっ!そう言うのを逆恨みって言うんだ!みっともねえからやめておけって言ってんだ!」
一向に言う事を聞かないライルにパーティメンバー達も苛立ち始め、口調もドンドン険悪になってくる。
「やかましい!あの餓鬼さえ居なければアイシャだって俺の専属になったし、こんな怪我だってしてないんだ!俺が報復して何が悪いって言うんだ、寧ろあの餓鬼にこそギルドの制裁があってしかるべきだろうがよ!」
この言葉を聞いて、メンバー全員が悟ってしまった。
コイツはダメだ……何を言っても無駄だと。
「なあ、ライルよ。当然知ってんだろう?お前が裁かれれば、俺らも同じように裁かれるってよ。分かった上でその言葉を抜かしてんだろうな?」
「当たり前だろう、だが俺は悪くない!裁かれるのは餓鬼の方だっ!!だったらお前らが裁かれる事も無いだろうがよっ!それ位、お前らだって分かるだろう?ちったあ頭ぐらい使えよ!」
「……お前、本気で言ってんのか?」
「本気に決まってるだろう、この格好見て分かんないのかよ」
パーティメンバー達はお互いの顔を見合わせて、頷いた。
「……分かったよ、お前の好きにしろ。但したった今からこのパーティは解散だ。じゃあな、長い間世話になったな」
そう言い残して、ライルの仲間達は宿を出て行った、彼らの行き先はギルドである。
そう、勿論パーティを解散するためだ。
解散し、ライル抜きで新たなパーティが結成される事になるがそれは別の話。
残されたライルは仲間達、いや”元”仲間達が何で出ていったのか全く分からなかった。
ただ、呆気に取られ彼らが出ていくのを黙って見ている事しか出来なかった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
その頃、王都では。
「……成人したての少年がオークを単独撃破、そんな事あり得るのですか?」
純白のサーコートを身に纏った美女がその整った顔を顰めながら問いかける。
「ああ、間違いない。少なくともたった一日で四体のオークを仕留めているのは確認できている」
サーコートを纏った美女は信じられなかった。
腕に自信があり、群衆達から”二つ名”で呼ばれる自分ですら単独でオークを倒そうとすれば、それなりに苦労する。
それを成人したばかりの少年が成し遂げたというのだから信じれないのも当たり前だ。
余程、凄まじいスキルを授かったとしか思えない。
「それが本当だと言うのなら……そうですね、一度会ってみたいと思います」
「そうか、お前がそうしてくれるとありがたい。私も一度会う必要があると思っていたからな」
数日後、彼女はオークを倒したという少年が住む町、ルーカスへと向かう事になる。
お読み頂きまして、ありがとうございます。
はじめて後書きなるものを書かせて頂きました。
何故か、昨日のPVがいきなり二倍にふくれあがりました。
それでも、まだまだという事なのは間違いないのですが、私の拙い文章を読んで頂けた方が日々増えている事に対し、嬉しさと共に感謝の気持ちでいっぱいです。
なるべく話をテンポよく進めようと思って書いておりますが、シロウトゆえ中々皆様にストレス無く楽しんで頂けるか心配です。
少しでも楽しんで頂けるよう、ゆっくりながらも書き進めて行こうと思っております。
どうぞ、今後とも宜しくお願い致します。
また、ブックマークを頂きました皆様、並びに評価を下さった方に心よりお礼申し上げます。
【改稿】
2016/12/17
・武技の名称を修正。
2017/03/11
・全般の誤字を修正。