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第171話 新規の迷宮(13)

「……行こうか」


血の跡が続く階段を見つめながら、僕はそう声を出す。

全員が……そう、いつもマイペースなわっふるとクゥでさえ、無言で階段をゆっくりと降りていく。


そして、シルフィはライナス・スワードを……僕はライトニングエッジと鋼鉄短剣を手に持ち、いつでも戦闘に入る事が出来るように注意深く、辺りの様子を伺いながら降っていく。


アイシャも今は弓を背負い、短剣を持っている。

流石に【弓術・聖】を持ったアイシャと言えども、この狭い空間で弓を扱う事は出来ない。

こういった時の為に短剣の使い方についても、それなりに訓練を積んできている。

この辺の準備や用意の良さは、流石元B級冒険者と言った所だよね。


そういえば、僕のお父さんも【短剣】スキルは持っていなかったけど、普通に短剣を使っていた覚えがあるね。狩人や弓術師にとって短剣というのは第二の武器なんだね。


「……さて、地下4階についた訳だが……全く、なんて階層なんだっ!」


シルフィが目の前に広がる景色を見て、そう毒づく。

地下3階でも思ったが……今までにこんな構成の階層は見た事が無い。

この地下4階は、まさに変わった形の階層……その極地とも言える造りだと思う。

……いや、ひょっとしてこの迷宮(ダンジョン)を作ったという魔人が手を抜いたのだろうか?


……僕らの目の前にある景色。

それはゴールが見えない程、真っ直ぐ一本に伸びる通路の姿だった。

階層として存在するのは、この通路だけだ。他には何一つ存在しない。


もしかすると、地下3階の時のように隠された扉があるのかもしれないのだが……


ちなみに後ろを振り向くと行き止まりになっていた。

ただ、ひたすらに前に前にと進めと言う事なのだろう。


そして、その通路の床には、地下3階から続く、何かを(・・・)引きずった血の跡が続いていた。そうまるで僕らを誘うかのように奥へ奥へと伸びているのだ。


「どう思う?」

「……分かりません……が、もしかすると私たちを誘っているのかもしれません」


シルフィの問いにアイシャが答える。


うん、その可能性は確かにあると思う。

この先に何が待ち受けているのか分からないけれど、ガーゴイルを僕が倒した事はきっと把握しているだろうと思う。

そうなれば、当然僕たちは相手から要注意な敵だと認識されているだろう。

……となれば、このあからさまな血痕は僕らを誘っていると考える事も出来ると思う。


もっとも、あくまでもこれは予想だからね。

全然、的外れな事を考えているのかもしれないのだけれど……。


何にしても敵の思惑に関係なく、最悪の事態は想定しておくべきだろう。

誘われていると考えて、慎重に行動を心がけていこう。


「みんな、十分に注意をしてね」


僕らは、周囲を慎重に確認しながら奥へ奥へと足を進めていく。

50分ほど経っただろうか、不意に通路の奥から声のような物が聞こえてきたのだ。


「……す……て……た……」


「今のは!?」


僕が声を上げると、わっふるが「わふっ!」と声を上げる。


『まいん!このおくに、なにかいるぞ!!』


わっふるの声と同時に僕も【気配察知・大】を使用していた!

かなり弱っているような気配が一つ。なんとも禍々しい巨大な気配が1つ。

禍々しい巨大な気配は……あのオーク・キングに匹敵するほどの強さだ。


……そして、不気味なのは今まで感じた事の無い不思議な気配……それが2つ。


「みんな……気をつけて……オーク・キング並の奴がいるみたいだ」


オーク・キング並という事は、即ち災害級の魔物という事だ。

いくら、シルフィやアイシャがレベルアップしたとはいえ、まともに戦えば勝ち目は無い。


……僕が戦うしか無いだろう。

だけど災害級よりも、この2つの気配……何か凄くイヤな予感がするよ。


「……何、オーク・キングだって?」


シルフィがその予想外の名前に愕然とした表情を浮かべる。


「正確にはオーク・キングじゃなくて、オーク・キング並の強さの敵がいるって事だね」


僕は真正面を見据えながら、シルフィの言葉を訂正する。


「……災害級の魔物、という事ね……正直、私と姫様では荷が重いかもしれません」


アイシャが冷静に分析をする。

だが、更に絶望的な事を僕はみんなに話さなければならない。


「……それが……災害級の魔物だけじゃないんだ。今まで感じた事がない気配があと2つそばにいる」


二人が僕の言葉を聞き、ゴクリと喉を鳴らすのが分かる。

その2つの気配……それは恐らく……。


「グルルルルルゥゥ!!!」


突如、辺りに響き渡る獣の遠吠え……そのあまりにも凶暴な意思を含んだ唸り声に、思わず考えを中断してしまう。

恐らくこの遠吠えの主が……災害級の魔物なのだろう。


「……たす……て……だれ…た…」


再び、通路の奥からか細い声が聞こえてきた。


「シルフィ、アイシャ……二人は防御系のスキルを今すぐ使用して!基本的に自分達の身を守る事だけに専念して!僕とわっふる、クゥで戦うよ!」


「……仕方ないだろうな、なあにオーク・キングの時は逃げろと言われたのだ。それから比べれば私達も多少は力がついたという事だろう」


シルフィが肩をすくめながら、防御系のスキルを使用していく。

アイシャも同じように防御系のスキルを使っているのがわかる。


「……本気でやばそうなら、逃げる事も視野にいれるからね」


ライトニングエッジをぐっと握りながら、僕は走り出す。

続いてわっふるとクゥが僕の後ろを追いかけてくる。そしてシルフィとアイシャの二人が更にその後に続く。


そして、僕たちの目の前に飛び込んできたのは……。

とてつもなく巨大な合成生物(キメラ)だった。



名前:フェイスフルネス・キメラ

LV:96

種族:魔法生物(実験体)

性別:-


【スキル】

固有魔法・極光

固有魔法・剛雷

劇毒の魔眼


【アビリティ】

噛み砕き



「……こ、こいつは」

「そんな!?キメラなんて……」


はじめて見るその巨大な魔物の姿に思わず圧倒されてしまう。


「マイン君!!!あれ!キメラの口元!!!」


アイシャの悲鳴のような声を聞き、キメラの口元を見てみると……。

え?口に咥えているのは……人間の体なのか!?


「……た……けて……れ」


また、さっきの声が聞こえた!

先ほどから聞こえてくる声は、キメラの足下から聞こえてきたのだった。


ゆっくりと視線をキメラの口元から、足下へと移動させていく。

すると、そこには……右腕と左足を食いちぎられて、全身真っ赤な血にまみれているテイルズの姿があったのだ。



お読み頂きありがとうございました。


活動報告とツイッターでも書かせて頂きましたが、書籍の発売日が決定しました。


6月10日(土)となります。


これから、順次イラストレイターさん等の情報をお出し出来ると思います。


今後ともどうぞ宜しくお願いします。



【改稿】


2017/03/19

・全般の誤字を修正。

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