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第170話 新規の迷宮(12)

テイルズ達、従魔の輪廻(テイマーズリング)はガーゴイルに負けてしまったのだろうか。

負けた……この場合、それは即ち死を意味する。


だが、闇の精霊を使役(テイム)出来るほどの実力を持っているテイルズがそんなに簡単に負けてしまう物なのか?あのような性格であっても、三大クランとまで呼ばれている団体を作り上げ、そのリーダーを勤め上げるほどの男だ。


僕にはどうしても、テイルズがガーゴイルに敗れ、死んでしまったとは思えないのだ。


だが、考えてみれば僕は知り合い(この場合は本当にただ知ってるだけの人ではあるけど)の死というものに出会った事が無い。思い出すのはお父さんとお母さんの時くらいだ。


だから、この事実を……まだ死んだと決まったわけでは無いが、受け入れる事が出来ないだけなのかもしれない。


「僕の前にガーゴイルと戦った形跡は……見当たらないよね」


キョロキョロと周りを見回して、血痕や破壊跡などを探してみる。

……だが、目に入る範囲には、そんなやはり見つからない。


それでも、何か手がかりが欲しい僕は、部屋の周りをゆっくりと歩いて何か手がかりが無いかを探し歩いて行く。


「……駄目だ、やっぱり何も見つからない」


ひょっとしたら、僕がたどり着いた道順以外にも正解があったのかもしれないね。

たった今倒したガーゴイルがこの階層のボスと決まったわけでは無い、僕が勝手にそう思っているだけだしね。


これだけ探しても戦闘をしたという痕跡は見つからないのだ。

きっと、この考えが正解なのかもしれないね。


「よし、取りあえずみんなと合流しよう。僕の帰りが遅いから心配しているかもしれないしね」


【固有魔法・時空】を使い、僕は家族が待っているこの階層の入り口まで戻るのだった。


……だが、後で僕は後悔する事になるんだ。何故、ここで【気配察知・大】を使わなかったのか、と。

もし、僕がここで【気配察知・大】を使っていたらあのような悲劇は起こらなかった……そう思うんだ。


        ◆◇◆◇◆


「旦那様!」

「マイン君!」


二人のお嫁さんが僕の姿を見つけ、大きな声で叫ぶ。ああ、やはり心配を掛けてしまったみたいだね。


「ごめんね、二人とも……」


二人に謝罪をしながらも、戻ってくるまでに起こった事を順序立てて説明していく。

ガーゴイルが居た事、そのガーゴイルを倒してその魔石を4つ入手してきた事。


……そして、テイルズ達「従魔の輪廻(テイマーズリング)」に会わなかった事を全員に報告したのだ。


「……確かに、旦那様の考え通りの可能性が高い……か?」


「けど、姫様……マイン君は一つずつ扉を開けながら進んで行き、正しい道順を進んでいた筈なんですよ、テイルズ達が別のルートを見つけたというのは考えづらくないですか?」


そう、確かにアイシャの言う通りなんだよね。

僕はあの部屋にたどり着くまで、全ての扉を開け進めて正しい道順を見つける事が出来たんだ。あの道順の他に正しいルートがあるとはとても思えない。


そうすると、やはりテイルズ達はガーゴイルと戦って敗れたとしか考えられない。


「あいつらがガーゴイルを倒していて、先に進んでいるという可能性はどうだろう?」


……可能性は無いわけではない……そうは思うんだけど……。


ガーゴイルの再出現の間隔が恐ろしく短くて、僕があの部屋に足を踏み入れた時には既に新たなガーゴイルが居た、と。

う~ん、今までの階層の事を考えると、考えづらいんだけどなあ。

……ちなみに夕べの段階で1階層のボスは再出現していない。


当初の予想通り、恐らく迷宮(ダンジョン)の魔力がまだボスを再出現させるほど、貯まっていないんだろう。その事実がある以上、テイルズ達が既に先に進んでいるという可能性は極めて低いと言わざる終えないだろう。

恐らく、発言したシルフィですら、これが正しいと信じていないだろう。

あくまでも可能性の提示、そういう事だと思う。


取りあえず、進んでみようかな……。そうすれば否が応でもテイルズ達がどうなったのか分かるだろう。

あんな奴らでも、同じオーガスタ王国に所属するクランなのだ。苦戦していると言うのなら、助けてあげたいと思う。……仮に助けた結果、面倒くさい事になったとしてもだ。


「取りあえず、進もうか?考えても答えはきっと出ないだろうし……」


「ああ、そうだな。ここでいつまでも話をしていても攻略が進むわけではないしな」


僕の提案にシルフィが同意を示し、アイシャも頷く。

わっふるとクゥは寧ろ、先に進みたくて今か今かと待ちわびているようだ。


「よし、じゃあ僕の後をついてきて!案内をするからね!」


        ◆◇◆◇◆


「ここにガーゴイルが居たのね」


アイシャが部屋を見回し、そう声に出す。


やはり先ほどの予想通り、ガーゴイルは再出現していなかった。

……まあ、流石に倒して1時間程度では湧くわけもないか。


少なくとも従魔の輪廻(テイマーズリング)と僕たちは一晩の時間差があったのだから、先ほどの考えを、確認するためには、明日確認しなければならないだろう。


『まいん、あそこにとびらが、あるみたいだぞー!』


わっふるが指さす場所に扉は無い。

だが、わっふるがあると言っているんだ、絶対に扉はある筈なんだ。


僕をはじめ、家族全員がわっふるの言葉に何一つ疑いを持たず、何も無いように見える壁へと飛び込んでいく。


そう、わっふるが言ったとおり、扉はあったのだ。

見えない扉をくぐった先には、ガーゴイル部屋の半分ほどの広さの部屋だった。


……待てよ、ひょっとしてこれか?テイルズ達が僕と出会わなかった理由は!?

ガーゴイルと遭遇した時、偶然なのかテイルズ達はこの隠し扉を発見し、逃げ込んだ。

だとすれば、ここまで遭遇しなかった辻褄は合うんじゃ無いか?


「……マイン君、見て」


アイシャが何かを見つけたようだ、なんとなく声が震えているような気がする。

一体、何を見つけたというんだろう。


!!!!


アイシャが見つけた物……それは、床一面に広がるとてつもなく大きな血溜まりだ。

そして、何か複数の物を引きずった跡がある。

これだけ大量の血だ……絶対に一人だけの物ではない。

複数の……それも相当な人数分じゃないだろうか……。


血を意識した途端、むせかえるような血液の……錆びた鉄の混じったような匂いが鼻につく。


『……おにいさま、このけつえき、まだあたたかいです!』


え?……と言う事は、この血がこんな状態になってから……時間がそれほど経っていないって事なの?まさか、僕がガーゴイルと戦っていた時には、まだこの惨劇は起こっていなかった!?


「……旦那様、先に進もう。言うまでも無いだろうが、注意して進もう」


シルフィがライナス・スワードを鞘から引き抜きながら言う。


「……うん、分かったよ……アイシャはシルフィの後ろに。先頭はわっふる、殿は僕がするよ」


感知能力が高いわっふるを先頭にして、僕たちは慎重に足を進める。

ボス部屋の石碑が目に入ったが、今は気にしている余裕は無い。


そして、何か沢山の物(・・・・)を引きずったような血の跡を追っていくと……下の階層へと続く階段があったのだ。


お読み頂きありがとうございました。


活動報告とツイッターでも書かせて頂きましたが、書籍の発売日が決定しました。


6月10日(土)となります。


これから、順次イラストレイターさん等の情報をお出し出来ると思います。


今後ともどうぞ宜しくお願いします。




【改稿】


2017/03/19

・ルビ位置を修正。

・全般の誤字を修正。


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