第17話 すごいスキルを持ってました
狩り場の森へは、馬車を使わなかった。
距離的には少しあるが、休憩を挟めば、走っていけない事は無いし、何よりスキルの熟練度を上げたかったからだ。
一時間程、移動する事で目的地の森へと到着する事が出来た。
「……ふう、思ったより疲れたなあ」
そう言いながら、森の外周で座り込む。ちょっと休憩をしてから中に入ろう。
しかし、スライムとゴブリンか……町の裏手の森には居ないモンスターだよなあ。
何か使えるスキル持ってるといいんだけどな……。
けど、無理かな。どっちのモンスターも強さは大した事はない。
ゴブリンは集団で襲ってくる事もあるが、単独で戦う分にはオークを倒せる僕には脅威では無い。
勿論、油断は禁物ではあるが、緊張をする程でも無いだろう。
十分に休憩を取り、ゆっくりと森へと入っていく。
すると、いきなり目の前に薬草の群生地が飛び込んできた。
「おお、結構な量だなあ。自分の分の薬草は今の所要らないし、全部ギルドに提出しちゃうかな」
そう言って、半分程の薬草を収納袋に根っこごと放り込んでいった。
実は出かける時にアイシャさんに教えて貰ったのだ。
「マイン君、薬草を採取する時なんだけどね、根っこごと持ってこれるかな?出来れば土付きで、その方が評価が高く付くし、買い取り価格も上がるからね」
アイシャさんにも感謝、感謝だな。
最近、みんなに感謝してる気がするよ、それだけ今の僕は恵まれているって事なんだよね。
そんな事を考えながら幸せな気持ちで歩いていると【視力強化・中】のおかげで遠方に三匹のゴブリンを発見する事ができた。
名前:ゴブリン・プリースト
LV:4
種族:魔族
性別:♀
【スキル】
魔法・回復小
【アビリティ】
なし
名前:ゴブリン
LV:6
種族:魔族
性別:♂
【スキル】
片手剣
【アビリティ】
なし
名前:ゴブリン・シーフ
LV:9
種族:魔族
性別:♂
【スキル】
気配遮断・中
【アビリティ】
なし
む、なんだコレ。意外にも良スキルが揃ってるぞ。
ひょっとして【カット&ペースト】が使える僕にとってはゴブリンって美味しい獲物なのかもしれない。
うん、取りあえず、戦う前にスキルは全て奪ってしまおう。
それにしても、プリーストやらシーフとかが付いてる違う名前のゴブリンもいるんだね。
もしかすると、まだ見た事は無いけれどオークにもいるのかもしれないなあ。
だとすると、オークからもいいスキルがまだ手に入るかもしれないぞ!
存在するかどうかは分からないけど今度、探しに行ってみるのもいいかもね。
そんな事を考えながら”自己強化”系のスキルを全て使い、能力を底上げする。
よし、これで準備は万全だ。
何時も通りに【補助魔法・速度低下】【補助魔法・睡眠】をゴブリンに向けて放ち、短剣を構える。
すると、オークには高い確率でレジストされていた【補助魔法・睡眠】が、ゴブリンに対しては実にあっさりと効果を発揮した。
モンスターの強さによって、レジスト率は変わってくるという予想は当たってるのかもしれないね。
眠っているのを慎重に確認しながら、三匹とも首を撥ねていく。
そしてそのまま解体し、収納袋に放り込んでいく。
「よし、この調子でどんどんいこう!」
その後も色々な名前を持ったゴブリンに遭遇したが、やはり良いスキルを持っていた。
”ゴブリン・アーチャー”からは【武技:サクセスィブショット】
”ゴブリン・メイジ”からは【魔法・火】と【魔法・水】の二つ。
”ゴブリン・ナイト”からは【鉄壁】と【扇動】の二つ。
”ゴブリン・テイマー”から【テイム】
”ゴブリン・モンク”から【身体強化・小】
一気にこれだけのスキルを手に入れる事が出来た。
本当に今日、ここに来て良かったよ!アイシャさんに感謝感謝だ!
だけど、肝心のスライムが居ないんだよね。
一体、何処にいるんだろう……。
【視力強化・中】を使って辺りを見回してみる。
ん?あっちに池があるのかな?なんとなくスライムって水辺にいるような気がするし、ちょっと行ってみようかな。
居ました!いっぱい居ました!!
池の側に近づいて行ったら、それこそ山のようにスライムがワサワサと犇めいていた。
「……流石に多くない?これ」
余りにも沢山いすぎて、思わず溜息が出てくる。
取りあえず、適当なのを鑑定してみるか……。
名前:スライム
LV:1
種族:スライム族
性別:無し
【スキル】
清掃
【アビリティ】
なし
お、前見た事があるスキルだね。
名前:レッドスライム
LV:1
種族:スライム族
性別:無し
【スキル】
火属性・耐性
【アビリティ】
なし
赤いスライムは【火属性・耐性】か。
他の色のスライムも調べないとね。
名前:スライム・エクスペリエンス
LV:2
種族:スライム族
性別:無し
【スキル】
獲得経験十倍
【アビリティ】
なし
……ん?
な、なんだってーーーーー!?
なんかトンでもないスキルを見たような気がするぞ……。
目を擦ってもう一回、見てみる。
あれ?何処行った?あああああああ、あのスライム何処かに埋もれちゃったああああっ!
いかん、全然見つからない。
こ、これは……一体ずつ鑑定して倒してを繰り返すしかないな……。
何匹いるんだろう、これ。気が遠くなりそうだよ。
けど、もし僕が見たのが間違いなく【獲得経験十倍】だったら。
それが予想通りのスキルだったら……。
ぼ、僕はすごく強くなれるかもしれない。
大変だけどやる価値はあるとおもう。
取りあえずさっき手に入れた【鉄壁】【身体強化・小】を掛けて、単独でふよふよしているスライムに相対してみる。
短剣で攻撃をしちゃうと倒しちゃうから、まずはわざと攻撃を受けてみて、あの大群に近づいても大丈夫なのか試してみよう。
ぼくは小さな石を拾って、スライムにぶつけてみる。
すると、体を細かく振動させながら僕に向かって体当たりをしてくる。
ぽよぽよ~~~ん!
うん、全く痛くないや。
これなら、集団に囲まれても大丈夫かな?
念のために【補助魔法・徐々回復小(体力)】を掛けておけばいけると思う。
んじゃ、次は攻撃だ。
あ、その前にスキルを確認。【清掃】だった。一応貰っておこう。
では、鋼鉄製の短剣を持ってスライムを斬る。
うん、そりゃオークですら切断するんだもんね。
最弱と呼ばれるスライムが一撃で倒せないわけ無いか。
実験の結果、何とかなりそうだと判断した僕は気が遠くなる戦い?に向かう。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
一体、何匹倒したんだろう……。
40匹までは数えていたけど、めんどくさくなって止めたんだよね。
スキルの効果が切れてはかけ直し、そしてまた鑑定をして、倒して……。
おかげで各属性の耐性が火、水、風、土、光、闇と揃っちゃったよ!
やっぱり色つきスライムは各属性に対応した耐性スキルを持っている事が分かった。
「あああああああああああ、もう!一体何処にいるんだよっ!」
思わず我慢出来ずに叫んでしまう。
なんで、僕はさっき見つけたときにスキル取らなかったんだ!僕の馬鹿馬鹿馬鹿っ!
まあ、……スライムオイルが山のように取れた事だけが不幸中の幸いというヤツだ。
それから約1時間。
遂にヤツを発見した。
名前:スライム・エクスペリエンス
LV:2
種族:スライム族
性別:無し
【スキル】
獲得経験十倍
【アビリティ】
なし
間違いない、こいつ!こいつだよ!!
スキルをすぐさま奪う!もう逃がすものか!そして鬱憤を晴らすがごとく、一気に切断する。
よし、撤退だ!
【改稿】
2016/12/17
・武技の名称を修正。
2017/02/18
・言い回しを修正。