第160話 新規の迷宮(3)
「ふう、何とか無事に倒せて良かったね……シルフィ、ライナス・スワードを直すから貸してくれる?」
せっかくのレアな業物が欠けてしまったままというのはシルフィも悲しいだろう。シルフィから欠けたライナス・スワードを受け取ると【再生】を貼り付ける。
そろそろ【再生】のストックも切れてきたし、また今度取りに行かないと駄目だね。
「……おぉ、欠けた剣身がみるみる直っていくぞ!?旦那様、これはどんなスキルなんだ?」
「これは【再生】だね。見ての通り、元の状態に戻してくれるスキルだよ。ちなみに人体にも有効だよ。僕たち家族には全員貼りつけてあるからね」
そう、ブラックドラゴン戦の反省だ。
油断をしていなくても、あの時のように不覚を取る時はきっとあると思う。
だから、今は最初からこのスキルは全員に貼る事にしてるんだ。勿論、エイミさんにも貼り付けてあるよ!僕のスキルの事を知らない騎士団のみんなには流石に貼り付けてはいないけどね。いつか、スキルの事も話せるようになればいいのだけど……。
「……そうか、これが自分の体にどんな風に作用するのか、些か怖い気もするが……」
ライナス・スワードがボコボコと泡立ちながら再生していく様子を見て、そんな感想をシルフィが口にする。……まあ、確かに普通な光景じゃないよね。
以前、体験した自分の体が再生していく様を思い出して、思わず僕も苦笑する。
「まあ、確かにちょっと驚いちゃうよね、けど命には代えられないから……」
僕がそう言うとシルフィもアイシャも強く頷き返してくる。
そんな話をしているうちに、ライナス・スワードの修復も無事に終わったみたいだ。
欠けただけだから、もう少し早く直ると思ったんだけど……レア武器だから構造がきっと複雑なんだろうね。
「ところで、みんなさっきの戦いで僕の【鑑定】のレベルが上がったんだ」
「ああ、それで白スライムの種族スキルが分かったのね?」
アイシャの言葉に頷く僕。
「それで、さっきの戦いでは急すぎて白スライムの種族スキルを【カット】出来なかったんだ。次に白スライムが現れたら、少しだけ待ってね。魔法系の攻撃なら本当に一瞬で倒せちゃうと思うから……」
クゥの【バブリブルシャワー】が有効なのは、確認出来た。恐らくレベルも低かったからアイシャとシルフィに以前、貼り付けた魔法でも十分に倒せると思う。
けど、冷静に考えてみれば【カット】した後なら、物理攻撃でも倒せる気がするよね。
「ああ、分かった」
「ええ、任せて」
『わかったぞー』
『まかせてください!おにいさま!』
四者四様の返事が帰ってきた事を確認して、再び僕たちは迷宮の奥を目指して移動を開始する。
「ねえ、マイン君……さっきの白スライムの種族スキルなんだけど【物理攻撃無効】って言っていたわよね?それって無敵になっちゃうんじゃない?」
「う~ん、どうだろう?確かに凄いスキルなんだけど……気になる表記があったんだよ。それに魔法攻撃や毒みたいな攻撃は無効にならないからね。有利にはなるだろうけど……無敵とは言えないんじゃ無いかな?」
そう、スキルの後ろに他のスキルで言う、熟練度っぽい数字の表記があったのが気になるんだよね。そこら辺も【カット】出来たら確認をしてみようと思ってるんだけど……。
「……なるほど、じゃあとにかく【カット】してみないと詳細は分からないって事かあ」
「二人とも……早速チャンスがやってきたみたいだぞ」
僕とアイシャの話にシルフィが割り込んでくる。……チャンス?
ああ、白スライムが4匹まとまってあんなところにいる。よし、【カット】だ!
……取りあえず、1つずつみんなに貼り付けておくかな。
「みんな、もう大丈夫だよ!【物理攻撃無効】も【カット】してるから魔法系じゃなくてもいけると思う!!」
種族スキルだけでは無く、アビリティも奪い取った所でみんなに指示を出す。
僕の言葉を聞いて、前回のお返しとばかりにアイシャが矢を連続して放っていく。
予想通り、さっきの戦いでは全く効果が出なかったアイシャの矢は深々と白スライムへと突き刺さっていく。白スライムは鳴き声らしき謎の音を発して次々に倒れていく。
流石、遠隔攻撃と言った所か。あっという間に4匹の白スライムが駆逐されてしまった。
「……私にも一匹位は、残しておいて欲しかったな」
シルフィが笑いながら、アイシャに話しかける。ああ、そうか……シルフィもさっき苦い思いをしたからね。借りを返したかったんだろうね。
さて、敵も駆逐したしね。早速、【鑑定】をしてみようかな。
【物理攻撃無効(5/5)】:常時発動、物理攻撃を5回だけ無効化する。
……なんと……あの数字は、防御出来る回数なのか。
という事は、5回物理攻撃を耐えたら、このスキルはどうなっちゃうんだろう。
使えなくなっちゃうんだろうか……。
こればかりは、その時にならないとわかんないか。
「……みんな、種族スキルの詳細が分かったよ」
僕は今【鑑定】したばかりの結果をみんなに伝えていく。
「う~ん、確かに旦那様が言うように5回使い終わったらどうなるのか全く想像がつかないな……普通に考えれば所持しているだけで効果が無いと言う意味なしスキルと化すんだろうが……」
『わふ、きえるんじゃないのかー?』
「私も消えるんじゃ無いかと思うわ」
まあ、シルフィの考えもアイシャとわっふるの考えも有りそうではあるよね。
……色々な意見はあるけれど、さっき出した結論通りに5回耐えた後になれば分かるんだ。
仮に消えたとしても、またここに取りにこればいいしね……って、駄目だ。この迷宮は攻略して潰さないといけないんだった。
と、なると……今確保出来るだけ、確保した方がいいのか。
少し時間が掛かっちゃうけど、このスキルは多めに確保した方が絶対にいいと思う。
数に限りがあるから【再生】のように常時貼り付けてはおけないけれど、ボス戦や絶対に負けられない一戦の前に貼り付けておけば、相当なリスク回避になると思う。
ブラックドラゴン戦の時のように、貼り付ける時間を取れなかった場合でも【再生】は常時貼り付けているので、それで時間を稼ぐ事も出来るんじゃないかな?
「みんな、ちょっと提案があるんだけど……」
全員に僕の考えを話してみる。
「……なるほど、確かに時間を掛ける価値はあるな」
「防御は決しておろそかにしてはいけないわ、私も賛成よ」
『わふっ!おれもさんせいー!』
『きゅきゅ、わたしもでーす!』
よし、全員から賛成も貰った事だし、しばらくはこの階層で頑張ろうか!
『なあ、まいん。おれおもったんだけど、こいしにすきるをはるんだろ?』
ん?急にわっふるってばどうしたんだろう?
『うん、そうだよ?』
『こいしどうしが、ふくろのなかでぶつかったら、かいすうへらないか?』
『……確かにその可能性は、無いとは言えないね。さて、どうしたもんか』
あ、そうか!【常時:水】と同じ対処方法でいいんじゃないかな?
時間停止の収納袋に入れておけば、中で動きが止まってぶつかったりしないような気がするよ。早速、試してみよう。
……結果、予想通り、時間停止の収納袋を使えばぶつからない事が分かりました。
そしてこの日、僕らはその後、ひたすら白スライムを狩りまくり、【固有魔法・時空】を使い、今日の探索を終えるのだった。
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