第146話 王宮へ報告にいこう
シルフィの指摘で、廊下に出れなくなってしまった事に気がついた。
慌てて、もう一度移動先を元の廊下へ上書きする。
「……ふぅ、全く気が付かなかったよ。……これ、作った後の取り扱いも考えないと駄目だな」
何にせよ、これで【スキルの種(大)】は、水が残り1つで終わりになってしまった。
「ちょっと今から補充してくるよ」
僕はそう言って【固有魔法・空間】を使い、世界樹の迷宮へと移動する。
『おれもいくー!』
『わたしもいきますー!まってーおにいさまー』
僕が飛び込んだ後、わっふるとクゥも追いかけてくる。
『すぐに戻るから、家で待っててくれても良かったのに』
僕がそう言うと『おれたちがいたほうが、もっとはやくかえれるぞ!わふ!』
まあ、確かにそれはそうなんだけどね。
『まいん!おれいいこと、おもいついたぞ!』
うん?わっふるがこういう事を言い出す時は本当にいい事なんだよね。
一体何を思いついたんだろう、期待しちゃうよね!
『おれが、あっちのひろまとこっちのひろまにいる、まものをぜんぶつれてくるから、こっちにきたら、ぜんぶまほうでやっつけてくれ』
なるほど、かたっぱしからスキルを奪って、一気に範囲魔法で殲滅しちゃうと言うのか。
『全部たおしちゃったら、どうなるんだろ……もう魔物いなくなっちゃうのかな?』
『いいえ、そんなことないですよ!おにいさま。
また、まりょくを、いっぱいもったまものが、すぐにわいてきますから!』
う~ん、沸何故そんな風に湧いてくるのかはよく分からないけど……そう言うものなのか。
何となく沸き立てだと【スキルの種】は持っていない気がするんだけど、今のクゥの話だと違うんだね。
まあ、どちらにしてもすぐに魔物が沸いてくるというなら、わっふるの作戦は効果があるよね。
『じゃあ、わっふるそれでお願い出来るかな?』
『わかった!まかせろ!』
尻尾を激しく振りながら、嬉しそうにわっふるが隣の広間へと走っていく。
そしてしばらく待っていると……。
『わふーーーーーーーー♪』
すっごい沢山のマンドラとザリガニを引き連れたわっふるがこちらに向かって走ってくる。
「うわあ、一体何匹いるんだ、これ……」
そのとんでもない数に呆れながらも僕は片っ端から【スキルの種】だけを奪いまくっていく。
その間、わっふるは縦横無尽に広間をかけずり回る。
なんか、わっふる……すごく楽しそうだな……。
よし、全部奪えたぞ!
『わっふる、少し離れた場所に【固有魔法・空間】の黒い渦を出すから飛び込んで!』
僕がそう言うと『わふ』とわっふるが返事をしたので、すぐに実行をする。
わっふるが黒い渦に飛び込んだのを確認して、すぐに渦を閉じる。
そして、そのまま【魔術の極み】を発動し、魔物の集団目がけて【範囲魔法・火極大】【範囲魔法・土極大】を連発する。
激しい爆発音が辺り一面に響き渡り、わっふるがかき集めた魔物達は一匹残らず消し飛んでしまった。
『わふ!うまくいったか!?』
僕達の背後から、わっふるが声を掛けてくる。
『うん、わっふるの作戦は大成功だよ!』
名前:小石
【スキルの種】
【風の種(大)】(9)
【風の種】(4)
【水の種(大)】(7)
【水の種】(1)
マンドラゴラが49匹、ザリガニが36匹か。
すごいなあ、100匹近くも居たんだね……。
取りあえず、これだけあれば十分だね!わっふるとクゥがきてくれて良かったよ。
『よし、帰ろうか!』
自宅に帰るとアイシャが僕に向かってこう訪ねてきた。
「ねえ、マイン君……私思ったのだけど、上書きしないで扉に貼り付いた物を【カット】とか出来ないのかしら?」
……なるほど、言われてみて気が付いたけど、完成した収納袋や扉って鑑定してないな。
一体どうなっているんだろう。
【時空扉】:この扉を抜けると【フォルトゥーナ家1階廊下】に出る。
……駄目だ、扉が“時空扉”と言う別物に変質してしまっているよ。
ちなみに、普通の扉を鑑定するとこんな感じだ。
【扉】:ただの扉。出入り口などに使用される。
「アイシャ、せっかくのアイデアだけど、駄目みたいだ……。扉自体が違う“時空扉”って言う別のアイテムになっちゃってる」
「別のアイテムかあ……錬成みたいな感じよね」
ああ、確かに言われてみればそうだね。
だとすれば、時空関連の錬成ならば僕でも【スキルの種】さえあれば行う事が出来ると言う事なのかな?
これは、一考するべき事だよね。
何か他に役に立つアイテムや武器、防具なんかが作れるかもしれない。
時間があるときにでも、少し考えてみようかな。
◆◇◆◇◆
「この後、王宮に行ってくるよ!」
勿論、目的は移動扉が完成した事を国王様に報告するためだ。
あの後、自宅に帰り、居間で家族揃ってお茶を飲みながら、僕がそう告げるとシルフィが自分も行くぞと僕に話しかけてきた。
何でも、前回エアリーが来てから、音沙汰が無いので気になっているので見に行くとの事だ。
ああ、そう言えばうちのクランに入るって言ってたもんね。
……結局、国王様達を説得出来たのだろうか?
もうすぐクランハウスが完成する訳だし、確かにエアリーの状況は確認しておく必要があるよね。
そんな訳でついでと言う事で、クゥの紹介もしておこうとなり、最終的な同行者はシルフィとわっふる、クゥとなった。
わっふるは、いつものごとく「おれもついていくぞ!」と僕の頭の上によじ登ってきたので、特に用事があるわけでもないが連れて行く事になったのだ。
「さて、まずは国王様の所だけど……今会えるのかな?」
「父上は多忙だからな、いくら私達でも中々会えないだろうと思う」
この前は、たまたま時間が空いたタイミングだったってメイドさんも言ってたからね。
取りあえず、面会の申請だけは先にしておいた方が良いね。
そう考え、この前エアリーに教えて貰った呼び鈴を押しておく。
「旦那様はしばらくここで休憩でもしててくれ、私はエアリーの様子を見てくる。
戻ってきたときに、ここに居なければ、父上の所に私も向かうから、そこで合流しよう」
「了解、エアリーによろしくね!」
僕がそう言うとシルフィが僕のほっぺに軽くキスをして、そのまま部屋を出て行った。
『おにいさま、えありーってなんですか?』
ああ、そうか!クゥはまだエアリーをはじめとする王族にはあった事が無いよね。
『うんとね、シルフィの妹さんで、この国の第二王女なんだよ』
僕がそう説明をすると、クゥは空中を大回転しながら大喜びをした。
『し、しるふぃおねえさまの、いもうとのかたですか!これはごあいさつしないと!』
そんなクゥの様子を、にこにこしながら見ていると、ドアをノックする音が聞こえる。
「……失礼致します、マイン様はお見えになりますでしょうか」
あ、この前もお世話になったメイドさんの声がするよ!
まあ、そりゃそうか。僕がここに自由に出入り出来る事を知っているのは、このメイドさんだけだもんね。
……だけど、国王様。僕の事をどうやって説明したのかな?
「あ、はい!マインです!今さっきやってきました!」
僕が声を掛けると「失礼します」と静かにドアを開け、部屋の中にメイドさんは入ってきた。
「ようこそ、お越し下さいま…………えっ?」
メイドさんはいつものように礼儀正しく僕にお辞儀をした後、頭を上げ……クゥを見て動きが止まった。
「……あ、えーっと……僕の新しい獣魔で家族になったクゥです。宜しくお願いします」
僕がそうメイドさんにクゥを紹介すると、クゥは嬉しそうに「きゅっ!」と一声鳴き、くるっと空中を回転してみせる。
そして、そのクゥに対抗心を燃やしているのか、僕の頭のうえで「わふ!」と鳴いて右手を挙げるわっふる。
「……はぁ、そうですか、こちらこそよろしくお願いします。
ところで今日はどういったご用件でしたでしょうか?」
うん、すぐに立ち直ったぞ!さすがにプロのメイドさんだね!
「えっと、国王様に報告に来ました!妻も一緒に来てまして、今エアリアル殿下の所に伺っています」
「シルフィード姫様もいらしてるのですか、分かりました。
陛下に取り次いで参りますので、もうしばらくこちらでお待ち下さい」
メイドさんはそう言い残し、部屋から出て行った。
ふう……さて、何をして時間を潰そうかな?
お読み頂きありがとうございました。
※若かりし日の国王様視点のスピンオフを投稿しております。
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基本的にリプは行わない予定で、何かしらの報告事項があった時につぶやきます。
また随時行っております、名前募集等の読者様参加イベントの告知などもつぶやく予定です。
※今まで通り活動報告にも告知は致します。
今後ともどうぞ宜しくお願いします。
【改稿】
2017/02/18
・全般の誤字を修正。




