第145話 移動扉を作ってみよう
さて、フランツ団長も帰った事だし、思い出した案件に取り掛かってみよう。
そう、国王様から依頼されていた移動扉の作成だ。
基本的な考えは、時間停止収納袋と同じ考え方で作れるんじゃないかと思う。
では、ちょっとここでおさらいをしてみよう。
雑貨屋さんで購入した小さな巾着を僕の部屋から持ってくる。
「ん?旦那様……何かするのか?」
『まいん、がんばれ!おれがついてるぞ!』
『きゅきゅー!おにいさま、がんばって!』
居間に残っていたシルフィとわっふる、クゥが僕のそばに集まってくる。
うん、応援もあるし頑張らないと駄目だね!
以前、行ったように手にした巾着袋に向けて【固有魔法・空間】を発動する。
この時、移動の際に出現する黒い渦は出現しない。代わりに巾着袋の周辺がぐんにょりと歪んで見えるのだ。
そして、巾着袋に大きな空間を作るイメージと時間が止まるイメージを強く注いでいく。
……うん?なんか以前作った時より、時間が掛かってるな。
なんか、どんどん頭に浮かべたイメージが巾着袋に吸い込まれていく感じがする。
以前、実験で作った時には完成するのにそれほどの時間も掛からなかった。確か5分位だったと思う。
それに対し、今回は既に15分以上の時間が経過しているのだ。
ちょっと不安になってくる。
「ん、ん、おかしいな……」
僕がそう呟くと、わっふるがある事に気が付いた。
『まいんから、かぜのまりょくが、いっぱいそのふくろにながれこんでるぞ』
風の魔力だって!?何で僕からそんな物が流れているの?全く、わからないぞ!
『おにいさま、ひょっとして……かぜのたねが、げんいんじゃないですか?』
クゥが、そう僕に告げる。
あ、なるほど……。風の種(大)を1つだけ、確かに僕自身に貼り付けている。
と言う事は何?巾着の中に風の種が持っている大量の魔力が注がれているって事なの!?
「……あ、出来たみたいだ」
クゥの推測について、考えを巡らせている間にやっと収納袋は完成した。
名前:マイン・フォルトゥーナ
LV:63
種族:ヒューム
性別:男
年齢:15歳
職業:狩人
【スキルの種】
無し
……あ、風の種(大)が無くなってるぞ。
「旦那様、一体今何をしたのだ?」
シルフィが訳がわからないと言った表情で僕に問いかけてくる。
「うん、実は今、収納袋を作ったんだよ……時間経過の無い奴をね」
「……え?」
まあ、そりゃあ驚くよね。前に聞いた話では、時間停止のある収納袋は錬成術で作る物だって言ってた物ね。
王妃様しか製作を頼めないという凄腕の錬成師さん。
シルフィは、そんな人しか作れないと思っていた筈だ。
「僕の持っている【固有魔法・空間】を転用するんだ。これを使うと作れるんだけど……」
……さて、前に作った物と今回の物、一体何が変わったんだろう?
風の種(大)が一体どれほどの魔力を内包していたのかは分からないけれど、それが丸々一個全部注がれたんだ。
恐らく容量は、大きくなっただろうとは思う。
だけど、容量については中に入れるような大きな物が今の所無いから確かめれない。
これに関しては、今度迷宮に潜ったときにでも確認してみるしか無いよね。
取りあえず、時間停止が上手く機能しているかどうかを確認してみよう。
事前に用意していた熱いお茶を今出来上がったばかりの収納袋に放り込む。
一連の作業を見ていたシルフィが溜息をつく。
「あらためて思うが、旦那様は戦闘だけでは無く、本当に何でも出来るな……」
「う~ん、これは本当にたまたまだと思うけどね。
そもそもオーク・キングの残したスキル自体が規格外過ぎるんだよ。
戦闘にも使えて、それ以外でも破格の性能を誇るなんて、無茶苦茶だよね」
「だが、今その破格の性能は旦那様が持ってるわけだろう?やはり凄いのは旦那様だよ」
シルフィはそう言って僕を持ち上げてくれるけど、いまいち僕には実感が湧かないよね……。
そんな話をシルフィ達としている間に30分程、時間は過ぎ……。
収納袋から、さっき放り込んだお茶を出してみる。
湯気がもわもわと立っている所をみると、きちんと時間停止は付与出来ているようだ。
けど、風の魔力を注ぎこんだ訳だから、風の属性を持っているような気がするんだけどな。
このお茶を見る限り、どんな効果もついていない気がする。
『わっふる、クゥ、このお茶から風の魔力って感じる?』
『いえ、かんじませんわ!』
『わふ、そのふくろにいれるまえと、かわらないぞ』
……なるほど、この二人がそう言うならきっと間違いないだろう。
取りあえず、風の種については後回しにしよう。
さて、取りあえずこれで以前のおさらいは完了したわけだ。
……ここからが、本番だ。
居間の扉に【固有魔法・空間】を使用し、解体部屋の扉に繋ぐ事を目指してみよう。
僕は居間の扉に手を触れて、さっきの巾着袋のように【固有魔法・空間】を使用し、目的地へ繋がるイメージを流し込む。
……駄目だ。繋がる手応え自体を感じない。
何と言うんだろう、流し込んだイメージが定着せずに霧散してしまう感じだ。
イメージだけでは、ダメなのかもしれない。
「……駄目だ、イメージが定着しないや。何かが足りないんだ。きっと」
……考え方自体は合ってると思う。
扉が繋がり完成したイメージがきちんと【固有魔法・空間】を通じて扉に結びつこうとしているのが分かるんだ。
ただ、何かが足りない……そう、僕一人の力では押さえつけれない感じ……。
え?僕一人では……!?
あ、ひょっとしてさっきの【スキルの種】が答えなのかもしれない!
僕だけで足りない力を【スキルの種】が蓄えた魔力が後押ししてくれる。
よし、早速試してみよう。
さっきは【風の種(大)】だったから、今度は【水の種(大)】を使ってみようかな。
収納袋から【水の種(大)】が貼り付いている小石を取り出す。
そして【水の種(大)】を【カット】して、僕自身にペーストする。
さあ、再挑戦だ!うまくいってくれ!
再び、扉に手を当てて【固有魔法・空間】を発動。
『わっふる、どうかな?水の魔力が扉に吸収されている?』
『おう!いってるぞー』
よし、後はイメージをちゃんと送り込む事に集中だ。
……1分、5分、10分が経過する。そして15分を少し過ぎた時……魔力の流れは止まり、作業が完了した。
「……旦那様」
シルフィがごくりと喉を鳴らして、僕を呼ぶ。
「……出来た、と思う」
そう、手応えは確かにあった、今までの経験からこれは成功した手応えだ。
僕は緊張して、ドアのぶを握り……一気に扉を開けた。
扉から見える景色は……。
「よしっ!成功だ!」
そう扉から見える景色は、解体部屋だったのだ。つまりこの扉は目論見通りに移動扉になったんだ!
「……なあ、旦那様……私達この部屋から出るには解体部屋経由で出ないといけないのか?」
……あ、しまった……部屋から廊下にいけなくなっちゃった。
お読み頂きありがとうございました。
今回出てきました「移動扉」通称どこ○も○アですが、まだ重大な欠陥があります。
そのうち、その欠陥にマイン達が気が付きますので気が付いた読者の方、温かい目でマイン達を見守って上げてくださいm(_ _)m
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