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第143話 閑話・わっふるとクゥの大冒険 <前編>

『ねえ、わっふる!どこかにあそびにいかない?』


ケートスおばちゃんの娘で、最近うちに住み始めた親友のクゥが俺にそんな事を言ってきた。


『わふ?どこかってどこだ?』


俺は今からお風呂に入ろうとまいんを探しに行こうと思ってたんだけどな……。


『きゅっ!そんなの、だいぼうけんに、きまってるじゃない!』


大冒険?遊びに行くんじゃなかったのか?相変わらず突発的に思いつくやつだ。

そもそも大冒険って、一体なにをするんだ?


『だいぼうけんってなんだ?』


『あんまり、とおくへいくと、まいんおにいさまが、しんぱいするから、ちかいところでいいわ!』


近いところって……冒険って言うのか?けどまあ、気分転換にはいいかもしれないな。

だけど、ホントに何処に行く気なんだ、クゥのやつ。


俺が付いていないと心配だ、仕方ない……、お風呂は諦めるか……。


『……わかった、おれ、つきあうぞ』


俺がそう言うと、クゥのやつ、尻尾をピタンピタンと左右に振りながら器用に空中を回転している。

嬉しそうにしているのを、見ると俺も嬉しくなってくるぞ!


思わず俺の尻尾も大きく揺れ動いてしまう。


『きゅきゅ、きゅー!』


『あそびにいくまえに、まいんに、いいにいくぞ!きゅうにおれたちが、いなくなったら、まいんがしんぱいするからな』


そう言いながら、まいんを探しに居間の方へ歩いていくと、大人しくクゥも俺の後についてくる。


『わふわふ♪』『きゅきゅきゅ、きゅー!』『わっふわふ♪』『きゅっきゅ、きゅう♪』


俺達は歌を歌いながら、家の中を歩き回る。勿論、まいんを探す為だ。


『ん?わっふるにクゥじゃないか、どうしたんだ?機嫌良さそうだが』


廊下で、まいんの(つがい)の一人、しるふぃを発見したぞ!

しるふぃは、この国のお姫様でクゥととっても仲良しだ。


それに俺と同じでまいんの事が大、大、大好きなんだ。


あと、しるふぃは俺が頭の上に乗っても怒らないし、抱っこだってしてくれるんだぞ!

だから、俺もしるふぃの事が大好きだ!


……だけど、しるふぃの頭の上はまいんに比べてちょっとだけ、座りにくい。

髪の毛がまいんより多いから、ちょっとだけ、邪魔なんだ。


だから、俺は最近はまいんの頭の上しか登らない。

その代わり、クゥの奴がしるふぃの周りをプカプカと浮かんでいる。


しるふぃとクゥは、お風呂仲間なんだけど、そのおかげなのか、すっかりしるふぃが大好きみたいだ。



俺はまいんみたいに元気よくしるふぃに向かって返事を返す。

元気なのはいいことだ。まいんもそう言ってた!ついつい嬉しくなって尻尾が動いてしまうぞ。


『おれ、これから、くぅとあそびにいくんだ!おれたち、いいこだから、まいんにいってから、でかけるんだぞ!』


俺がそう言うと『旦那様は、解体小屋に行ったぞ』と教えてくれた。


この家の離れには解体小屋という場所がある、俺もまいんのお手伝いで、よく行く場所だ。

解体小屋で迷宮(ダンジョン)や森で倒した魔物をまいんがスキルでばらばらに解体するんだ。


それを俺がまいんの作った時間が止まる袋にしまっていくのが俺の仕事なんだ。

袋の中がいっぱいになったら、まいんと一緒にお肉屋さんのところに行って売ってくるんだ。


知ってるか!?お肉屋さんは売るだけの場所じゃないんだぞ!肉屋のおっちゃんはいつも俺に余ったお肉をくれるんだ。

勿論、俺はちゃんとおっちゃんにお礼を言うのは忘れないんだ。


「わふ!」


そう言って、右手を挙げるとおっちゃんは、嬉しそうにうちでよく食べるお肉だけじゃなくて、変わった味のお肉もくれるんだ。

この前、食べた猪のお肉は、すごく美味して思わず、まいんに頼んでいっぱい買って貰ったんだ。


だけど、クゥとエイミは猪のお肉はあんまり好きじゃないって言ってた。

……こんなに美味しいのに勿体ないと思う。


勿体無いから、俺が二人の分はちゃんと食べて上げたんだ。

あいしゃも、ご飯を残したりするのは、いいことじゃないって言ってた。


……ああ、ダメだ。こんな事を考えていたら、何時までも冒険にいけないぞ。急いで、解体小屋にいこう!


『まいん!おれとくぅであそびにいってくるぞ!』


解体小屋に勢いよく飛び込んでそう声を上げると、まいんが驚いた顔でこちらに振り向いた。


『わっふる、遊びに行くって……クゥと二人だけで?』


『くぅが、ぼうけんにいくっていうから、おれもついていくぞ』


俺の言葉を聞いたまいんは、少し考えてこう言った。


『二人だけだと心配だから、僕も一緒に行くよ』


ああ、まいんはきっとそう言うと思った。クゥはどうするつもりなんだ?


『おにいさま!だいじょうぶです!わたしとわっふるは、かりにもしんじゅうです!』


クゥの声を聞いて、まいんは「はぁ……」と溜息をついている。


『まあ、念話があるから……何とかなるかな?何か危ない事があったらすぐに僕を呼ぶんだよ?

 あと、二人だけで出かけるなら、これを巻いておいてね』


そう言ってまいんは若草色の布を収納袋から取り出した。


『それはなんだー?』


『これはね、二人が僕の従魔っていう証明書だよ。これさえしておけば、捕まったりする事は無いはずだよ。

 ただ、わっふるは分かってるとおもうけど、悪い奴はいるからね。気をつけるんだよ』


きっと、はじめて俺とまいんが会ったときの事を言ってるんだろう。

そうだ、人間には悪い奴がいるんだ。気をつけないと駄目だって言うのは良くわかってる。


……クゥはそんな事を知らないだろうから、俺が気をつけないと駄目だ。


『わふっ!わかったぞ。おれ、がんばってくぅをまもるぞ!』


結局、まいんと話をして遊びにいくのは、町のすぐ側にある森に行く事になった。


まいんが言うには、そこでオーク・キングと戦ったみたいだ。

今はまいんが倒したので、そんな物騒な奴はもう居ないらしい。


町中を俺達だけでうろうろするのは、よくないと森までは、まいんが魔法で送迎してくれる事になったんだ。


『じゃあ、いってくるぞ!』


俺とクゥがまいんにそう告げると目の前に見慣れた黒い渦が現れた。


『わふっ!』『きゅきゅ!』


俺達は黒い渦目がけて、元気一杯に飛び込む!

そして、渦を抜けた眼前には森が一面に広がっていた。


『わふ!もりについたぞ!!!』

『よ~し、わっふる!ぼうけんのはじまりよ!』


こうして俺達は森の中へと足を踏み入れるのだった。


お読み頂きありがとうございました。


ツイッターを【咲夜@小説家になろう:@ID73yQraHGjolTq】を見て頂いている方は

既にご存じと思いますが、143話はちょっと容量が大きくなってしまったので、

分割する事にしました。


その為、若干だけ短めになっております。

ご容赦下さいm(_ _)m


今後ともどうぞ宜しくお願いします。


【改稿】


2017/02/18

・全般の誤字を修正。


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