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第142話 フランツと神獣の子供達

「……え?なんですって!?神獣様の子供がまだいるんですか!?」


ああ、そうか。クゥの事はまだ国王様も知らないんだっけ。

そりゃ、何の心構えも無く子供とはいえ、伝説の神獣に出会えば、普通はこんな反応になるよね。


それに……団長も僕と同じできっとクジラなる魔物を知らないだろうから、クゥを見たら更に驚くだろうな……。


そう言えば、今でこそ慣れたから問題ないけど、お嫁さん二人も初めてクゥを見たときの反応は凄かったっけ。


僕の考えている事が分かったのか、アイシャが僕の方を見て苦笑をしているのが見えた。


「うん、この前ケートス様から預かったんです、見た事がない子かもしれませんが驚かないでくださいね」


「見たことがない!?一体……」


僕が先にそう言うと、団長はふむと顎に手を添えて考え込み始めた。


「私達も初めて見たときは、かなりびっくりしたからな」


僕達のやり取りを聞いて、シルフィも会話に参加してきた。



団長が思考に入ってから、5分ほど経過しただろうか、わっふるが廊下を駆けてくる音が聞こえてくる。

ああ、クゥを無事に起こせたんだね。流石、わっふるだ。


……と言うのも、実はクゥ。かなり、寝起きが悪いんだ。


揺さぶり、声を掛ければすぐに目覚めはする。だけど、すぐにまた寝ちゃうんだよね。


この前なんて……。


        ◆◇◆◇◆


『クゥ、朝だよ!クゥおきて!おーきーてー!』


揺さぶりながら、必死にクゥを起こすべく声を掛ける僕。


『きゅッ……おにいさま、おはようございます……』


『起きた?クゥ、本当に起きた?』


ここで油断しちゃ駄目だ!絶対にクゥはまだ起きない!


『Zzzzzzzzz、きゅうぅ、あとごふん……』


ほら、やっぱりーーーーー!!!!


『寝ちゃ駄目だってばっ!クゥ起きてーーーー!!!!』


        ◆◇◆◇◆


……こんな事があったんだよね。


それを考えれば、わっふるがたった5分ちょっとでクゥを起こしたのは快挙と言えるだろう。


「……随分、早かったよね」


僕と同じく、クゥを起こすのに苦労をしているシルフィとアイシャも僕の呟きに反応して、うんうんと頷いている。


“寝起きが悪い神獣”……僕達のやり取りを聞いた団長の脳裏には、きっとそんな言葉が浮かんでいる事だと思う。


 ・見たことがない魔物。

 ・見たら驚く。

 ・寝起きが悪い。


一体、団長がクゥについてどんな想像をしているのか、聞いてみたいものだよね。


『まいーん、おこしてきたぞー!』


わっふるが尻尾を激しく振りながら、僕に向かって飛びついてきた。


……え?わっふる濡れてる?


『きゅ、きゅ、きゅーーーーー!!!まったくもう!!わっふるってば!!』


今度は廊下の方からクゥの声が聞こえてきたぞ。

……なんか、怒ってないかな?一体、わっふる……どうやって起こしてきたんだ?


『きゅーーー!おにいさま、きいてください!きいてください!!!だいじなことだから、にどいいました!』


ああ、やっぱりすごく怒っているよ……。


『おにいさま!きいてますか?わっふるってば、わたしがねてたのに、たいあたりをしてきたんですよ!』


えっ???体当たり?


「……旦那様、すごい勢いで怒ってるみたいだが、クゥは何て言ってるんだ?」


シルフィとアイシャの二人には、ケートス様の加護が無い。

つまり、クゥが何を言ってるのか分からない訳だ。


「……わっふるちゃんが体当たりでクゥちゃんを起こした……みたいです」


あ、僕が答える前にエイミさんが説明してくれた。


「……た、体当たりですか?」

「はっ!?体当たり!?」


アイシャとシルフィが驚きの声を上げる。


『……ねえ、わっふる。どうやってクゥを起こしたの?』


当のわっふるは、寝起きの悪いクゥを起こした事で、尻尾をふりながらドヤ顔をしている。


『ゆすっても、たたいても、おきなかったから【くうちゅうふゆう】で、てんじょうまでうかんで、そこかららっかしたんだ!』


……。


わっふる……それ結構過激じゃないかな?

シルフィとアイシャも同意見のようで唖然としている。


『きいてくれ、まいん。くぅってばひどいんだ。せっかくおこしてやったのに、おれに【ばぶりぶるしゃわー】をうってくるんだ!』


わっふるが濡れているのは、それが原因か。

クゥが寝起きで寝ぼけていたからだろうか、濡れただけでダメージは受けてはいないみたいだ。


一体、二人は僕にどうしろと言うんだろう……。

クゥは体当たり、というより自由落下で起こされた事を僕に抗議し、わっふるはびしょ濡れになった事を僕に抗議する。


中々起きないクゥを起こそうと頑張ったわっふる。

やり方は少し過激だったけど、わっふるは僕のお願いを聞いてくれただけだ。


かたや、寝ていた所に自由落下からの体当たりを喰らったクゥ。

反撃で水を被せたくらいなら、彼女の気持ちを考えれば理解出来なくもない。


……うん、そうだね。これは、僕が悪い。


『二人ともごめんね、僕がわっふるにクゥを起こしてくるように頼んだんだ。

 クゥもわっふるを許してくれないかな?わっふるも、きっと僕が喜ぶと思って頑張ったんだよね?ごめんね』


僕が二人に頭を下げて謝ると、クゥもわっふるも尻尾を下げて『きゅ~』『わふ~』と小さく鳴き声を上げる。


『まいん、おれがやりすぎたーから、あやまるなー、くぅごめんなー』

『きゅ、わ、わたしもわるかったのです!すぐおきないから……わっふるおこしてくれてありがとう』


わっふるは僕のほっぺたをぺろぺろと舐め、クゥは反対側のほっぺたに自分のほっぺたをこすりつけてくる。



「……えっと、一体何が起こっているのでしょうか……」


あ、しまった!?フランツ団長の事、すっかり忘れてた!?


「あ、ごめんなさい。ちょっとした行き違いがありまして……。

 この子がうちの新しい家族で神獣ケートス様の娘さん、クゥです」


僕がそう言うと、クゥも団長さんの存在に気が付いたのだろう。

「きゅっ!」と団長さんに向かって器用に頭を下げた。


「……よろしくお願いします、神獣様」


フランツさんも姿勢を正して、クゥに向かって頭を下げた。


「そうですか、ケートス様は、クジラ型の神獣様なのですね」


あれ?フランツ団長……クジラ見た事あるのかな?

そう言えば、水の迷宮(ダンジョン)で出現するって聞いた気がするな。


「団長さんは、ご存じだったんですね」


「ええ、水の迷宮(ダンジョン)で見た事がありますね」



こうして、フランツ団長と我がフォルトゥーナ家との対面は完了した。

団長が言うには、クランハウスが完成したら、団員を連れてまた来るとの事だ。


……ふぅ、騎士団か。


僕等のクランとは別物ではあるけど、これから色々と交流する事になるんだろうね。

いくらレベルがあがったとはいえ、エイミさんを一人だけ残して出かける訳にはいかないからね。


ありがたい話だと前向きに捉えよう。


間もなくクランハウスも完成する。

やらなければならない事も多いからね、これから頑張らなきゃね!



お読み頂きありがとうございました。


※若かりし日の国王様視点のスピンオフを投稿しております。

不定期更新となりますが、宜しければこちらもお読み下さい。


http://ncode.syosetu.com/n2978du/


【ツイッター】

咲夜@小説家になろう:@ID73yQraHGjolTq


基本的にリプは行わない予定で、何かしらの報告事項があった時につぶやきます。

また随時行っております、名前募集等の読者様参加イベントの告知などもつぶやく予定です。


※今まで通り活動報告にも告知は致します。


今後ともどうぞ宜しくお願いします。



2017/02/18

・言い回しを修正。

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