第14話 武器屋と防具屋
ギルドを後にした僕は先ず武器屋さんと防具屋さんへ向かう事にした。
この二軒の店は隣り合わせに建っていて、兄弟でそれぞれのお店を営業をしている。
お兄さんが武器、弟さんが防具を売ってるんだ。
本当は鑑定の結果の事が気になっているんだけど、さっきのギルドで自分が弱い事を再認識した。
だからこそ、装備品を整える事を優先したんだ。
幸い、臨時収入もあったし素材も高く売れたからね。
「こんにちはー!」
先ず僕はお兄さんがやっている武器屋を訪ねた。
「おう、マインの坊主か。いつも元気だな!」
実は僕は結構このお店に通っている。
兎などの獲物を狩った時に使用している短剣だけど、どうしてもメンテナンスをする必要がある。
自分でも出来る限りの事をしてはいるが、どうしても手入れが行き届かなくなる。
そんなとき、このお店にお願いをしてるんだ。お父さんと懇意にしていたお店だったしね。
「今日も短剣のメンテナンスか?」
「いえ、今日は新しい武器を買いたくて……」
僕がそう言うと、えらく驚いた表情を見せる。
「解体用じゃなくて、戦う方の武器か?大丈夫なのか?」
心配そうな表情で声を掛けてくれる、嬉しいよね。
スキルの事を知らないから当然、こんな反応になるのは当たり前か。
「うん、成人の儀でスキルを授けてもらったからね!昨日もオークを倒したんだよ」
「オ、オークだって!?坊主一人でか!!!!?」
錬金術屋のお兄さんが言ってたもんな。
オークはC級で狩るモンスターだって。
そりゃ、驚くよね。
「ホントだよ!ほらこれ」
そう言って、オークの肉を500g程取り出しておじさんに手渡す。
「これオークのお肉、今日のお裾分けです!」
実は昔からお父さんがこの武器屋さんと防具屋さんにはすごくお世話になったらしく、定期的に狩ってきた獲物の肉をお裾分けしてたんだ。
僕も兎だったけど、よくお裾分けで渡してたんだ。
いつも兎なんかじゃ、申し訳ないなと思ってたのだけど……喜んで貰えるかな?
「すげえな、本当にオークを狩ってきたのかよ……」
そう言いながら僕に渡された肉をしげしげと見るおじさん。
「……ありがとうよ、美味しく頂かせて貰うぜ。で、武器だったな?何が必要なんだ?やっぱり短剣か」
「うんと、そうですね。短剣で良い物があれば見せて欲しいです」
「ふむ、予算はどれくらいなんだ?」
「金貨10枚位までで出来れば二つ欲しいです」
おじさんはそうだなと一つ頷いて、店の奥へ商品を取りに行く。
そして、5分位で再び戻ってきた。
「一つめはこれでどうだ」
そう言って見せてくれたのは、鋼鉄製の短剣だった。
一見、変哲も無い短剣なんだけど……。
名前:鋼鉄製の短剣+12
攻撃:+30
階級:上級
属性:無し
特攻:人型
ん?なんだろ名前に+12って付いてる。
「見た目は普通だからな、よく分からないだろうがコイツは切れ味が恐ろしくいい。腕の良い鍛冶士が武具を打っている最中に虹色に光る事があるんだが、その現象が起こった物は例外なく特別な切れ味が発揮されるんだ。これはその例外の短剣って事だな」
そうか、その光った時にきっと+が付くんだな。
だけど12ってなんだろう。
おじさんの説明は続く。
「ただ、光った物の中でも切れ味の差は出るみたいでな……だが、こいつの切れ味の良さは俺が保証するぜ」
へえ、中々良さそうだな。
けど特攻ってなんだろう?おじさんの説明には無かったけど……。
おじさんは鑑定を持ってないから、この内容を見る事が出来ない。
だから、きっと知らないんだと思う。
「うん、良さそうだね!いくらなんですか?」
おじさんは奨めた物を褒められて嬉しそうな顔をしながら答える。
「そうだな、本来は金貨12枚と言うとこなんだが、予算の事もあるしな……金貨8枚でいいぞ」
金貨4枚も安くしてくれた!?いいのかな……。嬉しいけど心配だ。おじさん損しちゃうよ。
「すごく嬉しいんだけど……いいの?おじさん。損しちゃうよ」
僕が心配そうにそう言うと、おじさんは一瞬キョトンとして大声で笑い出した。
「うははははははははっ、坊主、子供のくせに大人に気を使うんじゃねーよ」
「……ありがとう、おじさん」
僕がお礼を言うと少し照れた様子でカウンターの後ろの棚を指さす。
「もう一本については、そこの短剣棚にあるヤツから好きなのを選びな、どれを選んでも今坊主が使ってる解体用のヤツより物はいいからな」
そう言われて棚を見る。
鑑定してみたが確かにどれも似たような物だ。
ん、待て……なんか変なヤツが一本混ざってるぞ。
名前:始まりの短剣
攻撃:+10
階級:無級
属性:成長
特攻:無し
なんだろう、妙に気になるな……。
色こそ刀身から持ち手部分まで全て真っ黒だが、他の短剣と何も変わらないように見える。
だけど、何か気になる。
変な名前がついてるし、属性が成長って意味が分からない。
うーん、どれも変わらないという事だから、これにしておこうかな。
「おじさん、これにするよ。いくらかな?」
「ほう、それか銀貨60枚でいいぞ」
僕はおじさんに二本分の代金を支払ってお礼を言う。
「いい物をありがとう!大切にするね」
「おお、坊主も無理はするなよ?命あっての物種だからな」
次は、隣の防具屋さんだ。
「こんにちは!」
弟さんの方は既に結婚をしていて、カウンターには奥さんだけが居た。
「あら、マイン君、こんにちはー!その短剣……ひょっとしてお義兄さんのとこで買い物してくれたのかな?」
「はい!おじさんにいい物を売って貰えました!あといつもの差し入れです!」
そう言って、オーク肉を奥さんに渡すと、すごくびっくりしていたけどすぐにニコリと笑ってくれた。
「凄いわね、オーク肉なんて!いつもありがとうマイン君」
「いえいえ、それで革の装備一式を買いたいんですけど……予算が金貨10枚位なんですけど全部揃いますか?」
そう言うと、奥さんは人差し指を唇に当て、考える。
「うん、マイン君にはいつもお世話になってるし……」
そう言って装備一式を持ってきてくれた。
「今まで、マインが装備してたのって確か兎の革鎧よね?これはブラックウルフの革鎧なの、かなり防御力とか上がると思うわ」
す、すごい!?ブラックウルフの革装備なんて、C級以上の装備だよ!?
金貨10枚なんて絶対無理の筈だ。
「ええ?いくらなんですか?そんなに予算無いのです……」
「金貨10枚でいいわよ、これ見た目は凄く綺麗だけど一応中古なのよ。訳あって一度も使わなかったヤツをうちが引き取ったヤツだからね」
”訳”が気になるけども、そう言う事なら……いいのかな?
お姉さんに感謝して、代金を支払い装備を受け取った。
よし、これで武器と装備が整ったぞ。
家に帰って鑑定結果の事を考えよう。