第139話 スキルの種って何なのさ!?
あ、もしかして……!
僕は収納袋から、もう一つの小石を取り出した。
僕の予想が正しければ……!!!!ああ、やっぱりそうだ!
フェンリル様が言ってるのはコレだったんだ!
収納袋から、取り出したのはお風呂で大活躍の常時系のスキルが貼り付けてある小石だった。
名前:小石
【スキル】
常時:水
常時:水
常時:水
常時:水
常時:水
常時:水
常時:水
……明らかにスキルの表記の仕方が違う!
スキルの種は【風の種】(3) と一つのスキルに重ねて貼り付いている。
けど【常時:水】は1つのスキルが複数並んでいる。
……それに、貼り付けた数が合わないんだ。
風の種は全部で8個、水の種は全部で12個貼り付けている筈だ。
なのに鑑定結果は……。
名前:小石
【スキルの種】
【風の種(大)】(2)
【風の種】(3)
【水の種(大)】(2)
【水の種】(2)
風の種の数がおかしいし、何より1つしか手に入れていない筈の【風の種(大)】が2つある。
そして手に入れてもいない【水の種(大)】が2つもある。
つまり、これは……。
『フェンリル様、スキルの種って重ねて貼り付ける事が出来て、5つ貼り付けると(大)に変化するんですか?』
僕が推測した事をフェンリル様に確認してみると……。
フェンリル様は口元をにやりと歪ませて『正解だよ』と嬉しそうに答える。
『厳密に言うと、それはスキルでは無いのさ』
……え?スキルじゃない?じゃあ何なの!?確かに鑑定結果も意味不明ではあったけど……。
『世界樹は魔力をこの世界に魔力を供給していると教えただろう?
あの迷宮に住み着いている魔物はね、体内に世界樹から発せられる魔力を取り込んでいるんだよ。
スキルの種、スキルと名が付いているけどね、厳密には純粋な魔力の塊なのさ。
イメージで言えば、粘土みたいなもんさ、小さい粘土に小さい粘土を混ぜあわせるとちょっと大きい粘土になるだろう?
だから、お前の【ペースト】を使って同じ所に貼り付ければ、粘土のようにスキルの種同士がくっつき大きくなるのさ』
なるほど“スキルの種という名の魔力の塊”そう考えればわかりやすいのか。
あれ?だけど……これって一体何に使う物なの?
『魔力の塊って事はよく分かりました!けど、これ何に使う物なんですか?』
『さあ?私もよくわからないねえ、そもそも【スキルの種】なんて物は今までは何の価値も無かったんだよ。
その種を内包している魔物が死ねば、再び世界樹に取り込まれていくだけの物なんだ』
『……じゃあ、意味の無い物なんですか?』
フェンリル様の説明を聞き、落胆しながらそう言うと、フェンリル様はそれを力強く否定する。
『いや“今までは”と私は言ったんだよ、この【スキルの種】の事はね、私も神様から聞かされたのさ。
そして神様にお前に伝えるように言われたんだ。だから必ずお前に必要となる物の筈さ』
神様が僕に!?そして、フェンリル様が言う“今までは”と言う意味。
これは多分【鑑定・全】と【カット&ペースト】を持った僕が現れたからと言う意味じゃないだろうか。
……もしくは、神様の見つけた【鑑定・全】と組み合わせるもう一つのスキルと言う意味か。
なんにせよ、僕の持っているスキルを何とかする事で、今まで意味が無かった【スキルの種】が意味のある物となる。
そう言う事なんだろう。
『……わかりました、時間が出来たら世界樹の迷宮を攻略してみます』
うん、やる事が立て込んでいて、いつ頃になるのかわからないけれど……。
必ず世界樹の迷宮は攻略しよう。
『ああ、まだ先は長いからね、焦らずにやればいいさ。
アレを何のために集めなきゃならないのかも、そのうち分かるだろうよ』
フェンリル様がそう話しをまとめた。
そして、ちらっと空中を飛び回っているクゥに目を向けてから、軽く溜息をついた。
『……しかし、ケートスのとこの娘も相変わらず元気だね。うちの子達といい勝負だよ』
『きゅきゅ?』
自分の話題が出た事で、クゥがこちらをみて首をかしげている。
そして、ふよふよとこちらに向かって飛んでくる。
『きゅっ!ふぇんりるおばさま、およびになりましたか?』
『いや、何大した事じゃないよ、うちの息子と仲良くしてやっておくれ』
『はい!だいじょうぶです!わたしたち、すっごくなかよしですから!ね!』
クゥはそう言って、僕の頭の上で眠そうにしているわっふるのところに飛んでいった。
『わふぅぅぅぅ』
『もう、しっかりしなさいよ!』
う~ん、これもう寝ちゃうんじゃないか……。めーぷるとるーぶるは完全に寝ちゃってるもんな。
もう少し、フェンリル様と話したかったけど、また今度にしようかな。
『わっふる、眠そうなので、取りあえず今日の所は帰りますね!』
僕がそう言うとフェンリル様はすくっと立ち上がって、僕の顔をペロっと舐めて『気をつけて帰るんだよ』と言ってくれた。
そして、そのままエイミさんに近づいていき、エイミさんの顔もペロっと一舐めする。
『エイミ、あんたもしっかりするんだよ。時間は掛かるかもしれないけどね。
マインがきっとあんたの不幸だった今までをひっくり返してくれるだろうさ。
だから、あんたはしっかりと腐らずに頑張るんだよ、いいね』
突然、顔を舐められ驚きのあまり動きが止まったエイミさんだったが、フェンリル様の言葉を聞いて表情がどんどん引き締まっていく。
『……はい、頑張ります』
そして、僕等はルーカスの自宅へと帰っていくのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「おかえりな……さ……」
黒い渦を抜けて、戻った我が家。待っていたのはアイシャだった。
最初に家に戻ったのはエイミさん。次に僕とわっふる……そしてクゥ。
ふよふよと空中を漂うクゥを見たアイシャの言葉が途中で止まる。
「……どうしたのだ、アイシャ。旦那様が戻ってきた……って!!!なんだその生き物は!?」
ああ、シルフィもか。
『……おにいさま、わたし……いてはいけない、こなんですか?』
目に涙をいっぱい溜めて、僕の腕の中にクゥが飛び込んでくる。
アイシャとシルフィには「きゅ、きゅ、きゅう~~~~~~」としか聞こえていないだろうけど、自分達が傷つけてしまった事は分かったみたいだ。
『大丈夫だよ、あの二人もいきなりクゥを見たからビックリしただけだからね』
なんとなく気まずい表情でお互いの顔を見合う、僕のお嫁さん二人。
「んと、紹介するね。神獣ケートス様の娘さんで、クゥって言うんだ。
本人とケートス様の強い要望でわっふるみたいにうちで預かる事になったんだ。
今日からわっふる同様、家族の一員と言う事でお願い」
僕がそう言うと、クゥが恐る恐る二人に顔を向け「きゅきゅきゅーきゅー!」と頭?を下げる。
「な、なんて言ったの!?この子」
「し、神獣ケートス様ぁ!?」
「『クゥと言います、仲良くしてください』だって」
それぞれの反応を見せる二人に向かって、僕がそう言うと、アイシャがぼそっと「……可愛い」と呟く。
「すまなかった、悪気はなかったのだ、許して欲しい。
私は旦那様の妻の一人、シルフィード・フォルトゥーナと言う。クゥ、よろしく頼む」
シルフィが騎士らしく、ぴしっと背筋を伸ばしてクゥに話しかける。
「きゅ、きゅ!」
「……ごめんなさいね、クゥちゃん。はじめまして私はアイシャ、アイシャ・フォルトゥーナよ。
私もマイン君の妻の一人なの。仲良くしてね!」
「きゅうきゅー!」
クゥも二人の言葉を聞いて、少し機嫌が直ったのか僕から離れて、二人の下へと飛んでいく。
うん、問題ないみたいだね。
こうして、我がフォルトゥーナ家に新たな家族が誕生したのだった。
お読み頂きありがとうございました。
135話と136話の内容を2月6日に大きめの変更・修正をしております。
ご確認の程、宜しくお願いします。
今後ともどうぞ宜しくお願いします。
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【改稿】
2017/02/11
・全般の誤字を修正。