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第137話 世界樹の迷宮(2) 対一階層ボス

お待たせしまして申し訳ありませんでした。

「マインさん、石ぶつけましたー!」


エイミさんの声を聞き、襲ってきたマンドラゴラに短剣を振り落とす。


大分、先に進んだけれども、現れる魔物はマンドラゴラかザリガニばかりだ。


【スキルの種】というのも、物珍しかったが、持っているのはどの魔物も同じ物ばかりだった。

マンドラゴラは【風の種】、ザリガニは【水の種】だ。


「うーん、フェンリル様は僕に取っては宝の山だと言ってたけど。

 正直、何が宝なんだかよく分からないな……【スキルの種】の事かな?」


エイミさんやクゥ、わっふるも最初こそレベルが低かったので、レベル上がり方は大きかったが、今は僕と同じで全く上がらなくなってしまった。


今までの経験から、低いレベルのうちに高レベルの魔物を倒すと一番【獲得経験十倍】の効果があるように感じる。

そして、自分のレベルより低レベルの魔物を倒しても、一向にレベルはあがらないようだ。


こうなるとスキルも狩れない、レベルも上がらないで此処にいても時間が勿体なく感じてくるよね。


エイミさんも直接戦闘に参加している訳では無いけど、それなりに慣れてきた感じがあるしね。


元々、三兄弟のピクニック代わりに来たのだから、ボスを倒したら家に帰るのが良さそうだ。

多分、この迷宮の真髄はもっと奥に進んだ所にあるんだと思う。


『このフロアのボスを倒したら、神霊の森に戻ろうと思うんだけど、どうかな?』


僕がそう言うとめーぷるとるーぶるの二匹が、いやだいやだと駄々をこね始める。


わっふるにお兄ちゃんらしく説得をして欲しいとお願いすると、胸をドンと叩いて『わふ、おれにまかせろ!』と言って弟達の説得に入る。

長男の説得が功を奏したのか、当初よりは大分大人しくなってきた二人だったが、今だ駄々を捏ね続けている。


『わふぅ……』そうわっふるが力なく声を上げると、クゥがふよふよとめーぷる達へと近づいていく。


『いいかげんにしなさーい!!おにいさまが、こまってますよっ!』


ヒレをばたばたと左右に動かし、尻尾をビタンビタンと上下に振り回しながら、だだを捏ね続ける二匹に説教を始めた。

その凄まじい剣幕に押され、二匹が徐々に静かになっていく。


『……わかりましたか!?』


『わふぅ~~』


どうやら説得完了したらしい。満足げな表情をして僕の方に戻ってくるクゥ。


『しずかになりましたわ!ほめてください!おにいさま!』


クゥとは正反対に疲れた表情で戻ってくるわっふる。


『二人とも……ご苦労様、ありがとうね』


クゥの背中とわっふるの頭を優しく撫でながらお礼を言う。


『めーぷるとるーぶるも、こっちにおいで』


しょんぼりとしている二匹の頭も同じように撫でてあげると、少し元気を取り戻したようだ。


『……さて、わっふる、ボスのいる方角は分かる?』


僕達の中で恐らく一番、気配察知の能力に優れているのがわっふるだ。


似たような景色ばかりで、何処にボスがいるのか全く予想が付かない。

わっふるの感知能力に賭けるのも悪くない選択肢だと思う。


『わふふっ……さがしてみる!』


僕に頭を撫でられて、元気を取り戻したわっふるが張り切って鼻をくんくんと鳴らしてボスの気配を探しはじめる。


「わっふるちゃん、そんな事出来るんですか?」


エイミさんがさっきの僕とわっふるの会話を聞いて、質問してくる。


「うん、わっふるの気配察知能力は凄いんだよ!

 僕も【気配察知・大】を持ってるけど、わっふるには叶わないもの!」


自慢げにわっふるの事を話す僕を見て、エイミさんはクスっと笑顔を見せた。


「マインさん、わっふるちゃんの事、本当に好きなんですね♪」


その言葉を聞いて、わっふるの尻尾が激しく揺れ動く。どうやら、嬉しいみたいだ。


「うん、大好きだよ!だって大事な家族なんだもの!」


『おにいさま!わたしもだいすきですか!?』

『『まいんーおれたちもだいすきかー?』』


『うん、当たり前だよ!めーぷるとるーぶるも大好きだし、クゥもまだ知り合って間もないけど、ちゃんと大好きだよ!』


僕の返事を聞いて、わっふる兄弟とクゥは大喜びだ。


『まいん!ぼす、みつけたぞー』


尻尾を大きく振りながら、わっふるがボスを見つけた事を教えてくれた。

嬉しそうなわっふるの喉元をゴロゴロと触ってあげると目を細めて、わふぅ~と尻尾を振っている。


「よし、じゃあ行ってみようか!ボスをみんなで頑張って倒そう!」


わっふるの先導で、このフロアのボスがいると思われるエリアへと僕等は足を向ける。


途中で、ザリガニと数回遭遇したが、さっきの会話で気分が高揚しているわっふる達とクゥの神獣軍団があっという間に蹴散らしてしまう。


勿論、スキルは【カット】しているけれど、やはり持っているのは同じ物だけだった。

やはりこの世界樹の迷宮(ダンジョン)は、同種の魔物であれば同じスキル構成のようだね。


力の迷宮(ダンジョン)やオークの集落で出会った魔物は同種でも、違うスキルを持った奴が結構いた事を考えると、これもこの迷宮(ダンジョン)の特徴なのかもしれないね。

そのせいで、何だかよくわからない【水の種】と【風の種】が一杯たまっていくよ。


神霊の森に戻ったら、このスキルの正体をフェンリル様に尋ねてみよう。


【補助魔法・命中】【魔法・水大】の二つのスキルは、メンバー全員に既に貼り付け済みだ。

エイミさんもこの2つのスキルがあれば、ボス戦でも戦えるかもしれないよね!


石を投げてるだけだけど、何度か戦闘を繰り返したので、大分彼女も慣れたような感じがする。

……うん、ボス戦では彼女にも参加して貰おうかな。


『わふっ!ついたぞ!このおくに、ぼすがいるぞ!』


わっふるが右手を挙げて指しているのは、樹木の蔓が複雑に絡まって構成されている巨大な扉だった。

恐らく、力の迷宮(ダンジョン)と同じように、扉に触れれば中に入れるのだろう。


『じゃあ、入る前に準備をしよう!』


そう言うと、神獣軍団とエイミさんが僕の周りに集まってくる。

どんな魔物が居るのか予想もつかないからね、僕も全力を出そうかとおもう。


『まず、僕が鑑定するからみんなは中に入っても動かずに少し待っててね』


そう言いながら、僕はライトニングエッジと鋼鉄短剣を取り出し、そのまま装備する。

そしてまだ【再生】を貼り付けしていないクゥとエイミさんに貼り付ける。


めーぷるとるーぶるの二匹には以前に貼り付けしているから問題は無い筈だ。

……ブラックドラゴン戦の教訓を忘れたら駄目だもんね。


よし、準備完了だ。頑張ってやっつけよう!


僕達は順番に扉に手を当てて、ボス部屋へと突入していく。


『全員、入ったかな?』


周りを見回し、わっふる三兄弟、クゥ、エイミさんがきちんといる事を確認する。

そして、ボス部屋へとゆっくりと視線を向ける。



名前:ユグドラシル・メガビートル

LV:48

種族:甲殻族

性別:-


【スキル】

ドライバーレイド

飛翔

補助魔法・防御


【スキルの種】

風の種(大)



……ボスは、とてつもなく大きな金色のカブト虫だった。

なんかすごく気色が悪い造形だ……。


「あれ、すごく気持ち悪いですね……」


エイミさんが心底嫌そうに感想を述べる。

僕でも気持ち悪いと思うのだから、女性のエイミさんから見たら、そりゃ嫌だろうね。


取りあえず、まずは何時も通りにスキルは奪ってしまおう。

【飛翔】なんて厄介なスキルを使われたら面倒くさくなりそうだからね。


……それはそうと、このカブト虫のスキルの種は(大)って書いてる。

他のスキルみたいに強さとかの段階があるんだろうか?すごく気になっちゃうね……。


さて、じゃあ戦闘開始だ!


ザリガニもそうだったけど、見た目から硬そうな印象の魔物だ。

攻撃力を底上げして、戦闘に望む。


【身体強化・大】【腕力強化・極】【豪腕・聖】【鉄壁】【ストレンクスライズ】を一気に掛ける。


わっふるも【豪腕・極】【身体強化・小】【ストレンクスライズ】を使用している。


『きゅー!みなさん、あつまってくださーい!』


クゥが全員を呼び集める。そして【神獣の守り】を使用すると全員の防御力が上昇していく。


『よし、じゃあ行くよ!』


僕がそう言って、カブト虫へと【補助魔法・防御低下】を放つ。


こちらの攻撃力を上げて、敵の防御を下げる。

これで、いくらあのカブト虫が硬くても、ノーダメージという事はない筈だ。


【補助魔法・防御低下】が命中し、カブト虫もこちらに対して攻撃態勢を整える。


……だが、既にスキルは【カット】済みだ!

飛ぶ事も出来ないし、スキルを使った攻撃も行う事が出来ない。


何故、自分の思う通りにスキルが発動しないのか理解出来ないままカブト虫は、怒り狂ってその巨大な角を振り回し始める。

振り回した角はクゥに向かって迫ってくる。


『きゅきゅきゅぅーーー!』


先程の戦闘でも見せたスキル【バブリブルシャワー】でクゥも迎えうった。

大きな衝撃音を辺りに撒き散らし、カブト虫の角はあらぬ方向へとその軌道を変える。


そして、その衝撃が体全体に伝わったのか、大きくよろめきカブト虫は体勢を崩した。


その隙にわっふる三兄弟が次々に【神獣の双撃】を叩き込む。


先程のクゥの攻撃と違う破壊音、激しい打撃音が響き渡り、硬く光沢があったカブト虫の背中部分、羽根が隠れている辺りに大きな風穴を開ける。

その穴から、カブト虫の体液が猛烈な勢いで吹き出してくる。


「今だ!エイミさん!撃っちゃえぇぇぇぇぇぇーーーー!」


僕がそう叫ぶと、緊張した面持ちでエイミさんが【補助魔法・命中】から【魔法・水大】を連続して叩き込む。

魔法が直撃し、大きく揺らめくカブト虫目がけ、更にクゥが【神獣の突撃】を使い、体当たりを敢行する。


クゥのスキルも凄かったのだろう、更によろめき踏ん張りが効かなかった事もあったのだろう。


あれだけ巨大なカブト虫が猛烈な勢いで数メートル先へと吹き飛んでいく!

何度も地面にバウントを繰り返し、僕達が進入してきたボス部屋の扉に叩きつけられ、カブト虫はピクピクと痙攣を繰り返している。


そこに僕は一気につめよって【武技:シャークグロウ】を叩き込んだ。

攻撃系スキルを複数乗せた、その一撃はカブト虫の硬い甲殻をも簡単に切り裂き、その命を消し去った。


『……ふう、終わったかな?』


動かなくなったカブト虫から大きく距離を取り、そう呟く。

ひょっとしたらまだ生きているかもしれない。油断はせずに警戒し続ける。


しばらく様子を見ていると、カブト虫の体からうっすらと輝く光の塊が抜け出てくるのが確認出来た。


試しに【カット】を使い、解体を試みてみると、あっと言う間に解体が完了した。


「……どうやら、無事に倒せたみたいだね」


さて、迷宮(ダンジョン)のボスと言えば、楽しみなのは戦利品だね。



【ロウバスト・シールド】:非常に硬質な素材で造られた盾。

             強い魔力を帯びており物理攻撃によるダメージを大きく減衰させる。



ドロップしたのは、光沢のある黒色で金色の縁取りがしてある少し大きめな盾だった。

見た目からして、凄く防御力がありそうで高価な感じがするよね!


持ち上げてみたが、その大きさから考えられない程、軽い。

これなら女性が持っても大丈夫そうだ。


予想以上に、いい物が手に入ったよ!


取りあえずこれで区切りがついたからね、予定通り神霊の森へと戻る事にしよう。



…………………………………………………………………


名前:マイン・フォルトゥーナ

LV:63

種族:ヒューム

性別:男

年齢:15歳

職業:狩人


【スキル】

ドライバーレイド new!

飛翔 new!

補助魔法・防御 new!


【スキルの種】

風の種(大) new!


----------


名前:エイミ

LV:55

種族:ハイ・エルフ

性別:女

年齢:121歳

職業:族長の一人娘


【スキル】

補助魔法・命中 new!

魔法・水大 new!

再生 new!

----------


名前:わっふる

LV:56

種族:神獣

性別:♂

状態:テイム中 (マイン)

【スキル】

補助魔法・命中 new!

魔法・水大 new!


----------


名前:クゥ

LV:52

種族:神獣

性別:♀

状態:マインの妹(?)


【スキル】

補助魔法・命中 new!

魔法・水大 new!

再生 new!

お読み頂きありがとうございました。

そして大変お待たせ致しました。


本日から本編更新再開致します。

なお、135話と136話の内容を2月6日に大きめの変更・修正をしております。

ご確認の程、宜しくお願いします。


今後ともどうぞ宜しくお願いします。


【改稿】


2017/02/07

・ロウバスト・シールドの外見に関する文章を修正。

・文末の獲得スキルを修正。

・三男の名前の誤りを修正。


2017/03/20

・全般の誤字を修正。

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