第136話 世界樹の迷宮(1) 命名と不思議なスキル
ダンジョンに入った早々、新たな家族が加わると言う全くもって予想外の出来事が発生した。
神獣様の子供と一緒に暮らしてるなんて一般の人達が知ったら、きっと卒倒しちゃうよね。
取りあえず、気持ちを切り替えて当初の目的を果たす事にしよう。
元々は、わっふる三兄弟の散歩兼、ダンジョンの探索だ。
ついでにフェンリル様が言っていた変わったスキルとやらも見ておきたい。
今回はあくまでも散歩である。それほど先まで進むつもりは無いけれど、せっかくだから2フロア位は様子を見ておきたいかな。
「取りあえず、予定通り世界樹の迷宮を進んでみよう」
僕の提案に全員が同意し、先へと進む事になった。
ケートス様とは一端ここでお別れだ。
『それじゃあ、マイン。娘を宜しく頼んだよ。何かあったら何時でも連絡をしてきなさい』
『わかりました、一端引き受けたからにはわっふると同じく僕の家族です。
全力で守りますから安心して下さい!』
ケートス様と別れてから、広間を抜けて通路らしき横穴を通過して次の大広間へと足を踏み入れた。
するとそこで僕の右肩辺りにふよふよと浮いていた子ケートスが話しかけてきた。
『まいんおにいさま、わたくしにも、すてきななまえを、つけてほしいです!』
お、おにいさま!?
なんか、調子が狂っちゃうなあ……。
『わっふるなんて、かわいいなまえ……うらやましいです!わたしもほしいです!』
……それにしても、名前かー。確かにこれから一緒に暮らす事になるんだもんね。
名前があった方が、何かと便利なのは間違いないだろう。
『う~ん、名前かー』
僕がそう答えを返すと、わっふるの弟二匹も騒ぎ出した。
『ずるいぞー、おれたちも、なまえがほしいぞー!』
……む、君達もかい?これは参ったな……。
どうせなら、この二匹はわっふるに寄せた名前がいいよね。兄弟なんだし。
この子達の様子を見てると、今回は家族会議をする余裕は無さそうだな……。
今すぐ付けないと、三匹とも大騒ぎしそうだしね。
『……分かったよ、じゃあ名前を考えようか』
先ずは子ケートスからつけてあげよう。
ケートス様は“クジラ”とか言ってたよね。
う~ん、そうだなあ……。
“クゥ”ちゃんと言うのはどうだろうか。
可愛いと思うけど、気に入るかな?
『んじゃ“クゥ”ってどうだろう?……“クゥ”ちゃん、うん可愛いんじゃないかな?』
僕がそう言うと子ケートスはつぶらな瞳をきらきら輝かして、僕の顔の周りをふよふよと周回し始める。
『おにいさま!それです!それすてきですぅー!』
どうやら気に入ったようだ。良かった。
『じゃあ、クゥで決定かな?』
『はいですー!わたし、くぅです、きゅきゅーっ!』
クゥがはしゃいでいる姿を見て、期待に目を輝かせるわっふるの弟達。
……すっごく僕を見てるよ
『……じー』
『……わくわく』
わっふるに寄せた名前か……。
『よし、次男!君はめーぷるだ!』
『わふっ!おれ、めーぷる!』
『三男!君は……るーぶるだ!』
『わふふっ!おれ、るーぶる!!』
わっふる、めーぷる、るーぶるの三匹がぐるぐると僕周りを走り回る。
そして、ついでクゥも僕の目の前で曲芸浮遊?をしている。
なんだか……収集が付かなくなってきたな。
『ほらほら、先に進むよ。嬉しいのは分かったら、気持ちを入れ替えて!』
相変わらず、はしゃぐ子達を宥めつつ、広間の奥へと進んでいく。
「……いた」
名前:マンドラゴラ
LV:21
種族:妖精族
性別:-
【スキル】
範囲睡眠<小>
【スキルの種】
風の種
……え?何、この【風の種】って?
マンドラゴラって言う魔物も初めて見たけど、全くどんなスキルなのか分からないぞ。
ひょっとして、これがフェンリル様の言ってた変わったスキルなのかな?
と、取りあえず【カット】してみよう。
【風の種】:風の魔力
……鑑定しても解らないってどういう事なの??
風の魔力ってただそれだけを言われても……。
『ねえ、クゥ。知ってたら教えて欲しいんだけど、ここの魔物ってなんか変わったスキルを持ってるの?』
『きゅー、よく分からないのです』
そうかあ、ここに住んでるクゥでも、やっぱり分からないか……。
まあ、解らない物は仕方ない、何はともあれ、あいつを倒すか。
『まいん、あれもう倒していいかー?』
うん?わっふる達が何かうずうずしてるな。ああ、暴れたくて仕方ないのかな?
『うん、いいよ』
僕がそう言うと、三兄弟は以前、神霊の森で狩りをした時のように一気に獲物に近づいてやっつけてしまった。
『まいん、なにか、いいすきるあったのか?』
『うーん、なんかよく分からないスキルがあったよ』
『??』
『取りあえず、進もうよ』
名前:マンドラゴラ
LV:26
種族:妖精族
性別:-
【スキル】
範囲睡眠<小>
【スキルの種】
風の種
名前:マンドラゴラ
LV:21
種族:妖精族
性別:-
【スキル】
範囲睡眠<小>
【スキルの種】
風の種
また、マンドラゴラか。
レベルは違うけど持ってるスキルは同じだね。
……スキルを取りあえず【カット】してと。
【範囲睡眠<小>】は、取りあえず僕とわっふるに貼り付けて……【風の種】はよく解らないから石に貼り付けておこう。
あ、そうだ!クゥにも【獲得経験十倍】を貼り付けておかないとね。
……ついでに、めーぷるとるーぶるにも貼っておこう。
これからも一緒に戦う事もあるだろうしね!
すーぱーわっふる三兄弟になる日も夢じゃないね!
僕はライトニングエッジを装備して、戦闘態勢を取る。
「エイミさん、僕とわっふる達があいつらと戦い始めたら、その辺の石を拾ってぶつけてくれるかな?」
「……石ですか?」
「うん、攻撃を当てないと経験値が入らないからね。なので、両方ともに当ててね」
「経験値?よくわかりませんでけど、わかりました」
あ、そうか。スキルの説明をしたけど経験値と熟練度の話はしなかったっけ。
「ああ、後で説明するよ。今はまず石だけぶつけてくれればいいからね」
「了解です」
エイミさんはそう言いながら、地面から手頃な大きさの石を探し始めた。
『まいんおにいさまー、わたしは?』
『クゥも一緒に攻撃してもらえる?』
『わかりました!頑張りますっ!』
クゥも尻尾を上下に動かしながら気合いを入れているようだ。
『よし、攻撃開始だ!』
全員の準備が整ったのを確認して、僕とわっふる三兄弟、クゥが一気にマンドラゴラに向かっていく。
『エイミさんが当てるまで、倒したらダメだよ』
『『『わふ!』』』
『きゅきゅー』
僕等の姿を視認したのだろう、マンドラゴラ達も「キュピィ」と意味不明な声を発しながらこちらに向かって突進してくる。
……む、予想以上に動きが速いぞ!
ふざけた姿とは裏腹に結構な強敵なのかな?ああ、けどさっきわっふる達が簡単に倒してたよね。
そう考えると、やはり見た目通りの雑魚なのかも?
僕は【衝撃の魔眼】を連発し、マンドラゴラの動きをけん制する。
一体に命中し、もう一体には残念ながら避けられてしまった。
……だけど、元々けん制のつもりで放ったスキルだ。
外したって問題がない。本命の攻撃はわっふる達だから!
『きゅー!』
クゥが口から小さな風船のような物を大量に吐き出した。
その風船?は【衝撃の魔眼】を喰らったマンドラゴラに直撃する。
そして【衝撃の魔眼】を回避したマンドラゴラには三兄弟の末っ子、るーぶるが体当たりをしてダメージを与える。
『ナイスだ、クゥ、るーぶる!』
『わふっ!』
僕が二人に声を掛けていると、後ろからエイミさんの叫ぶ声が聞こえてくる。
「マインさーん、石あてましたー!」
さっきより、大分前の方に来てる所を見ると、石を当てるの大分苦労したみたいだね。
まあ、レベルも低かったから当然と言えば、当然か。
『よし、倒しちゃおう!』
クゥの風船攻撃(多分【バブリブルシャワー】ってスキルだと思うんだけど……)が命中したマンドラゴラに短剣を振るおうとした時、クゥの叫び声が聞こえた!
『おにいさまっ!あぶないです!』
……え?
クゥの声がする方向を見てみると、何故か大きなザリガニが僕に向かって鋏を振り下ろす姿が目に入る。
まずいっ!?一体何処から来たんだ!? 慌てて【絶対回避】を使用する。
……どうやら間に合ったみたいだ。
ザリガニの大きな鋏は僕の体をすり抜けて、地面に突き刺さる。
お返しだよ!【武技:シャークグロウ】
鋏が地面に突き刺さり、身動きが出来なくなっているザリガニに向かって、シャークグロウを叩き込む。
と、同時にわっふる達もマンドラゴラ二匹に止めを指したようだ。
『……ふぅ、危なかった、クゥのおかげで助かったよ』
『よかったです!きゅきゅっ!』
『まいん、こいつ、まだいきてるみたいだぞ』
わっふるがぺしぺしと死にかけのザリガニを叩いている。
名前:ユグドラシル・クレイフィッシュ
LV:32
種族:甲殻族
性別:-
【スキル】
補助魔法・命中
魔法・水大
【スキルの種】
水の種
……甲殻族、はじめてみる種族だね。
鎧みたいな体をしてるから、それでシャークグロウを耐えれたのかな?
【補助魔法・命中】もはじめてみるな。
取りあえず【カット】しておこう。
【補助魔法・命中】:対象相手の物理攻撃に命中率を引き上げる。一度使用すると3分のクールタイムが必要。
え?これダメじゃない?敵の命中率上げたらピンチになっちゃうよ?
『どうしたー?まいん』
わっふるが【補助魔法・命中】を見て考えこんでいる僕に声を掛けてくる。
【カット】したスキルとその能力を説明すると、わっふるではなくクゥが僕に話しかけてきた。
『おにいさま、それはなかまに、むかってつかえば、いいのではないですか?』
!!!
なるほど、それは気が付かなかったよ。
確かにそうだね、別に敵に向かって使うだけが魔法の使い方じゃないんだ。
ひょっとしたら、他にも仲間に向けて使う魔法が他にもあるかもしれないね!
『クゥ、教えてくれてありがとうね!』
『きゅっ!どういたしましてです!』
僕がお礼を言うとクゥは嬉しそうにふよふよと僕の回りを飛び回る。
そんなクゥを微笑ましく見守りながら、エイミさんをこちらに呼び寄せる。
「エイミさん、こっちきてくださーい」
僕の呼びかけでエイミさんがとてとてとこちらにやってきた。
「まいんさん、どうかしましたか?」
「これに、石をぶつけて下さい」
結構、レベルも高いから、経験値も高いと思うんだ。
エイミさんが石をぶつけたのを確認して、クゥに止めを指して貰う。
よし、この調子でボス部屋まで進んで行こう!
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名前:マイン・フォルトゥーナ
LV:63
種族:ヒューム
性別:男
年齢:15歳
職業:狩人
【スキル】
補助魔法・命中 new!
魔法・水大 new!
【スキルの種】
風の種 new!
水の種 new!
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名前:エイミ
LV:11 → 55 LevelUp!
種族:ハイ・エルフ
性別:女
年齢:121歳
職業:族長の一人娘
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名前:わっふる
LV:31 → 56 LevelUp!
種族:神獣
性別:♂
状態:テイム中 (マイン)
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名前:クゥ
LV:23 → 52 LevelUp!
種族:神獣
性別:♀
状態:マインの妹(?)
【スキル】
神獣の突撃
神獣の守り
バブリブルシャワー
獲得経験十倍 new!
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小石:風の種(2) new!
お読み頂きありがとうございました。
大変お待たせしまして申し訳ありません。
修正版に差し替えさせて頂きました。
今後ともどうぞ宜しくお願いします。
※若かりし日の国王様視点のスピンオフを本日から投稿しました。
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基本的にリプは行わない予定で、何かしらの報告事項があった時につぶやきます。
また随時行っております、名前募集等の読者様参加イベントの告知などもつぶやく予定です。
※今まで通り活動報告にも告知は致します。