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第133話 【鑑定・全】の可能性

『神様にも許可は取ったんだけどね……

 どうだい?あんた達、十年前に戻ってみたくは無いかい?』


……え?十年前に戻る??どういう事?


今、フェンリル様は一瞬僕を見てから、話しをした。

つまり、僕に関係があるって事?


けど、全く意味が分からないよ……。


わっふるも首を傾げて、考えている。


「ど、どういう事なんですか!?十年前に戻るって!!!」


エイミさんが大声を上げて、フェンリル様に問いかける。


『落ち着きなさい、それに声を上げる必要はない。

 頭の中で私に向かって話しかければいい、そういう加護をお前に授けたからね』


言葉を発しない念話の会話。それが出来ない者からは、異様な光景に見えるだろうけど非常に便利な能力だ。

今は近距離会話なので、さほど恩恵は感じないが、遠距離でも普通に会話が出来るメリットは計り知れない。


そして、近距離であったとしても秘密の会話が行えるという強みがある。


エイミさんは授かったばかりなので、まだ慣れていないようだね。

徐々に慣れていくとその便利さが分かるんじゃないかな?


……って、そうじゃない。

十年前に戻ると言う言葉の意味をフェンリル様から聞かなきゃ!


『……こうでしょうか?それでどういう意味なんでしょうか?』


『それを話す前に、マインに聞きたい。この娘にお前のスキルの事を話しても構わないかい?』


え?何で急にそんな話しが出てくるの!?

知ってるいる人間の数は出来るだけ少ない方がいいと思うのだけど……。


『なに、心配する事は無いよ。この娘が同意すれば“加護”を“契約”に切り替えるからね』


『……フェンリル様がそう言うと言うのなら、きっと僕のスキルの事を話さないと話しが進まないって事なんですよね?』


『まあ、そういう事だね。で、どうするんだい?お前が話さないと決めたなら、この話しはここまでになるけどね』


……うーん、ずるいや……これ、どう考えても断れないよね……。

後ろ盾にもなってもらってるフェンリル様が言うんだ。


こればかりは仕方ないよね。


『……はい、分かりました……。エイミさんが“契約”を受け入れるというならば構いません。

 と言うか、フェンリル様ずるいです……』


僕が拗ねて見せると、フェンリル様はクククッと笑い声を上げる。

うん、これ絶対に確信犯だよね。


フェンリル様は、そのままエイミさんに“加護”と“契約”の違いを説明し、僕のスキルの事を知るかどうかの選択を迫る。


『……と言うわけだ、どうだい?契約に切り替えるかい?』


……これは、聞くまでも無いと思う。


『はい、お願いします、決して他言もしません』


ほら、やっぱりね。


エイミさんの宣言を受けて、フェンリル様は加護を契約へと切り替えを行う。


『さあ、マイン。お前のスキルの事をこの娘に教えてあげな』


フェンリル様から話を振られ、溜息をつきながら【鑑定・全】【カット&ペースト】の事を話していく。


「……という事なんだ。このことは、僕の家族と国王様を含めた一部の王家の方々だけが知ってる秘密なんだ」


僕の説明を一通り聞き、エイミさんはポカンと口を開けて、呆然としていた。

……長い間、生きているエルフの常識から見てみても、やはり僕のスキルは規格外なんだね。


「マインさん、凄いです……!」


正気に戻った彼女の第一声がこれだった。

心配していた僕にスキルを奪われてしまう可能性を恐れる様子は全く感じない。


「エイミさん、僕が怖くないの?」


思わず、そう尋ねると……。


「え?なんで怖がるんですか?」


「いや、僕にスキルを奪われる可能性があるでしょう?」


「……ああ、なるほど!そう言う事ですか。そう言う事ならば怖くないですよ?」


これまた、予想外の答えが返ってきた。


「な、なんで……」


「だって、マインさんじゃないですか!」


エイミさんが何でそんな事、聞くの?みたいな顔で言い放つ。

僕が呆気に取られていると、またもやフェンリル様がクククッと笑い声を上げる。


『さて、本題に入ろうかね』


僕とエイミさんのやり取りが一段落付いたのを見計らって、フェンリル様がそう声を掛けてくる。

弛緩していた空気が一瞬でピリッと引き締まる。


『……はい、お願いします』


『まず、結論から言うよ。

 今は無理だが、マインの努力次第で過去に戻る事が出来る……可能性がある』


過去に戻る!?僕の努力次第で!??

……全く訳が分からないぞ!?どういう事!?


『お前の持つ【鑑定・全】は【カット&ペースト】だけが最良の組み合わせという訳では無いという事さね』



!!!!!



『確かに【鑑定・全】と【カット&ペースト】と言う組み合わせで、神も予想しなかった能力をお前は見つけ出した。

 それ故、神はあり得ないと思われる物を含め、他の組み合わせで何が出来るかを調べて見たのだ。

 詳しい事は私達も聞かされてはいないがね、【鑑定・全】と組み合わせる事で大きく化けるスキルを見つけたそうだよ』


フェンリル様の話は僕にとってまさに青天の霹靂だった。


【鑑定・全】と【カット&ペースト】


果たして、この組み合わせ以上の物が本当に存在するのだろうか。


いや、神様が確認したというのだ。

確実に存在するのだろう。


一体、どんな組み合わせなんだろう、そしてどんな事が出来るようになるのだろう。

だめだ、全く想像が付かない。


……ただ、一つだけ予想出来る事といえば『過去に戻る』は、きっとこの組み合わせが必要になるのだろう。


『いいかい、よくお聞き。

 私も他の十柱も、神からどういうスキルが必要なのか、教えて貰ってない。

 ただ、お前しかその力に辿り着く事が出来ないと言う事だけを教えて貰っている。

 そして、その力に辿り着くには相当な努力が必要だという事もね。

 お前がその娘を真に救済したいと考えるなら、目指してみる事だね。

 そして、お前がそれを目指すと言うのならば、その為に我ら神獣十柱は力を貸す事を約束するよ』


……そうか、だから……ユミル様は僕にも加護をくれたのか。

僕がきっとエイミさんを救う為に、その力を求め動き出すだろうと思っていたから。


『……分かりました、勿論僕は目指します!エイミさんは、僕の仲間です!

 仲間を助けるために、頑張るなんて当たり前の事ですから!』


僕のその決意表明を、その場にいたエイミさん、フェンリル様、ユミル様、わっふる三兄弟……。

そして世界樹(ユグドラシル)が聞いていた。


そう、僕がこれから目指すべき、本当の目的が……今、決まったんだ!

お読み頂きありがとうございました。

今後ともどうぞ宜しくお願いします。

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