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第130話 世界樹の加護

二日間、全力で走ってやっと到着する事が出来た。


神様がこの地上に与えた神木・世界樹(ユグドラシル)


フェンリル様の話では、この世界全てに魔力を供給する役目を持っているらしい。

そして、会話や動いたりする事はないけど、自らの意思を持っている存在との事だ。


意思があるのなら、僕がまずやる事は一つだね!


「はじめまして!世界樹(ユグドラシル)様!

 僕はマイン、マイン・フォルトゥーナと言います!

 この子は僕の大事な友達で、わっふるです!」


「わふっ!わふぅ!!」


勿論、会話が出来ないのだから返事が返ってくる事は無い。

けど、これは僕にとっては当たり前の事で、大事な事なんだ。


……ん?なんだろう。


何か暖かな感じがする……お母さんみたいだ。


何故だか、急にお母さんに抱きしめられた時のような暖かなものを感じるよ。

この感じは……世界樹(ユグドラシル)から!?


そう思って世界樹(ユグドラシル)を見上げると、僕とわっふるの体がうっすらと緑色の光に包まれた。


この感覚は……フェンリル様やヨルムンガンド様から加護を受けた時と良く似ている!?



名前:マイン

LV:63

種族:ヒューム

性別:男

年齢:15歳

職業:狩人


【世界樹の加護】

世界樹の祝福 new!




名前:わっふる

LV:31

種族:神獣

性別:♂

状態:テイム中 (マイン)


【世界樹の加護】

世界樹の祝福 new!




……やっぱりだ!

エイミさんにもあった【世界樹の加護】を授かってる!


世界樹(ユグドラシル)様!ありがとうございます!!」

「わふわふわっふー!」


僕達がお礼を言うと、世界樹(ユグドラシル)は、枝を揺らして答えを返してくれた……ように感じたんだ。


そして、枝を揺らした事で何枚かの葉がユラリユラリと落下してくる。

落下してくる葉は、僕の足下へとゆっくりと時間を掛けて落ちてきた。


……ひょっとして、これ僕にくれると言う事なのかな?


僕がそんな事を考えると、再び世界樹(ユグドラシル)が枝を軽く揺らした。

戦争の引き金にも成りかねない程、貴重な素材“世界樹の葉”を貰えた事に改めて僕はお礼をする。


「本当にありがとうございます!すごく嬉しいです!」


わっふると話し合い、しばらく世界樹(ユグドラシル)の根本で寝ころんで、休憩をする事にした。

フェンリル様からは、早く戻るように言われているけど、少しくらい休憩してもいいよね?


穏やかな優しい風と暖かな空気を吸っていると、体からどんどん疲れが抜けていくみたいだ。

なんとなく、家のお風呂に浸かってる感じに似てる気がするよ。


……ひょっとしたら、世界樹(ユグドラシル)から発せられてると言う魔力が原因なのかもしれないね。

家のお風呂は魔力が含まれている魔力水だしね。




あまりの気持ちよさに、僕もわっふるもその場で寝てしまったようだ。

そろそろ日が暮れそうになっているところを見ると、どうも二時間位は寝ていたのかな?


「わっふる、わっふる、起きて!おーきーてー!」


僕は仰向けになって、寝ているわっふるを起こすべく、ゆさゆさとその体を揺する。

……しかし、お腹を見せて寝てるのって獣的にはどうなんだろうね?


『わふー?……もう、たべられないぞ』


『……寝ぼけないでよ』


激しく寝ぼけるわっふるを何とか起こし【固有魔法・時空】を発動。

急いで、自宅へ帰るのだった。


二日間、全力で走ってやっと辿り着いたと言うのに、帰りはほんの一瞬。


何度も言うけど、やはり【固有魔法・時空】は規格外な魔法だよね。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



……そろそろだろうか。

いよいよ私の止まっていた十年の月日が動き出す、そんな予感がします。


私達、エルフを絶滅寸前まで追い込んだ存在。



《神獣・ユミル》



本当ならば、ユミル様と敬わなければならないのだろうが、どうしてもそんな気持ちにはなれない。


だって、そうでしょう?


直接の原因は神獣・ユミルにあった訳では無い。

そんな事は、勿論分かっています。


ヒューム族の王が、エルフの里に侵略した事が切っ掛けだって言うのは理解してるんです。


……だけど、だけど、あの時ユミルさえ現れなければ……。

エルフ族は、私の仲間や両親は生きていたと思うんです。


世間では、ヒュームの王が行ったエルフ族への侵攻は今でも強く非難されています。


当時、例え奴隷となっていたとしても、生きてさえいれば、他の国から救いの手があったかもしれません。


そう、“生きて”さえいれば……なんです。


仲間達を殺したのは、神獣・ユミル。

……その圧倒的な暴力でした。


私は覚えています。

今でも鮮明に思い出すのです。


ユミルが槌を振るう度に裂ける大地を。

凄まじい勢いで燃え広がる木々の姿を。


そして、何百もの命が瞬く間に消えてゆく様を……。


……覚えているんです、今でも……。


そのユミルと私はこれから対面するのです。


正直、言えば怖くて堪りません。

今すぐ、ここから逃げ出したいです。


でも、同時に私の中で止まっていた10年という時間が再び動き出す。

そんな予感もするのです。


マインさんやシルフィード殿下、アイシャさん。

そして、わっふるちゃんに……フェンリル様。


私を励まし、応援してくれているのです。

だから、私は決めたんです。


……逃げないって。


もうすぐです。

もうちょっとで、始まります。


私のその想いが届いたのでしょうか。


何も無かった目の前の空間に黒い渦が出現しました。


……そう、遂に迎えがきたのです。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



何時も通り、黒い渦を通過すると我が家の居間へと繋がった。


「ただいま!」


僕がそう言って、居間へ入るとそこには既にエイミさんが待っていた。

既に覚悟が決まったのか、随分と落ち着いているように見える。


「おかえりなさい、マイン君」


アイシャが出迎えてくれる。


「食事をしてから向かう?」


「エイミさんさえ良ければ、すぐに行こうと思う」


そう言って、エイミさんを見る。


「はい、私の準備は終わっています」


うん、じゃあ行こう。


エイミさんの運命を正しい方向に戻す為に!


僕は、フェンリル様と合流するために神霊の森へと空間を繋ぐのだった。


お読み頂きありがとうございました。

今後ともどうぞ宜しくお願いします。

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