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第119話 閑話・ギルドの依頼を受けて……

本話にマイン達は出てきません。

と、ある冒険者パーティ視点で話しが進みます。

「……そろそろオオセ王国の領域に入る、全員気をつけろよ」


「……ああ、そんな事は言われなくても重々わかってるよ」


俺達はB級冒険者パーティ「舞い上がる風」だ。


冒険者ギルドの依頼で、この国に魔族共が侵略を開始したという噂の真偽を確認するために来ている。

もしも、その噂が本当だったら、オオセ国の現在の状況を調べ、救出できる者を見つけたら保護するのが目的となる。


俺達「舞い上がる風」は六人構成のいわゆる標準的なパーティだ。


(タンク)役と攻撃手(アタッカー)二名、探索者(シーカー)治療師(ヒーラー)魔法使い(キャスター)と言う構成だ。


随分前……そうだな、五年程このメンバーで活動をしている。


あ?俺か?俺は攻撃手の一人で、このパーティのリーダーをやっている。


今回、俺達がこんな危険な依頼を受けたのには二つ理由があるんだ。


一つ目は、報酬とギルドポイントが突出して良かった事だ。

長期の拘束になるし、魔族や魔人が絡んでいると思われるからだと思うが、ここまで高額の報酬を得られる依頼は今まで見た事が無い。


もし、今回依頼を達成すれば、得られるギルドポイントで、俺達はB級からA級冒険者へと昇格する事が出来る。


通常、B級からA級になる為には莫大なギルドポイントが必要だ。

かつ、誰が見ても納得出来るような実績も必要となってくる。


その二つを一気に得られる……これは俺達に取って非常に魅力的だった。



……そして、もう一つ。


実はこっちの理由としては大きい。


今回魔族の侵攻を受けたというオオセ王国は、パーティメンバーの探索者(シーカー)の故郷だ。

故郷が侵略を受けていると聞き、ヤツは黙っていられなかった。


放っておけば、一人で行きかねない勢いだったため、前記の報酬の良さもあり、危険を承知でここまで来たのだ。

五年も一緒に死線をくぐり抜けてきた仲間をみすみす死なすわけには行かないからな。


「この崖から、ミルドの町が見渡せる筈だ」


探索者(シーカー)のヤツがそう言って、崖の縁まで早足で歩いていく。

そして、崖から眼下を一望し、探索者(シーカー)は愕然とした声を上げ、膝から崩れ落ちる。


「……こ、これは……」


言葉を無くし、崩れ落ちた探索者(シーカー)の後を追い、俺達も崖の縁まで急いだ。


そして、そこから見えた光景は……。


「な、なんでだよ……ここから確かにミルドの町が見えた筈なんだ」


俺達が隣に居る事に気がついているのか、それともいないのか、探索者(シーカー)はそう声を漏らす。


……俺達の眼下に広がる光景は、かつてミルドの町と呼ばれた物が大規模な火災で燃え尽きた廃墟だった。


「……コイツはひでえなあ」


思わず、俺が呟いてしまう。


よく見れば、町中の建物が至る所で倒壊しており、単純に火災が原因で町がこのような有様に成ったとは思えなかった。


「なあ、リーダー……これってやはり魔族の侵攻があったって事じゃないのか?」


(タンク)役のメンバーが俺に話しかけてくる。


「……ああ、断定は出来ないが……可能性は高いだろうな。

 それにこの様子じゃ、生きてるヤツもいないかもしれんな……」


俺の言葉を聞き、探索者(シーカー)が地面を思い切り、殴りつけた。


「なんでだよっ!なんでなんだ!!」


大声で叫びながら、何度も何度も拳を地面に叩きつける。

拳が裂け、血が飛び散っているがヤツは一向に殴りつけるのを止めなかった。


しばらくその様子を見ていたが、流石にこれ以上は不味いと(タンク)が、力ずくで腕を押さえつける。


「……気持ちは分かるがな、そこら辺でやめておけ」


号泣する探索者(シーカー)(タンク)に任せて、魔法使い(キャスター)にこれからの方針を相談する。


魔法使い(キャスター)と言うだけあって、俺達の中では一番思慮深く、冷静な判断が出来る男だ。


「さて、これからどうする?」


「……そうですね、魔族の侵攻があったと言うのは十中八九間違いないでしょう。

 そう言う意味では、ここで引き上げても問題は無いかと思いますが……」


「まあ、確かにそうだな。……生存者、お前は居ると思うか?」


「正直……絶望的でしょうね、あの有様ですから。だけど、探してみる価値はあるでしょう。

 もし、生き残りがいるなら……ここで探さなかったら、それこそ死んでしまう事になる」


……まあ、そうだろうな。

どちらにせよ、ギルドの依頼は生存者の救出という項目もあるんだ。


「オッケー、早速探索にいこう。一人でも生き残りがいれば救出するぞ」


そう判断を下し、俺が号令を出すと、先程まで号泣していた探索者(シーカー)が真っ先にミルドの町の跡地へと駆けていった。


「おいおい、一人でいくんじゃねーよ!」


まだ、魔物がいる可能性だってあるんだ。

単独行動は絶対に不味い。


慌てて、俺達も探索者(シーカー)を追って、走り出す。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「どうだ、居たか?」


「いや、ダメだ……」


二時間程掛けて俺達は町中をくまなく捜索した。


崖の上から見たときは遠すぎて分からなかったが、ミルドの町の跡地には多くの遺体が至る所に転がっていた。


年配の男性、若い女性、小さな子供……。

きっと、奴らに襲われるまでは幸せに暮らしていたのだろう。


どの亡骸も苦しそうな、絶望している表情を浮かべている。


そして、女性の遺体は揃って、陵辱された痕が見られる。

恐らく侵略してきた魔物の中にはオークもいたのだろう。


また、それなりの数の魔物……主にゴブリンやコボルトなどの下級魔族ばかりだが、の亡骸も転がっていた事から、この惨劇は魔族の侵略が原因だと言うのは、ほぼ間違いないだろう。


ギルドへ報告する際の証拠として、収納袋に何人かの遺体と魔物の死骸を収納し、王都へ引き上げる決断を下す。


「辛いだろうが……撤収するぞ」


必死の形相で、町中を捜索していた探索者(シーカー)に声を掛ける。


すると、探索者(シーカー)がいきなり大声で叫んだ!


「……き、聞こえるっ!……リーダー、泣き声が聞こえるぞっ!!」


「なに!?生存者がいるのか!!」


俺達の声を聞いた仲間達が一斉にこちらに注目する。


「……こっちだ!」


探索者(シーカー)が、泣き声が聞こえてくる方へと走り出す。

当然、俺達もすぐ、後を追いかける。


「ここから声が聞こえる!おいっ!生きてるか!聞こえるか!!助けに来たぞ!!!!」


確かに、大きく崩れた建物の奥から小さな子供の泣き声らしき物が聞こえてくる。

俺達は分担して、瓦礫の撤去を始める。


瓦礫が崩れてしまっては元も子もない。


慎重にそして、素早く撤去作業を進めていく。


……40分ほど過ぎただろうか。


ようやく、崩れた瓦礫から5歳位の女の子を助け出す事が出来た。


……恐らくこの子の父親だろう。


この子を抱きしめ、息を引き取っている男性も一緒に瓦礫から発見された。

身を呈して崩れる瓦礫から必死に我が子を守った父親の姿に俺達は静かに黙祷を捧げる。


「……パパっ!パパァァァァーーー!!!!」


煤で顔を真っ黒にした女の子が、既に冷たくなった父親に縋り付き、泣き叫ぶ。


許さねえ、絶対に許さねえ……。

探索者(シーカー)じゃなねえが、こんな酷い事をやりやがった魔族を俺は絶対に許さねえ。


泣き疲れ、眠ってしまった少女を、治療師(ヒーラー)に任せて、俺達はこの立派に我が子を守り抜いた父親を埋葬すべく簡単ではあるが墓を作る。


「名も知らぬ、勇気ある男性よ。

 あなたの娘さんは、俺達が必ず無事に王都へ連れて行くと約束しよう。

 ……だから、……だから、安心して眠ってくれ。

 そして、約束しよう。

 いつかあなたの無念を……必ず晴らしてみせると」


俺達は女の子の父親に、そしてこの町で無念を抱えて死んでいった者達へ、そう誓い王都へと急いで戻る事にしたのだ。


お読み頂きありがとうございました。

今後ともどうぞ宜しくお願いします。

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