第117話 エンハンスウエポン -Enhance Weapons-
あの大騒ぎのお泊まり会?から一週間ほど経ち、ようやく僕達の生活も落ち着き始めた。
……さて、お泊まり会の後、みんながどうなったか、だけど。
まず、エイミさんはギルドへ戻った。
お泊まり会で我が家の雰囲気を肌で感じたエイミさんは、ギルドからこちらに移る決断を正式に表明した。
これにより、エイミさんは荷物をまとめ、うちに引っ越してくる事が正式に決まったわけだ。
ただ、引っ越しをするに辺り、ギルド内での手続きやら王都とのやり取りなんかがあるみたいで、うちに引っ越ししてくるのは1~2週間ほど掛かる見込みだ。
また、エアリーも渋々ながら王宮へと戻っていった。
彼女については、国王様と王妃様の許可を得る事が出来れば、我がクランに正式に迎える事になる。
だが、許可が出たとしてもクランハウスが出来てからという事になっているので、こちらに来るのは随分と先になるだろう。
そして、僕達はと言えば……。
まず、家の中を徹底的に片づけた。
エイミさんが住む部屋を確保しなければならないからだ。
そして部屋の片づけも一段落ついた辺りで、シルフィが僕とデートをしたいと言い出した。
何でも以前、僕とアイシャが行った力の迷宮探索を彼女はデートと定義しており、自分もと言い出したのだ。
同じ事を自分もしたいと強く主張したので、僕とシルフィだけで再び力の迷宮に行く事になったのだ。
ほぼ前回と同じ日程をこなし、無事に迷宮探索も終えて、家に帰ってきてからは、体をゆっくりと休める事にした。
考えてみたらスキルを得てから、ずっと忙しかったからね。
休憩を取る事は必要だと、家族全員の賛成を得てゆっくりと休養を取ったんだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
僕等が休養を取って、そろそろ一ヶ月が経つ。
そろそろ、次に僕達が何をするべきか、まとめておこうかと思う。
まず、最初に思いつくのは王家から「永久なる向日葵」への依頼だね。
新たに発見された出来たての迷宮の探索ならびにコアの破壊が目的だ。
本来なら急いで取り掛かるつもりだっただけれど、エイミさんの安全も確保しなければならない。
エイミさんの身の安全を確保出来るようクランハウスの完成を待ってからのアタックになるかな?
出来たての迷宮だから、それ程巨大な物では無い筈だけど、それでも迷宮に変わりはない。
それなりに時間は掛かると考えておくのがいいだろうからね。
そして、次だけど……始まりの武器の作成をそろそろ進めたい。
スキルの事を奥さん達はもう知ってるわけだから、あの武器について詳しい事を話しても問題は無い。
短剣だけでは無く、弓と片手剣も手に入った訳だし、本腰を入れるのも悪くは無いだろう。
そして一番大きな目標が”牢獄の迷宮”の攻略だろう。
希少なドラゴンのスキルを得る事が出来る貴重な機会となる。
自由を奪われた竜種、そうヨルムンガンド様は言っていた。
だけど、こうも言っていた。
『殺しても構わないが、逆に殺されぬようにな』と。
……つまり、竜種とハンディ戦とはいえ、戦う必要があると言う事だ。
”牢獄の迷宮”に挑むにあたってさし当たり【鑑定・全】のレベルを上げなきゃいけない。
せっかくだから種族スキルもカット出来るようにしておきたいからね。
……と、同時に竜種と戦って、勝てる実力を身につける必要もある。
そう考えるとやはり、もう少し後……もっと力を蓄えてから臨むべきだろう。
取りあえず、今決まってる事はこれ位かな?
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「……と言うわけで、僕達の次の目標を決めたいと思います!」
わっふるを頭に乗せたまま、僕は話し始める。
「うん、十分休養も取ったし、そろそろ動き出さないとね!」
「ふむ、旦那様のおかげで得たスキルにも慣れねばならないし、いいのではないか?」
「わふっ!」
全員が賛成のようなので、僕は収納から“始まりの短剣”“始まりの片手剣”“始まりの弓”を取り出してみんなの前に置いた。
「あれ?これって……アドルの町で買った武器よね?」
「ん?そうか、これが言ってた武器なんだな?だが、見た目は兎も角、大した性能では無いのだろう?」
『わふぅ!!えんはんすうえぽんだっ!!!』
……え?何それ?
『……わっふる?この武器の事?その“えんはんすうえぽん”って』
『びっくりしたぞ、おれもはじめてみた!
たぶん、それ、へるおばさんがいってたせいちょうするぶきだとおもう』
……へるおばさん??
『へるおばさんって?』
『かーさんのいもーと?』
!!!!!
神獣ヘル様の事!?
何でもわっふるが言うには、神様が人間達の魔族への切り札の一つとして用意した武器らしい。
素材を集め、錬成を行う事で、強い武器に成長をしていくんだって。
何段階も成長させる事で、現存するどんな武器よりも強力なアーティファクトと呼ばれる武器に進化するみたいだ。
始めて見たときに、何かを感じたから買ったんだけど、そんな凄い物だったとは……。
「……それが、この武器という事か……」
わっふるの説明を聞いて、シルフィが“始まりの片手剣”を手に取った。
『そのくろいやつは、めいきゅうで、けっこうたくさん、てにはいるってきいたぞ』
ああ、そう言えばアドルの武器屋さんもそう言ってたね。
何でも、アーティファクトまで進化させようとすると、凄まじく大変らしい。
途中まで作って挫折する者が大量に出たために、神様は少しでも最後まで作る事が出来る人間を増やす為に、一番最初の武器は、沢山地上にばらまいたらしい。
手に入れる人が増えれば、当然完成させる人間が増えるという事だからね。
「……そんな訳で、この武器を完成させるべく、頑張ろうと思うんだけどどうかな?」
僕がそう提案すると、アイシャもシルフィもすぐに賛成してくれた。
「実は以前、トロールを狩りに力の迷宮に行ったよね。
……あれ、実はこの短剣を成長させるための素材の一つだったんだ」
名前:始まりの短剣
必要素材:トロールのなめし革×10、アイアンインゴット×20、上級魔石
名前:始まりの片手剣
必要素材:マンティコアのなめし革×5、アイアンインゴット×30、上級魔石
名前:始まりの弓
必要素材:マンティコアのなめし革×3、エルダートレント材×10、上級魔石×2
僕が必要になる素材を二人に説明する。
「ふむ、差し当たってアイアンインゴットは親方の所で買えないか?」
シルフィが思いつく。
ああ、そうか!親方の工房なら手にはいるかもしれないね!
「……上級魔石もコカ・グリースやトロールゲイザーを倒した時に手に入れてるから……後少しじゃない?」
アイシャも力の迷宮を思い出したのだろう。
「……となると、マンティコアとエルダートレントの討伐が差し当たっての目標だな」
うん、思ったより早く二段階目までは成長出来そうだね。
お読み頂きありがとうございました。
今後ともどうぞ宜しくお願いします。
【改稿】
2017/01/15
・全般の誤字を修正。