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第105話 少女の秘密(2)

「……分かりました、マインさんとシルフィード殿下に事情をお話します。

 その話を聞いたうえで、お二人が許してくれるというのなら、お世話になりたいと思います」


そう言って、エイミさんは僕とシルフィに向き合う。


「まず、この姿ですが……本当の私の姿ではありません。

 ある魔導具を使った魔法で姿を偽っているのです」


……姿を偽っている?

そうか、その魔法がわっふるの言っていた奴なんだね!


けど、なんで姿を偽る必要があるんだろう?


女性である事を偽る……?

という事なら状況によっては理解出来ない事は無い。


……けれど、エイミさんは魔法を使ったと言う今でも女性のままだ。


むむむ、全く想像がつかないや。

多分、姿を偽るという行為その物がギルド長や、国王様を悩ませる彼女の秘密に直結しているんだろう。


何故、偉い人達が揃って頭を悩ます事になるのか?

いよいよ、それが明らかになるんだ。


……なんか、すっごくドキドキしちゃうな。


「今から、その魔法を解除します」


そう言ってエイミさんは右腕に付けていた腕輪に手を当てて、何か聞いた事のない発音の言葉を口にした。


すると、一瞬彼女の体が透き通り、全く別の女性へと姿を変えていく。

そして、完全に別人となった彼女を見て、僕とシルフィは……言葉を無くしてしまった。


「「……エ、エルフ」」


そう、エイミさんの正体はエルフだった。

しかも、上位種族と呼ばれるハイ・エルフだ。



名前:エイミ

LV:11

種族:ハイ・エルフ

性別:女

年齢:121歳

職業:族長の一人娘


【スキル】

固有魔法・木

魔法・回復大

錬金術


【世界樹の加護】

世界樹の祝福



エルフ、それは森の奥地に生息し、自然と共に生きる種族。

その容姿はこの世の物とは思えない極めて美しく、尖った長い耳が特徴だ。


……そして、その優れた容姿が故に、心の無い他種族から男性女性問わず、その身をつけ狙う者は多い。

いや……多かったというべきだろうか。


ウィルズというヒューム族の国がある。

いや、今はもう滅んでしまったからあったというべきか。


時のウィルズ国王、彼はまさにエルフの美しさに魅了された者だった。

最初は不幸にも奴隷商人に捕まり、奴隷となってしまったエルフの女性を買いあさる事で己の欲望を満たしていた。


だが、その欲望は次第に大きくなっていく。

奴隷商人から買い集めながらも自らの指示でエルフを攫ってくるようになったのだ。


それでも彼の王の欲望は収まらなかった。

遂に己の立場を振りかざし、エルフの国そのものを我が物にしようと侵略戦争を仕掛けたのだった。


当然、良識ある他国の王達は、揃ってその愚行を非難し、その行動を止めるために合同で兵も出した。

……だが、結果として各国の差し伸べた救助の手がエルフ達に届く事は無かったのだ。


各国の兵士達がエルフの国に到着したとき、既にウィルズもエルフの国も滅んでしまっていたのだがら。


開戦当初、ウィルズ国により、蹂躙され多くのエルフは囚われの身となってしまった。

それも仕方ない事だろう、エルフ達はまさかいきなりそんな理由のために一国が侵略戦争をしてくるとは思ってもいなかったのだ。


不意打ち以外の何者でも無い。

元々、エルフは戦いを好む種族では無いのだ。


抵抗らしい、抵抗をする事も出来ず、瞬く間に制圧をされてしまったのだ。

ここで話が終わっていれば、まだ最悪の事態は避けられただろう。


だが、ウィルズ国王の暴挙はそれだけに留まらなかったのだ。


エルフの国には、世界樹と呼ばれる神樹がある。

世界樹から得られる素材はどれも破格の薬や武具となる為、彼の王はこの世界樹すら己の物としようとしたのだ。


そう、恐れ多くも神からこの世界の為に授かった神樹なのにも関わらず、だ。


彼の王は信心深くも無く、ただひたすら己の欲望のみに忠実な人間だった。

それ故、彼の目に映る世界樹という存在は”高価な素材を生み出す金の成る木”でしか無かったのだ。


それ故、エルフ達を制圧した後、世界樹から素材を得るため、大がかりな採伐命令を部下に出したのだ。


捕らえられたエルフ達や一部の心ある部下達が大きな声で制止したにも関わらずだ。


結果、ウィルズ国は滅びた。

制圧したエルフの民を巻き添えにして。


そう、世界樹を守る為に神獣ユミルが出現したのだ。


ユミルの力は凄まじく、まさに瞬く間にウィルズ国の軍隊を殲滅したのだ。


エルフの国全体にウィルズ国の軍隊は広がっていたため、ユミルの攻撃は結果としてエルフ達をも巻き込んだ。

勿論、生き残ったエルフ達はいるが、その殆どがその命を散らす事になったのは間違いが無い。


その後、ユミルはウィルズまで赴き、関係の無かった市民を含め、その全てを灰燼と化し、消えていったのだ。


……エイミさんは、そんな悲劇の種族エルフであると言うのだ。


当然ながら、今でもエルフを捕まえて奴隷にしようとする不届きな輩は存在する。

いや、寧ろ増えていると言っても過言では無い。


ウィルズ事件で元々人口が少なかったエルフが殆ど全滅してしまったのだ。

奴隷商からすれば、格好の獲物なのは間違い無い。


「……お分かり頂けましたでしょうか。

 今はこうして魔導具で姿を隠しておりますが、これも完璧ではありません。

 いつ何時、私を狙う者が現れるか分からないのです」


なるほど、国王様やギルド長が慌てる訳だよ。

国の長として、過去の経緯からエルフを保護するのは当たり前だ。


かと言って大々的にエルフを匿っていると発表するのも、そういった輩に居場所を知らしめるだけなので憚られると言う事か。


……なるほど、それで僕という訳なんだね。

戦力的な面、そして【固有魔法・時空】の存在。


こっそりと匿うのならば、うってつけと言うわけなんだ。


多分、国王様は王宮でアイシャから提案を受けたときに、王宮で保護する方がいいのか、僕等のクランで保護するのがいいのか悩んだのだろう。

結果、王宮で自由を制限されて暮らすよりも、自由に生活する事が出来る可能性が高い僕等の元を選択した。


きっと、エイミさんの事を考えて決めてくれたんだろうと思う。


「……私の正体を知った今でも、私を誘って頂けますか?」


エイミさんが、何もかも諦めた、そんな目をして僕の事を見つめている。


うん、僕の答えなんて最初から決まってるよ。

シルフィを見ると、彼女も頷いている。


「はい!エイミさん!これから宜しくお願いします!」


こうして、僕等に新しい仲間が増える事になったんだ。


お読み頂きありがとうございました。


2016年も今日で終わりです。

SMAPも今日で取りあえず終わりです。


私にとっても例年に無い感慨深い年となりました。


2017年がどのような年になるのか分かりませんが

きっと本作との関わりが中心となる1年になるのでしょうね。


マイン君達の冒険は、まだまだ続きます。

来年も変わらず、彼らを見守って頂ければ嬉しく思います。


2017年もどうぞ宜しくお願いします。


※活動報告でマイン君達のクラン名を募集中です。

良かったら、良い名前をつけて上げて下さい!


本日いっぱいで締め切りです。


【改稿】


2016/12/31

・全般の誤字を修正。

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