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第104話 少女の秘密(1)

「……ん?アイシャか、この騒ぎはお前が原因だったのか」


ギルド長がとても不機嫌そうに話しかけてくる。

そして、周りに群がっている冒険者達に大声で怒鳴りつける。


「テメエら、さっさと散りやがれ!やかましくて仕方ないわっ!」


流石、ギルド長だね!


一喝しただけで、あれだけ騒いでいた強面の冒険者達が一斉に静かになったよ!

そして、大人しくロビーの方へと散っていってしまった。


「……んで、何か用事があって来たんだろう?どうした?」


静かになった事で、少し気持ちも落ち着いたのだろう。

組んでいた手を外し、アイシャに向かって話しかけてくる。


「……まず、これを読んで下さい」


アイシャが国王様から託された封書を手渡した。

勿論、王家の蜜蝋で厳重に封緘されている。


「ふん、手紙……か?差出人は…………なにっ!?国王陛下だとっ!!?

 この封緘は間違いなく王家の物だ、それにアイシャが俺を騙す訳ない……。

 って事はコレ、本物の国王陛下からの手紙か!」


手渡された封書の差出人が国の一番偉い人だもの。

……そりゃ、驚くよね。


僕だって、シルフィと出会う前に渡されたら、同じような反応すると思う。

いや、立場を考えれば、もっと驚くだろうね。


「ギルド長、私がいるのだ。

 国王陛下からの手紙を所持していても何ら不思議はないだろう?」


「え?あ……っ!?シ、シルフィード殿下!?お見えだったのですか!?」


アイシャが主導で話を進めていたからね、シルフィは少し後ろに控えてたんだよね。

さっきのギルド内の状況を考えれば、冷静に観察する余裕は無かったんだろうね。


「……ああ、そうか!殿下、ご結婚おめでとうございます」


「ああ、ありがとう。

 それより、私も具体的には聞かされていないが、大事な話のようだ。

 人目の無い場所で話をしたいのだが、構わないか?」


「勿論です、こちらへどうぞ」


シルフィの依頼をすぐに承諾して、ギルド長自ら案内を買って出る。


そして、通されたのはギルド長の執務室からしか入る事が出来ない会議室のような部屋だった。


「ここならば、誰からも話を聞かれる事はありません。

 どうぞ、そちらにお掛け下さい」


部屋に入り、すぐに僕達に来客用の豪華な椅子を奨められた。


そして、再びアイシャから国王様からの封書を確認するように言われ、ギルド長は封緘を開けて中身を取り出した。


「……では、失礼します」


流石にシルフィの前ではギルド長も対応が丁寧になるんだね。

ギルド長ともなると、こういう対応も覚えないといけないんだ……。


僕等のクラン、アイシャとシルフィの様子から予想するに、代表は多分……僕になると思う。

そうなると、きっと僕もこういった対応や言葉遣いは覚えないと行けないんだろうね。


と言うわけで、せっかくだ!ギルド長の対応や話し方、そう言った事を観察して、学ばせて貰おう。


「……むぅ、なるほど……以前、王都に送った報告書の件ですか。

 陛下も随分と思い切った事を……考えなさる……。

 取りあえず、状況は理解致しました。早速エイミを連れてきましょう」


ギルド長がそう言って、席を立ち、足早に会議室から出て行った。

言葉通り、ギルド長自らエイミさんを連れてくるんだろうね。


そして、五分も経たないうちに以前、僕がオークの集落から救い出した女性。

そうエイミさんをギルド長は伴って、再び会議室に戻ってきた。


「……その節は本当にありがとうございました」


エイミさんは僕達に向かってお礼と共に深々と頭を下げた。

いきなり呼び出されて緊張しているみたいだ。


久しぶりに見たエイミさんは茶髪でポニーテールに髪の毛を結い、救出した時にはしていなかった超分厚いメガネを掛けていた。


この前は精神的に追い込まれていたので、しっかりと見る事が出来なかったけれど……。

眼鏡を外せば、中々愛嬌のある可愛い顔じゃないかと思うんだよね。


眼鏡外せばいいのに……。


まあ、尤も僕は普段からアイシャとシルフィと言う美人が側にいるから見惚れるまではいかないけどね。


そんな下らない事を考えていると、いきなりわっふるから念話で話しかけられた。

シルフィとアイシャの様子からすると僕にだけ話しかけてきているみたいだ。


『まいん、あいつ、なんかまほーつかってるぞー』


『あいつって女の人の事?』


『おお、そうだぞー!がおー』


『どんな魔法なのか分かる?』


『うーん、そこまではわかんないー』


魔法を使ってるって……エイミさんが使ってるのかな?

それとも魔法を誰かに掛けられてる?


……どちらにせよ、少し注意する必要があるかもしれないね。


けど、流石にわっふるだね!凄いよわっふる!!


僕の心の声が聞こえたのだろうか。

すっごい勢いで尻尾を振ってるよ。


ちなみに、当然僕の頭の上にいるから、尻尾がバシバシと後頭部に当たってるんだよね。

いや、別に痛い訳じゃないから問題は無いんだけどね。


あ、更に揺れが激しくなった……。


エイミさんの挨拶を聞き、僕がわっふるを頭に乗せたまま、軽く会釈をする。

必死に僕にしがみついているわっふるを見て、少し緊張が和らいだみたいだ。


「さて、エイミも来た事ですし、話を進めましょうか」


ギルド長がシルフィに向かって話しかける。


シルフィはギルド長に相づちを打ち、アイシャに話を進めるに促す。


「まず、私達の状況をお話しますね」


アイシャはそう切りだし、僕達が結婚をした事。

クランの設立を国に正式に認められて、このルーカスの町に本拠を置いて活動する事。

クランハウスを建設している事。


それらをゆっくりと順序立てて、話をしていく。


そして、いよいよ本題へと話題は移っていく。


「……状況はここまで話した通りです」


ここで、一度話を切り、エイミさんの表情をアイシャは伺う。

先程のわっふるの姿が効いているのか、特に緊張した様子もなく頷いていた。


「私と国王様はあなたの事情を知ったうえで、あなたをクランの職員として迎え入れたい。

 ……そう思っています、マイン君と姫様にはまだ事情を話してはいません。

 あなたの個人情報となるし、事情が事情だからね」


「……お話はよく分かりました」


エイミさんがゆっくりと言葉を選びながら話し始める。


「私も今のままがいいとは思ってはいませんので、とてもありがたいお話だと思います。

 ……ただ、皆さんに迷惑をお掛けする事になってしまいますので……この話は……」


ん?一体どんな迷惑なんだろ?


「エイミさん、忘れたの?

 うちのご主人様はオーク・キングを倒してあなたを救い出したのよ?

 マイン君の側にいる事が一番安全なんじゃないかしら?」


アイシャが僕にちらっと視線を移した後、再び話を続ける。


「あなたがいう迷惑……当然、想定したうえでこの話を持ってきているわ。

 安心して、絶対にあなたを守ってみせるから」


きっぱりとそう言い切って、アイシャは口を閉ざした。


「……分かりました、マインさんとシルフィード殿下に事情をお話します。

 その話を聞いたうえで、お二人が許してくれるというのなら、お世話になりたいと思います」


そう言って、エイミさんは僕とシルフィに向き合う。


……さて、わっふるから聞いた魔法の件も含めてどんな話が飛び出すんだろうね?

しっかりと聞かないと、だね!


お読み頂きありがとうございました。


活動報告でマイン君達のクラン名を募集中です。

良かったら、良い名前をつけて上げて下さい!


締め切りは12月31日23:59までです!


どうぞ宜しくお願いします。



【改稿】


2016/12/30 

・全般の誤字を修正。

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