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第101話 閑話・シルフィのお願い < 後編 >

「……見たことある天井だ」


此処は以前、アイシャと泊まった迷宮都市・アドルの高級宿屋・銀の鈴の一室だ。

しかも、同じ部屋だから当然見た事があるに決まってるよね。


そして、今回僕の隣で生まれたままの姿で眠っているのは……もう一人の奥さんであるシルフィだ。


本人たっての強い希望で、アドルの町にデートに僕達はやって来た。

そして、これまた本人の強い希望でこの高級宿屋・銀の鈴に宿泊した。


僕の奥さんとして、同じ立場のアイシャが経験した事を自分も経験したかったと何度も言っていたからね。

ここまではきっと満足してるんじゃないかな?


寝ぼけた頭をすっきりさせるため、んーっと伸びをしながらシルフィの寝顔を観察する。


アイシャは可愛い系の美人さんだけど、シルフィは格好いい系の美人さんだよね。


たまにむにゃむにゃと寝言っぽいのを漏らしている姿に普段とのギャップを感じて愛しく思える。

本当にこんな美人さんが僕のお嫁さんなんだと思うとちょっと嬉しく感じてしまう。



……さて、恒例の朝風呂に行ってこようかな。


気持ちよさそうに寝ているのを起こさないように、ゆっくりとベッドから抜け出る。

抜け出る時、掛け布団が少しだけめくれ、シルフィの上半身が顕わになった。


夕べ、飽きるほどに見たというのに、思わず息を飲んで魅入ってしまう。


姫騎士として、鍛え上げられたその体は、見事な程に均整が取れていて所謂芸術品と言っても良い。


「ダメだ、ダメだ、見てたらダメだ!!さっさとお風呂に行っちゃおう」


朝からやる気になっちゃダメ!と言う事で急いでお風呂へと小走りで移動する。


銀の鈴亭は高級宿だけあって、魔導具を使いお風呂を加熱、保温している。

その為、宿泊客がいる部屋のお風呂は常時、お湯が沸いている状態になっている。


今回みたいに、緊急避難的にお風呂に入りたい時には本当に助かるよね。

我が家だと、湧かす手間があるからね。


お湯を頭から被って、体をゴシゴシと洗う。

脳裏に浮かぶシルフィの裸の映像を体の汚れと一緒に洗い流していく。


「ふぅ」


何とか気分も落ち着き、お風呂に肩まで浸かる事にする。

……そういえば、前回はここらでアイシャが乱入してきたんだっけ。


「旦那様!おはよう!!背中を流しにきたぞ!」


……ああ、やっぱりか。


何度も肌を重ねているとは言え、大胆過ぎないかな?シルフィさん。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



結局、苦労してやる気を削いだのに、無駄になっちゃったよ……。


例によって例の如く、朝食ぎりぎりに宿の食堂に滑り込み、自己嫌悪に陥りながらご飯を食べる。

反対にシルフィは上機嫌で鼻歌を歌いながら食べている。


「~♪」


ああ、周りの目が痛いよ……。


「……シルフィ、食べ終わったら迷宮(ダンジョン)にいくよ」


「ああ!凄く楽しみだな!」


食事が終わった後、女将さんにお礼をして銀の鈴亭を出立し、力の迷宮(ダンジョン)に向かう事にした。



迷宮(ダンジョン)の入り口に辿り着くと前回の時、同様に受付をしている騎士の姿があった。

どうも以前いた騎士さんとは違う人みたいだね。


「っ!?」


騎士さんはシルフィの顔を見て、慌てて直立不動の姿勢をとって話しかけてくる。


「これは、シルフィード殿下っ!」


「ああ、ご苦労。だが、それほど畏まらなくても良いのだぞ?

 もう、降嫁して王女では無いのだからな」


そうは言うけど、騎士さんからすれば、畏まっちゃうのも無理は無いよね。

さっさと中に入って、騎士さんの気苦労を解いてあげなきゃね。


「こんにちは!中に入りたいのですが、いいでしょうか!」


前回同様、受付の紙に記入をして畏まる騎士さんに手渡した。


「……確かに預かりました、これをどうぞ」


金属プレートを受け取り、中に入る準備が整った。

さあ、中に入ろうとシルフィに声を掛けようとした所で、騎士さんに呼び止められる。


「で、殿下、宜しければ護衛を付けさせて頂きたいのですが……」


ああ、なるほど。


前回は僕とアイシャの二人だったから、そんな申し出は無かった。

だけど、シルフィと一緒ならば、当然と言えば当然だろうね。


いくら姫騎士と呼ばれるシルフィでも王家の人間だ。

降嫁したからと言って、実際にはそんな簡単な物ではない。


騎士達からすれば、何か事故があって、シルフィに万が一の事があれば大変な事になる。

護衛の申し出はある意味当たり前の事だろう。


「いや、ありがたいが不要だ。私と旦那様だけで何も問題は無い」


シルフィにはっきりと断られても「そこを何とか」と食い下がる騎士さん。

しばらくの間、問答が続いたが、結局はシルフィの剣幕に騎士さんは渋々ながら引き下がる形となる。


「……せっかく、旦那様とのデートなのに、なんで護衛も一緒にいかねばならんのだ」


そう呟くシルフィの手を握り、僕達は迷宮に足を踏み入れるのだった。





#力の迷宮(ダンジョン)、一階



一階はあっという間にボスの部屋までやってきてしまった。


出てくるスライムはシルフィが瞬殺していく。


僕は、戦闘に参加せず、ひたすら”ほんのり系のスキル”を収集していった。


いつものように小石に貼り付け収納袋にしまっているとシルフィが問いかけてきた。


「旦那様、その小石は?」


「ああ、カットしたスキルを一時的にこれに貼り付けておくんだよ」


「……ふむ、なるほど!ん?そう言えばその石、お風呂に置いてあったな」


やっぱり小石の存在は、気が付いていたんだね。

……そりゃ、風呂場に小石が置いてあれば疑問に思うよね。


きっと、アイシャも気が付いていたんだろうなあ。


ほんのり系のスキルがどんな物なのか、そしてお風呂のお湯をどうやって入れているのかを説明する。


「!!そんなスキルがあるのか!?」


そりゃ、驚くよね。

僕だって初めて見たときはびっくりしたし……。


実際に【常時:水】が付いた小石をシルフィに手渡す。


「ほら、これ」


「ほ、本当だっ!?水がじわりじわりと出てくるぞ!!

 これが……例の魔力水と言う訳なのか?

 てっきり旦那様がスキルで作った水だと思っていたが……」


そんなやり取りを済ませ、ボス部屋に突入する。



名前:エクスシア・スライム

LV:16

種族:スライム族

性別:無し


【スキル】


【アビリティ】

軟体監獄(モルスク・プリズン)



ボス部屋に入った途端、シルフィがボス目がけて走り出した。


ああ、こんなとこまでアイシャの真似しなくてもいいのに!

慌ててアビリティを奪い、小石に貼り付ける。


どうせなら、ドロップアイテムも出て欲しいよね!

シルフィが倒す前に僕も一撃入れておこう。


そうすれば【プロバビリティー】の効果で何か良い物が出るかもしれない。

僕は小石を拾い、エクスシア・スライムに目がけて【指弾】を打ち込む。


小石の着弾と同時にシルフィが【武技:シャープネス・ソード】を放っているのが見える。


あ、死んだ……。

まさに一撃必殺だね。


まあ、ライナス・スワードなんて強力な武器で【武技:シャープネス・ソード】を放てば当然だよね。


ん?……まてよ、ライナス・スワード?


「どうだ!旦那様!ボスを一撃で倒したぞ!」


ふんすと若干胸を張りながら、笑顔で僕に向かって叫ぶシルフィ。


「うん、見てたよ!格好良かった!!」


そう言いながら、シルフィの所に駆け寄る。


「見てくれ!」


そう言って“エクスシアオイル”と“エクスシアケープ”の二つを両手に持って僕に見せてくる。


うん【プロバビリティー】の効果はあったのかな?

これで“エクスシアケープ”もアイシャとシルフィの二人に渡るね!


「どっちもシルフィが持って帰ってね!

 オイルはアイシャと二人で分けて使ってね」


「ああ、分かってる!」 


「ところでシルフィ、言い忘れていたんだけど……。

 そのライナス・スワードさ、実は専用の武技が付いているんだよ。

 【武技:サクリファイス・ツヴァイ】って言うんだ」


「おぉっ!!」


なんか、シルフィがライナス・スワードをブンブン振り回して喜んでる。


何せ、それトロールゲイザーからのドロップ品だからね……。

本来なら、アライアンスで倒すような魔物だもの。


そりゃ、武器として一級品なのはある意味当然だよね。


「よし、旦那様!次いこう次!!」


何か異様にテンション高いな、シルフィ……。


「うん、じゃあ地下一階に行こうか」




#力の迷宮(ダンジョン)、地下一階



このフロアも道中はスキル収集以外に何も旨味は無い。

さっさとボス部屋に向かう事にしよう。


上手くいけばスピードシューズをもう一個手に入るかもしれないしね!

そしたら、僕も使えるしね。


そんな訳でまさに力押しでボス部屋まで進んでいく。


前回の時は遠隔攻撃主体のアイシャがパートナーだったし、初見の場所という事もあって慎重に進んだけど今回は近接攻撃のシルフィがパートナーだ。

【気配察知・大】を使用しながら、駆け足で進行し、敵の反応があれば気が付かれる前に沈めていく。


パワー・オーガの【ロッククラッシュ】も遭遇した瞬間に懐に入り込み、武技をぶつける事で瞬殺してしまうので全く驚異とならない。


僕のライトニングエッジもシルフィのライナス・スワードも迷宮産の武器だけあって圧倒的な火力を持っている。

僕等のレベルが高い事も併せての強行軍と言えるだろう。


「ふう、流石に少し疲れたな」


「……だね、もう少しでボス部屋だから、そこで少し休憩を入れよう」


そこから数分、幸い魔物とかち合う事なくボス部屋へと辿り着いた。


……あれ?なんか既視感。


「ん?旦那様……何か沢山人が集まってるぞ?」


キョロキョロと周りを見回すと……居ました……“舞い上がる砂塵”のカシューさん。


って事は、あれからずっとスピードシューズが手に入っていないって事!?

ちょっと待って?あれから結構時間経つよ?


歩いてくる僕等に気が付いたカシューさんが声を掛けてくる。


「お?この前の少年と……ん?姫騎士の嬢ちゃんじゃねーか?

 何だって王女様がこんなトコにいるんだ?それにアイシャはどうした?」


矢継ぎ早に質問をしてくるカシューさん。

まあ、入り口の所にいた騎士さんじゃないけど、普通は驚くよね……。


「ん、カシュー殿か?

 そう言えばスピードシューズを取りに来ていたとアイシャが言っていたが……」


シルフィがそう言うと、カシューさんは強面の顔を更に歪ませる。


「ああ、よっぽど俺らは運がないようだ。

 ……全くコカ・グリースに遭遇しないんだ。

 そろそろ、一ヶ月此処に留まっている計算になるか……」


……アイシャは気にする事は無いって言ってたけど、流石に気が引けちゃうな。


クランの人達もこの前見たときよりも元気が無さそうに見えるよ。


「嬢ちゃん達もボス狙いか?また二人しか居ないようだが……」


「ああ、この下の階のボスまで行くのが目標だ」


シルフィがそう言うとカシューさんが大声を上げる。


「なんだって!!?この下の階という事は……トロール・ゲイザーだろう!?

 嬢ちゃん、正気なのか?アイツは小手先の技術や何かで何とかなる相手じゃないぞ!?

 圧倒的な火力で一気に殲滅しなければ、すぐに回復しちまう。

 二人だけじゃ、絶対無理だ!!!挑戦するのもあり得ないだろう」


「いや、前回旦那様とアイシャの二人で倒しているぞ?

 ……この剣が証拠だな、トロール・ゲイザーからのドロップ品だ」


「なにっ!!?」


カシューさんがライナス・スワードをチラリと見た後、驚愕の目で僕を見ている。

うぅ、何か居心地が悪いよ……。


「一体、君は何者なんだ……ん?待て、今旦那様と言ったか?嬢ちゃん結婚したのか?」


「ああ、ついこの前に私とアイシャの二人で旦那様に嫁いでいる。

 それでな、この三人でクランを結成したんだ。これから宜しく頼むぞカシュー」


「……聖弓と姫騎士を娶っただと?

 ……アルトと国王が良く認めたもんだな」


……ああ、そうか。

一ヶ月ずっと此処に籠もっていたのなら僕等の結婚を知らなくてもおかしくはないのか。


「ああ、カシューもさっさと良い人を見つけて結婚するんだな。

 結婚は良いぞ、身も心も充実するからな!」


「ぐっ」


あれ?カシューさん確か33歳だったと思うけど独身なんだ。

地味にシルフィ……不味くないかな?その発言は……。


なんか、ぐっとか言ってるし、気にしてるんじゃないかな?


と、取りあえず、ごまかしちゃおう!


「休憩されてるみたいなので、先に入らせて貰ってもいいですか?」


「……ああ、構わない。

 前回の事があるから、大丈夫だとは思うが気をつけるんだな。

 慢心から命を落とした者を俺は何人も見ている」


「はい!ありがとうございます!」


僕は元気よくお礼を言って、シルフィの手を掴んで足早にボス部屋へと向かう。

そして、小声で


「……ダメだよ、シルフィ!カシューさん結婚の事を気にしてるかもしれないでしょ?」


「ん?そうか?ああ、確かにそうだな。

 いや、すまない、少しばかり舞い上がっていたようだ……」


“舞い上がる砂塵”の面々が余計な事を言いやがってという目でこちらを見てくる。


心の中で詫びながら、僕等はボス部屋に突入する。



名前:コカ・グリース

LV:37

種族:鳥族

性別:-


【スキル】

突進


【アビリティ】

フライングフェザー

石化(ペトリファクション)



……。


本当にごめんなさい、カシューさん。


「ん?あれはカシューが狙っているヤツじゃないのか?」


はい、間違いありません。


取りあえず、スキルとアビリティを奪っておこう。


「やっかいなスキルは奪ったからね、いつでもいいよ」


「了解だ、旦那様」


そう言って、シルフィはライナス・スワードを構える。

僕は前回同様、魔法で先制しよう。


「じゃあ、シルフィ。僕の魔法で先制攻撃してから突っ込んでね」


「わかった」


【魔術の極みLV2】を発動し、前回同様【魔法・火】を打ち込んだ。


【魔法・火】が着弾し、怒り狂うコカ・グリースに向かってシルフィが突進する。

シルフィの体がスキル発動で薄く光り輝く。


コカ・グリースがその鋭い嘴を打ち下ろしてくるが、シルフィは避けずにそのままライナス・スワードで迎撃する。


「くらえっ!【武技:サクリファイス・ツヴァイ】!!!」


シルフィの気合い一閃、ライナス・スワードが緑色に輝き、コカ・グリースの顔を嘴ごと真っ二つに叩ききった。

剣戟はそれだけで収まらず、振り上げた剣先がそのまま下方へと高速で落下し、首元に命中する。


結果、胴体と首から上が寸断され、ズドンと言う音と共にその巨体が崩れ落ちた。


「……シルフィが本気で戦っているとこ、初めて見たけど思っていた感じと違うな……」


うん、もっと華麗に戦うスタイルと思ってたけど、どちらかと言うと力押しのイメージだ。

スキル頼りの戦いと言えなくも無いけれど、僕と違って戦闘の基本が出来ているので動きに無駄がない。


今の体の使い方、覚えておこう。

きっと僕にも役に立つ筈だ。


「どうだ!旦那様!倒したぞ!」


凄い笑顔で、僕に向かって手を振っている。


「うん、お疲れ様!流石、姫騎士だね!」


僕の言葉を聞いて、嬉しそうに笑顔を見せるシルフィ。

本当にいい笑顔だね!ますます好きになっちゃうよ!!


そんな事を考えつつ、コカ・グリースの亡骸を収納にしまう。


そして、肝心のドロップ品だけど……。


出たよ……。


名前:シエルスーリエ

敏捷:+25

階級:超級

属性:風

特性:移動速度3%アップ

   空中歩行


しかも、二個……。

恐るべし【プロバビリティーLV2】


あ、待てよ。


シエルスーリエが合計で三個になる、という事は今、アイシャが持ってるスピードシューズは要らなくなるよね?

……カシューさんに譲ろうかな。


一ヶ月もこんなとこに居たんじゃ、心も荒んじゃうしね。


うん、次のボス、トロールゲイザーを倒したら、話しにいってみよう。


「よし、次はいよいよ最後だね!気を抜かないように頑張ろう」





#力の迷宮(ダンジョン)、地下二階


このフロアの道中では【再生】【衝撃の魔眼】【豪腕・極】が手には入るからね。

どれも便利なスキルだし、せっかく来たのだから、なるべく沢山取っておこうと思う。


ボス部屋向かって真っ直ぐ進むのだけど【気配察知・大】【視力強化・中】を駆使し戦闘を極力避けてスキルだけを奪っていく。


そんな調子で、必要最低限の戦闘だけして、ボス部屋に辿り着く。

基本的に今回は僕は殆ど戦っていない。


現れる魔物という魔物をシルフィが切り捨てている。

僕は収納にそれらの死骸を詰め込むだけだった。


だけど、ここのボスだけは僕も全力で戦う必要がある。


何となく、今のシルフィならばトロールゲイザーでも、いいとこまで追いつめれそうだけど油断するわけにはいかない。

カシューさんも言ってたしね。


「シルフィ、ここのボスは僕も全力で戦うよ。

 オーク・キングを倒したのと同じスキルを使うから、シルフィはバックアップに回ってくれるかな?」


「ああ、了解だ」


うん、じゃあ行ってみようか。



名前:トロールマギスター

LV:46

種族:魔族

性別:♀


【スキル】

超再生

麻痺の魔眼

固有魔法・雷

魔術の極み


【アビリティ】

無し



「ファッ!?」


なんだって!?トロールゲイザーじゃない!

ひょっとしてレアボスなの!?


……トロールマギスターってなんだ。

スキル構成からすると魔法使い系のトロールなのかな?


厄介極まりないぞ、これ。

取り付いて攻撃しようにも近づくのも一苦労な感じだし、麻痺の魔眼って喰らったら動けなくなりそうだ。


こんなん、まともにやったら勝てないんじゃ……。


まあ、取りあえずスキルを奪ってしまおう。

スキルを奪ってさえしまえば、ゲイザーと変わらないもんね。


「……シルフィ、あれレアボスみたい。

 鑑定したら、トロールマギスターだった」


「……聞いた事ないな」


「取りあえず、行くね」


シルフィが距離を取るのを確認して、僕はスキルを一気に使用する。


【身体強化・大】【腕力強化・極】【脚力強化・小】【豪腕・極】【豪腕・聖】【ストレンクスレイズ】


僕の全身が青白い炎ような光に包まれる。


そして【リアライズ】からのトゥワリングを生成し、一気トロールマギスターに向かって走り出す。


こちらに気が付いたトロールマギスターは、恐らくスキルを使おうとしたのだろう。

腕を振り上げるが何も起こらない事で、動きが止まってしまう。


【衝撃の魔眼】を発動し、相手がよろめいた所で一気に懐に入り……


「くらえっ!武技:シャークグロウ!!」


トロールゲイザー同様、激しい爆発音が鳴り響き、真っ二つに切り裂かれたのである。


トゥワリングが光と共に消えていくのを見送って、僕はトロールマギスターの亡骸を収納にしまった。


「ふぅ、これルイス殿下、買ってくれるかな?」


そんな事と呟きながら、ドロップ品を確認する。



名前:ライナス・フォーク

攻撃:+60

階級:超級

属性:光

特攻:死霊

武技:ロミニアス・インパクト



……超級の長槍だ。

これまた、専用の武技があるね。


家族で槍を使う人が居ないからなあ。

取りあえずしまっておくかな。


「ふう、お疲れ様!」


「……相変わらず、凄まじい威力だな……。

 少しは旦那様に近づけたかと思っていたが……まだまだだな」


取りあえず、目的は果たした。

カシューさんの所に寄って、宿屋に戻ろうかな。


前回の時、結局泊まりがけになったので、予め二日間宿を押さえていたんだよね。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



シルフィと仲良く手を繋ぎ、銀の鈴亭へと歩いていく。


……何故か後ろから、カシューさんを始めとした“舞い上がる砂塵”の面々がゾロゾロと付いてくる。


あの後【固有魔法・時空】で地下一階のボス部屋から少し離れた所に移動をし、カシューさんにスピードシューズを譲ろうかと話した所、びっくりするほど喜ばれてしまった。


近いうちにルーカスの僕の自宅まで取りに来る約束をして、別れた……筈だったんだけど……。


もう迷宮(ダンジョン)に籠もらなくていいと聞いた“舞い上がる砂塵”の面々も僕等と一緒に迷宮(ダンジョン)を脱出してきたんだ。


僕等が銀の鈴亭に帰るからと言うと、じゃあ俺達もそこに泊まるかと言い始め、結果この状態になってしまった。


カシューさんも相当ストレスが堪っていたんだろう。

僕とシルフィにとにかく話しかけてくる。


最後はシルフィが激怒して、追い払うというちょっとした事件が起こったのは、内緒である。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



お風呂に二人で浸かりながら今日の出来事を話し合う。


「ふう、疲れが取れるね」


「ああ、本当にな」


「どうだった?満足出来たかな?」


そう尋ねると、シルフィは凄く良い笑顔で「ああ、満足したよ!」と言ってくれた。


うん、そう言ってくれると夫冥利に尽きるよね!


その後、お互いの体を洗いあい、しばらくじゃれあってからお風呂から上がる。



お風呂から出た後は、当然一緒に寝ました。

……とても幸せです。





名前:シルフィード・フォルトゥーナ

種族:ヒューム

LV:28 (28→69) LevelUp!

性別:女

年齢:19歳

職業:姫騎士 Change!

お読み頂きありがとうございました。


これにて100話記念閑話終了です。

如何でしたでしょうか。


シルフィの可愛さを少しでも表現出来ていれば良いのですが。


100話→通常の1.5倍

101話→通常の2倍


と気が付けば、とんでもないボリュームに。


以前の力の迷宮が5話で構成されていたのを2話で納めた訳なので

当然、こうなるのは分かっていました。


本当は前・中・後編と分けようかと思ったのですが閑話が

長くなりすぎるのは良くないと判断し、この形に納めた次第です。


明日からは本編に戻ります。


今後とどうぞ宜しくお願いします。



【改稿】


2016/12/27 

・シルフィの家名を修正。

・全般の誤字・言い回しを修正。


2017/01/07

・【常時:水】に魔力水のくだりを追加。

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