アジア制覇の「ついで感」パネエ
オリンピック出場を決めた準決勝から3日、日本代表は強いライバル関係にある韓国代表との決勝戦に臨んだ。
スタメン
GK12天野大輔
DF8結木千裕
DF19降谷慎吾
DF4小野寺英一
DF18吉原裕也
MF2猪口太一
MF23平内圭介
MF6茅野優真
MF10小宮榮秦
MF13末守良和
FW11野口拓斗
準々決勝と同じく、剣崎と内海をスタメンから外し、さらに海外組の南條と西谷が所属クラブからの帰還要請でドーハを去った。決勝を戦うにはいささか戦力不足の感があったが、叶宮監督は平然としていた。
「優勝できるに超したことはないけど、この大会かいの主目的はオリンピックの切符。決勝戦はぶっちゃけエキシビションよ」
と、マスコミに語ったという。その一方で、この日ピッチに送り出される選手たちにはこうプレッシャーをかけた。
「オリンピックに一緒に行きたいなら、この試合でアタシをときめかせてみなさいな」
そう言った叶宮監督の目に一切笑いはなかった。つまりはこう言うことだ。小宮がやや脚色して要約した。
「ここで結果出せなきゃリオはあきらめろ、ってこったな」
唐突な試験の実施に、スタメンの選手たちは焦ったが、その言葉に答える選手もいた。
「それじゃあ尾道コンビで先制点をこじ開けるとするかね!」
ボールを奪った結木が右サイドを駆け上がり、前線に立つ野口にアーリークロスを送る。
(剣崎とか西谷とかが多分軸になるんだろうけど・・・何もできないままじゃいやだ!!)
それを胸でトラップしながら、野口はすぐに打たずあえてドリブルでツッコむ。そして切り返しでマークを振り切って右足を振りぬく。虚をつかれた格好の韓国代表のGKは逆を突かれてしまい、あっさりと先制点を献上。決めた野口はらしからぬ雄叫びとガッツポーズを見せる。ここからの戦いぶりがすごかった。
そのわずか3分後。今度は吉原のオーバーラップからチャンスを作り、小宮のノールックパスを猪口が叩き込んで2点目。前半30分過ぎには小宮のコーナーキックを降谷が押し込んで早くも3点目。韓国代表の反撃で1点を失うものの、ハーフタイム直前に茅野の突破で得たPKを小宮が自ら決めて4-1で前半を折り返した。
これに触発されたのが、エース剣崎とキャプテンの内海。
「どうせなら最後も点を取りてえ!!」
「ただベンチに座って優勝ってのは・・・ちょっとずるい気がするんで」
この直談判をあっさり快諾した叶宮監督は、茅野と小宮に代えて投入。内海が猪口とダブルボランチ。前線は剣崎と野口の2トップとなる。すると開始早々、内海のロングパスに反応した剣崎がゴールネットを揺らす。最後は平内に代わって投入された竹内の4人抜きドリブルからのゴールで韓国代表を轟沈。6-1という大勝で、日本のサッカー界に、実に5年ぶりのアジアタイトルをもたらしたのであった。個人成績では剣崎が得点王、内海がMVPを獲得し、大会ベストイレブンには、二人に加えて西谷と大森が選出された。
大会前、あまりの下馬評の低さからひっそりとした出国となった叶宮ジャパンは、二千人近いサポーターに迎えられる堂々の凱旋帰国となった。そんなサポーターたちを前に、剣崎はトロフィーを鷲掴みに掲げて叫んだ。
「オリンピックとアジアカップ、獲ったど~っ!!!」