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万全・・・のはず

 ピッピーピーィッ・・・・


 ピッチで主審が笛を吹きならして両手を上げた。


 スタジアム中が静まり返る中で、その一角は歓喜を上げて、選手たちは安堵の表情を見せた。


 UAE戦から5日後。アウェーにてタイ代表との試合に臨んだ。


 UAE戦に敗れたことで、翌日のスポーツ紙は凄惨な記事であふれた。「現在32チームで最終予選を戦う形式になってから、初戦敗退のチームのW杯出場確立0%」というデータ、そして「代表戦の埼玉スタジアム不敗神話の崩壊」という結果があるせいか、全体的に悲観的な記事があふれた。誤審の糾弾で気を紛らわせる記事もあり、試合に目を向ければ決定力に欠けた海外組の酷評や、パスワークに翻弄された守備陣の指摘といった感じだった。

 しかし、試合後の会見で、四郷監督は平然と言いきった。

「前例がないのなら、我々が前例になればいい。そのための希望も、今日はいくつか見えた。逆に言えば今日の負けはいい戒めになる。今の日本が、アジアで絶対の存在でないことを知ることができたわけだから。より一戦必勝をを肝に銘じて、今後を戦えるよう、選手たちを導きたい」


 そして四郷監督も、むしろこの敗戦を大いに利用し、タイ戦ではスタメンを大改造。加賀美や尾崎をスタメンから外し、オリンピック代表の選手で固めたのである。

 GKに友成を抜擢し、センターバックのコンビも内海と小野寺。竹内と結木の右サイドも引き続き起用し、最前線には剣崎が起用された。試合は、相手の力量がいささか落ちることもあったが、4-0と圧勝し初戦黒星の溜飲をある程度下げることに成功したのである。


「いや~!めっちゃ気持ちええっすねえ!!」

 試合後のテレビ用のインタビューにて、剣崎は上機嫌だった。UAE戦こそ不発に終わったが、その憂さを晴らすように、前半に右足で先制のボレーシュートで勢いを呼び、後半の立ち上がりには左足でミドルシュートを叩き込んでタイの機運をへし折った。リンピック得点王の面目躍如だった。

「まあ、監督が言ったようにね。まだ2試合しかやってないし、こっからまた勝っていけばいいだけの話なんでね。で、今まで誰も出てないなら、なおのことW杯出たら歴史に名前が残るんで。俺の力でね、それをやらかしてやりたいって思ってるっス!!」


 この試合、起用されたオリンピック代表はとにかくゴールに関わった。

 右サイドから再三好クロスを供給した竹内は、剣崎の先制点だけなく、コーナーキックのキッカーとして小野寺のダメ押しゴールをアシスト。内海も前半に本条のフリーキックを押し込んで代表初ゴールを記録し、剣崎のミドルを生み出すパスを送り1ゴール1アシスト。内海と小野寺は守備でも高さと強さ、そしてコンビネーションの良さを見せて無失点に貢献。友成も枠にとんだ2本のシュートをきっちり防いだ。

「今日の結果は・・・正直、俺らの尻に火がつきましたね」

 試合から一段落つき、バスに乗るための途中の通路にあるミックスゾーンにて、本条は苦笑いを浮かべながら答えた。

「別に気持ちが緩んでたわけちゃうし、コンディションの問題もあったけど、こんな事態を招いたんは間違いなく僕らやし、今日はあいつらに喝入れられた感じですね。代表にいてかつ海外でプレーしている以上、万全でプレーできるときはまずないけど、その中で結果を出さないかんのが自分らと思うんで。次は恥のないプレーをします」

 「思います」ではなく「します」と言いきったところに、本条の反骨心が見えていた。



 さてその翌日。剣崎たちが戻るクラブ、アガーラ和歌山は天翔杯の2回戦を戦った。対戦相手は同じくJ2を戦い、現在は残留争いの真っただ中にいる金沢。

 前線に若手、守備にはベテランという布陣で固めた和歌山は、ホーム紀三井寺にやってきた金沢を圧倒。須藤のゴールで先制すると、村田、緒方が立て続けに追加点。後半は勢いを落としたものの3-0で逃げ切った。

「剣崎さんとか、竹内さんとか。先輩たちが代表で結果残してきた中で、自分はそういう人たちとFWとして勝負していかなきゃならないんで、これからも出る試合では全部ゴールを取るつもりで頑張りたいです」

 試合後のインタビューで、須藤はそう意気込んだ。



 そんな中で行われたセレーノ大阪との一戦。前回ホームで対戦した折は大敗を喫しているだけに、リベンジの意味も含めて勝利が求められた。そのスタメンに、駆け付けた和歌山サポーターの期待は膨らんだ。


GK20友成哲也

DF6辛島純輝

DF50ウォルコット

DF22仁科勝幸

DF19寺橋和樹

MF24根島雄介

MF8栗栖将人

MF16竹内俊也

MF13須藤京一

FW9剣崎龍一

FW10小松原真理


 日本代表から帰ってきた剣崎と竹内に加え、好調の須藤や移籍組で強度の増した守備陣と盤石の布陣。セレーノはここ最近FW陣の長期離脱が相次いでおり、得意の打ち合いに持ち込めば、勝ち点3の獲得は難しくないように思われた。

 だが、チームはまた試練を迎えることになる。





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