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相手に付き合ってみて

 改めてこの試合のスタメンは次の通りである。


スタメン

GK20友成哲也

DF15ソン・テジョン

DF22仁科勝幸

DF23沼井琢磨

DF14関原慶治

MF2猪口太一

MF24根島雄介

MF16竹内俊也

MF5緒方達也

FW9剣崎龍一

FW10小松原真理

リザーブ

GK27平塚将司

DF21長塚康弘

DF34米良琢磨

MF17チョン・スンファン

MF31前田祐樹

MF32三上宗一

FW11櫻井竜斗


 そして試合開始予定の午後3時。キックオフのホイッスルが吹かれた。

 鹿児島ボールで始まった試合だが、中盤のパス交換でいきなり猪口が鮮やかなインターセプト。奪うやすかさずボールを右サイドに繋ぐ。

「さてと。むこうはどんなに対策をしてくるのかな」

 竹内は相手の出方を伺うように、右サイドでボールをキープ。そして味方の位置とともに相手の守備を観察する。

 鹿児島の布陣は3-4-3。和歌山の2トップに対してセンターバックを揃える3バックを敷いてきた。さらに、3トップの両翼は、どちらかと言えばサイドバックの攻め上がりを抑えることを目的に配されたようで、関原、ソンの両サイドバックを見張るような動きが見られた。

(なるほど。想像以上に固めてきたな。付き合うと、骨が折れそうだ)

 そして竹内は重心を右におき、サイドをドリブルで駆け上がった。それに合わせて相手の左サイドハーフも追従する。が、ある程度追尾したところで中央に切れ込む。マークの離れた竹内は、コーナーフラッグ(ピッチの四隅に建ってる小さい旗)近辺でボールキープをしながらサイドハーフの意図を推理する。

(ある程度追いかけてからバイタルエリアを固める。確かにこの状態でクロスを入れても中は二対四。流石に剣崎もこの状態じゃ無理だろな)

 と、思いつつ、竹内は試しにクロスを入れてみる。剣崎は相手DF二人にはさまれながら懸命にヘディングを放つが、ボールは枠の外に消える。悔しがる剣崎を見て、竹内は思った。

(こりゃ抜かりのない対策だな。付き合ってたらゴールは奪えそうにないな)


『よしっ!ナイスディフェンスだ!』

 一方で鹿児島を率いるダルコ・ブコビッチ監督は、しっかりと守備陣形を整えて和歌山の攻撃を抑えた選手たちをたたえた。

『向こうの攻撃陣は強力だ。まずはしっかりと守備から入っていけ!耐えればチャンスは必ず生まれる』


 ブコビッチ監督の予想通り、鹿児島は次第に左サイド(和歌山の右サイド)からチャンスを作る。前がかりになった竹内、ソンの裏のスペースを使って、和歌山ゴールを揺さぶりにかかる。


「クロスくるぞ!取らせんな!」


 入れられたクロスに対して仁科が叫び、沼井や関原がそれぞれの守備範囲にいる相手選手を見張り、体を寄せる。仁科が空中戦を競り勝ちクロスを弾き返すが、相手のトップ下がミドルシュートを枠に飛ばしてくる。


「何のことはねえや」


 それを友成が、涼しい顔をしながら片手で弾き出した。


「今のでやっと一本か。アガーラ対策は万全みたいだがご苦労な話だな。守備に重きをおいた片手間攻撃で、うちのザルラインを抜けれても俺は破れねえよ」

「頼もしいけど、仲間の守備を『ザル』って言うのはやめろよ。語呂がいいから腹立ってくるな」

 自信満々の友成の言葉に、沼井はツッコまずにはいられなかった。


 鹿児島は和歌山の右サイドを封じつつ、攻め上がったときにできるスペースを突き、左ウイングのクロアチア人FWパブリゼリッチの突破力やクロスを軸に攻める攻撃を展開。時おり高い位置からのすばやいショートカウンターも織り混ぜた。

 ただ、極端に言ってしまうと、攻撃の質は「大したことではなかった」。クロスの受け手のセンターFW(3トップの中央)は仁科にことごとく競り負け、右のウイングも関原の抜け目のない監視でバイタルエリアへの侵入を許さない。前半30分までに鹿児島は4本のシュートを放ったが、いずれもペナルティエリアの外からのミドルシュートで、枠に飛んだのは先に書いた友成の好セーブに阻まれた一本だけだった。

 何より、試合における中盤の主導権は和歌山に掌握されたままだった。五輪代表の猪口、竹内だけでなく、若手の根島、ルーキーの緒方も献身的に動き、猛烈なプレッシングでボールを奪い、キープし続けた。

 となると、後は決めるだけなのだが、剣崎と小松原の2トップに、鹿児島の3バックはマークを自在に受け流しながら翻弄。ボールを受けられなかったり、まともな体勢でシュートを打てなかったりと、二人は苦労していた。ここまで二人で6本のシュートを放ったが、いずれも枠を捉えられていない。それでも剣崎は叫んだ。

「くそったれが!!次決めてやるから覚悟しやがれってんだ!!おいっ、もっと俺にくれ!!」


 左サイドハーフに抜擢された緒方は、初めてのプロの舞台に当初は戸惑ったが、時間が経つうちになれ、そして次第に先輩たちに対する思いが変わっていった。簡単に言うと、彼らの見せる迫力に生唾を飲んだのだ。



「この人達・・・やっぱすげえな」

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