嘘
ブックマークありがとうございます!
今回少し重めな上に量が少なくなっております。
ごめんなさい。
2人でクッキーを食べ、沈黙が続く。
誰が悪いというわけでもないが、少し気まずい。
先に口を開いたのはクラノだった。
「……街に出ると、いつもこんな感じなのか」
クラノはうつむき加減にわたしに訊いた。
表情が見えないが、声に少し元気がないように思える。
わたしが静かに頷くと、クラノは大きなため息をついた。
「……………どうしてこんな国になってしまったのだろう」
そう言ったクラノの瞳はまさに王子として未来を見据えるものだった。
やはり実感する。王子様なんだなぁと。
クラノの顔を覗き込むと、琥珀の瞳が悲しげな光を湛えていた。
不謹慎ながらも、どんな顔をしていても綺麗だなとか思ってしまう。
雑念を消すようにわたしは違う話をクラノに切り出した。
「ク、クラノはいつからレイラと一緒にいるの?」
声が上ずってしまった。
恥ずかしくて顔が赤くなってきた気がする。
でもこれでこの空気を変えれるならいい……!
クラノはそれに笑って、答えた。
「ああ、知り合ったのは………5歳くらいだったかな。でもよく話すようになったのは5年ほど前からだ」
クラノは今18歳と聞いた。
知り合って10年以上一緒にいることになる。
なんだか、そういうのって。
「羨ましいなぁ………」
あれ、声に出してしまった。
なんだかクラノには変なところしか見せてないように思う。
そろそろ引かれたりしていないだろうか。
そろり、と顔を上げるとーーーークラノは、顔を赤く染めてこちらを見ていた。
口をぱくぱくさせている。
「あ、っと、その、それは、どういう?」
どういう、というのは、羨ましいと言ったことだろうか。
「もちろん、2人が羨ましいってことだよ? わたしも、最初からずっとレイラと一緒だったらなぁ」
ね? というようにクラノを見ると、明らかに落ち込んでいる。
え? なんで? ーーーあっ………!
「も、もちろんクラノとも一緒にいたかったよ!! 二人とも唯一の友達だし!」
付け足したように言ったが、ちゃんと本心だ。
二人ともなのに唯一というのもおかしいかなとも思ったが、まぁニュアンス的にはあまり違わないので別にいい。
わたしがそういうと、クラノは安心したように笑ってくれた。
でも少し複雑そうな表情だったのはなぜだろう。
「俺はお前の話も聞きたいんだが」
もっとクラノの話が聞きたかっんだけどな、と少し残念に思いつつも、話し始める。
「わたしがレイラと会ったのは、6年前。その時からわたしはあの家に住まわせてもらってるの」
わたしはクッキーが無くなった包みを片付ける。
「…………その前は、どうしていたんだ?」
クラノが続けて訊いた。
「……あまり、覚えてない」
震えそうな声を抑え込み、両手をきつく握る。
爪が食い込むのなんて気にせずに。
どんどん頭が真っ白になる。
「すまなかった。もういい」
短くクラノはそう言うと、わたしの手をとった。
「痛そうだ。大丈夫か?」
見ると手に爪の痕が赤く残っていた。
わたしが頷くと、ほっとしたように笑う。
そんなクラノを見て、罪悪感で胸がいっぱいになった。
ごめんなさい、クラノ。ほんとはわたしーーーー。
言いかけた口を急いで閉じて、笑う。
笑う。
笑え。
クラノは傷ついたような顔をして、わたしの頭を撫でた。
撫でる手からあたたかさが伝わってくる。
泣いたらクラノが心配する。
泣かない。泣くな……!
「わ、わたし………みっ湖見てくる、ね……」
わたしは涙が流れない間にと、急いで走った。
顔を洗って急いで戻ると、クラノはいつもと変わらない態度で接してくれた。
それがすごくありがたかった。
けど、それがすごく申し訳なくもあった。
目を合わせることもなく、人一人分の隙間をあけて帰った。
読んでくださりありがとうございました。