学園生活開始
次に日。休日一日目。朝になると、相部屋についている郵便受けに手紙が入っていた。宛名は俺。差出人は……。
「院長からだ……!」
早速開封し、読み始めた。
そして現在に戻る。
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「ねぇねぇ誰からー?」
「……」
「レイってばー。教えてくれてもいいじゃんか!」
「……うるさいなぁ。手紙読んでんだから静かにしてくれよ」
「むぅ……」
封筒には手紙が一枚と返信用の封筒、そして手のひらサイズの青い箱。
俺にはこの箱に見覚えはなかった。院の中でも見た覚えがなかったし、ましてや俺の持ち物でもない。
「何だこれ?」
手紙にも書いていないその箱を、俺は恐る恐る開いてみることにした。
開いてみるとそこには……
「ネックレス……?」
「きれいだねー。って誰からなんだよう!」
「俺のいた孤児院の院長先生からだ。でも、何でネックレスなんか?お金もあまりないのに……」
ネックレスは少し青みがかったチェーンで、トップには中心に深紅の石が付いている五センチぐらいのクロス。いかにも高価そうに見える。
俺のためだとしても、こんなのを買うくらいだったら孤児院の整備やら、食材を買うのに使ってほしかった。
「ん?」
ネックレスを取り外そうと台座ごと引き抜いたそのとき、紙がひらひらと舞い落ちた。それを手に取り読んでみた。
「……『レイは、どうせこんなことに使うくらいなら孤児院のために使え、とか言うのでしょうね。でも分かって頂戴。これはあなたの入園祝いでもあり、お守りでもあります。これはきっとあなたの助けとなるはずです。大切に身に着けておいてください。あなたに幸があらんことを』。……カレンさん」
頬を一筋の涙が伝った。
「いい先生だね!」
「あぁ。俺の自慢の先生だ」
俺は袖で涙をぬぐい、うなずいた。
そのとき、出かけていたヴァルが扉を開けて入ってきた。
「ただいまー。って何で泣いてんだよレイ?」
「……何でもねーよ。つかヴァルってたまに空気読めえぇやつだよな」
「え?そうか?」
俺の辞書に、ヴァルは空気の読めないやつと書き加えられた。
「それにしてもきれいなネックレスだな。それ」
「……やらねーよ」
「取るもんか!つか、何でそんなもん持ってんの?」
「俺宛の手紙の中に入ってたんだ。入園祝いなんだとさ」
「へぇ。いい親だな」
そのヴァルの何気ない発言が、少し頭の中を駆け巡った。
返事が遅いのが気になったのか、何かしら顔に出てたのか分からないが、ヴァルが俺の顔を覗き込んだ。
「……あぁ。いい親だよ」
それに少し遅れて気がついた俺は、ちゃんと笑えなかったかもしれないが、笑って答えたつもりだ。
「あっ、すまん!今のなし。気にすんな!」
「あ、いや。親のいない俺にとっちゃ親同然だし。何も問題はないさ」
会った当初にいろいろ自分たちのことを話したのを思い出したのか、いきなり謝りだした。でも謝られても本当のことだし、俺はあまり気にしていなかったから手を横に振りながら答えた。
微妙な雰囲気になる中、ガロが声を発した。
「早速つけなよ!」
「そうだな」
いきなりの独り言にもかかわらず、ガロと話しているんだと解釈をしたヴァルは、何も反応することはなく俺を見守っていた。さっきのこともあったからかもしれないが。
俺はネックレスを手に取ると早速首につけた。チェーンが長いみたいで、胸元より少し下のほうにクロスがある。つけてそれといった変化はなく、それはただゆらゆらと揺れるだけだった。
「こんな感じなんだが」
「うん。良いんじゃないか?」
「つか、学園につけて行っていいのか?これ」
「さぁ?でも規則には何も書かれてないけど、お守りはつけておく事を推奨するってあったから良いんじゃないの?」
ヴァルは資料を取り出して俺に見せてくれた。たしかに、規則の最後のほうにちんまりと書かれていた。……本当によく気がついたよな、それ。
「それよりさー。この後どうする?レイはなんか予定とかあるか?」
「いや、なにもないけど」
「じゃあさ、学園ない散策しないか?」
「おっ、賛成。リナも呼ぶ?」
「そうだな。みんなで行こう」
その後、俺らはソリナを呼んで、夜ご飯の時間になるまで学園内を探検した。
学園内の中には学園の施設のほかに、商業施設も併設されていて、この領地から出ずとも買い物ができるようになっていた。ここが一つの町みたいに見えてくる。便利なものだ。
休日二日目も同様に散策をすることになった。さすがに昨日一日では回れなかったので、いけなかったところを見て回った。さすがに二日間歩き回ったので疲れたは疲れたが、とても有意義な時間を過ごした気がする。
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次の日。授業が始まる。
俺の物語の歯車が回り始める。
それは幸運か、それとも不幸か。楽か苦か。
今はまだ分からないことだらけの今現在。これから先、何が待ち受けるかどうか分からない未来。
今はただ、平穏に時が過ぎるのを祈っている。
つづく(?)
続きを書くかはわかりませんが、短編等を書く気にはなっているので書き上げたら随時更新をしていきたいと思っています。




