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守護竜

 朝、目が覚めると同時に俺は青い物体を目にすることになった。俺の頭上やら部屋の天井をふよふよと飛び回っている。

「……なぁ、そこを飛び回っているお前……」

「ふぇっ!?何、僕のこと見えてるの!?」

「見えてなかったら話しかけること無いだろ……」

「うっぎゃーーーーっ!」

「うるさいっ!」

 それはバタバタと羽をばたつかせながら右往左往した。幸い、部屋が広くもない所だったので簡単に捕まった。

「うわぁっ掴むな!」

「こうでもしないと話ができないんだからしょうがないだろう!何もしないから暴れるな」

「じゃあ掴むなよー!」

 暴れないと約束をして俺はそいつを放した。

「単単刀直入に聞くけど、お前誰?」

「お前って言うなー。僕はガロって名前があるんだい。そして君の守護竜だよ」

「はぁ?守護竜?」

「この学園の子達は皆、一人ひとりに守護竜がつくんだよ。守護竜ってのは名前のとおりついた人を守るのが役目で、普通は卒業しなきゃ僕たちを見ることはできないんだけど……。何で君には見えてるの?」

「何でと言われても俺が聞きた……そうか、俺普通の人に見えないものが見えるか―――」

「それだー!」

「って人の話を全部聞けよっ!」

 人の話の途中で叫びだしたガロをバタつくのもかまわず押さえ込んだ。

「……なぁレイ、朝っぱらから何騒いでんの?」

「!ヴァル!?あ、えと、その……」

ガロと騒いでいたせいでヴァルが起きた事に気がつかなかった。このことを隠していくはずだったのに早々にばれてしまった。

(どうしよう……)

 ヴァルは眠そうな目をこすりながらこちらを見ていた。どこから見ていたか分からないから、どう切り出していいか考えが浮かんではこなかった。

(もう仕方ない。これから先もばれないとは限らないし、考えようによってはチャンスだ!)

「ヴァル。俺は見えないもんが見えし、話せる体質なんだ……」

「……へぇ、じゃあそこになんかいんの?」

「あ、あぁ。俺の右手の下にいる」

 俺が言った言葉を聞いて、ヴァルは少し驚いた様子はあったが、俺をさげすむような視線や言葉を言ってこず、むしろ目を輝かせて話に乗ってきた。

「マジか!レイって何か他のやつらとは違う感じがしてたんだー。でさ、何がいたんだ?」

「……隠してても無駄だったってわけか」

 正直ほっとした。ヴァルがもし、信じないで蔑むような人だったら、あることないことを足されて、いろんな人に撒き散らされて、この学園にはいられなかっただろう。

(ちゃんと言って良かった。でも、何で他の人たちと違うって分かったんだ?……ま、今は良いか)

「そうそう、何かドラゴンがいたんだよ。しかもそいつが言うには、俺ら生徒全員にいるらしいんだけど……」

「へぇー。じゃあ俺にもいるんだ!」

「こいつが言うにはそういうことらしい。でも、お前のは見えないんだけど?」

 俺は部屋の中をきょろきょろと見回した。しかし、見回しても昨日のような陽炎、もしくはドラゴンの姿形を見ることはできない。首をかしげるとガロがしゃべりだした。

「君が見えるのは想定外のことなんだよ。多分僕が見えたのは君の守護竜だって事と、あと君が『見える』ってことが重なったからだねー」

「へぇー。でも昨日は学園長の後ろにも何かいたように見えたんだけど?」

「……何独り言言ってんの?」

「え?あ、今俺の守護竜と話してたんだよ。俺がこいつを見えてんのは俺が見えるからと、俺の守護竜なのとが重なっているからだそうだ」

「でもさっき、学園長がどうとか言ってたよな。その辺どうなんだよ?えっと、守護竜君?」

 見えていないが、俺の手の下にいるこいつにヴァルは話しかけた。

「そんなこと聞かれてもわからないよー。ただ、もし学園長が守護竜をあえて隠していなかったら、陽炎のように見えてもおかしくはないね。大体、守護竜はいつも姿を見せているわけではないんだよ」

 ほら、とガロは言った。

「さっきのように姿を隠すことができるんだよ。これならいくら君でも―――」

「いや、見えてたけど?」

「……え?」

「いつ姿を消したんだ?一瞬薄くなったぐらいで見えていたけど」

「っ!君はいったい何者なんだぁーーー!」

 いきなり大声を上げられ、思わず両耳をふさいだ。そして、その隙にガロは空中に逃げてしまった。

「いきなり両耳ふさいでどうした?何て言ってたんだ?」

「いや、姿を消したり消さなかったりできるらしいんだけど、俺にはどうも消した状態でも見えるらしくて。で、それに怒ったガロに怒鳴られたわけさ」

「それはお前が悪いよ」

「……いや、どこが?というかヴァルさー、聞けないんだったら質問すんなよなー」

「えー、別に良いじゃん」

「俺にとっちゃ良くないわ!」

 そう言うと、ヴァルはテヘッっというポーズをとった。別にかわいくもなんともない。

「まぁいいや。その内何でか分かるだろうからこの話は終わり。そろそろご飯の時間だし、食堂に行こうぜー」

 お開きにしようと俺は立ち上がりながら言った。ヴァルもそうだな、と言いつつ立ち上がった。ガロはというと、口を尖らせながら飛んでいた。当分根に持ちそうだ。

それから着替え、俺らは食堂へと向かった。

歩きながら昨日のことを思い出していた。あの儀式のとき、学園長から言われた言葉から何かしら感じた。

(学園長は俺の『目』のことを何か知ってる……)

 これからの生活で、何かしら話が聞けることを、充実した生活を送れることを願いながら歩いていった。

 ……後の生活が暗闇に包まれていることを知らずに。

切りが良かったのでこの辺で。

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