無題詩34
地球玉の青い世界が滲み、
煙草のけむりがぐるぐる天を踊る。
そこにあるのはヘドロの汚さと偽物の歌。
それを標本に残したいと思う僕は狂っているだろうか。
積み木のように崩れそうな自我をギリギリ保ち、
しばし前世の斬首刑を思い出す。
首がスパッと肉体から飛ぶ快感。
「あのときは気持ちよかったなあ」
アヘンの煙に簡単に融けていく僕に、
帝國から参った妖精が耳元で呟く。
――飛び降りようが首を吊ろうが逝きつく先は同じところ。
「そのとおりだ」
僕はそう思い、生き続けてきたけれど、
愛と平和の隣にいつも核兵器とシャレコウベが嗤っていて、
汚染された人の人格のどこに、
真実の姿が映されていただろうか。
仮面を幾枚も被ってそれを誇りに生活している。
僕も見習って生きてきたけど、
徐々にゲームかリアルかわからなくなってきた。
時計の音だけがカチリカチリと鳴っていて、
それはまるで、――
――まるで地獄のようだった。
蝶が不規則に飛び回り、
はりぼてのリアルを祝おう。
脆弱な腕に鱗粉を塗りつけて、
破れた聖書をひねくろう。
それを心底崇拝する僕は正気を保っているだろうか。
君の中の失楽を、孤独のメリーゴーラウンドを、
不満げに覗く僕には頭のネジが数本足りない。
「生きるってこういうことだったのかなあ」
苦い汁のような涙を瞼に浮かべた僕に、
血塗れの天使は耳元で囁く。
――狂えば、最後何も要らないわ。
「そのとおりだ」
僕はすぐに、ポケットからナイフを取り出して、
醜い心臓に突き刺した。
胸から零れ、飛び散る赤色は星のよう。
プラネタリウムを見るように、床にくずおれる。
仰向けで見上げる天蓋は、ぐるりと丸い紺碧の穴。
それはまるで――、
――まるで檻のようだった。