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祝福の、その前に (300字SS)
鏡の向こう側には、着飾られた私がいる。
まだ実感がわかない。
大切な人から一緒に未来を歩もうと告げられてから、飛ぶように日が過ぎていった。それまでも命がけの日が続き、息をつく暇などなかったが、今日を迎える準備も目が回るほどだった。
ふと、落ち着くと、直前にも関わらず、不安になってくる。果たして私は彼と上手くやっていけるのか。
「綺麗よ。だからそんな顔しないで」
鏡越しに話しかけてくれるのは、私と血のつながりが濃い女性。
「なんだか不安で……」
彼女は微笑みながら、私の肩にそっと手を乗せた。
「何かあったら、いつでも相談して。私はいつまでも貴女の味方よ。だから、大丈夫。――結婚おめでとう。彼と末永くお幸せに!」
第60回Twitter300字SS参加作品。お題『祝』。
後日談の最後の話にかかっています。