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海の先に行くために (300字SS)
番外編が少し溜まったので、更新させていただきます。
「フリートって、どうして泳げるの?」
窓から海をぼんやりと眺めながら、リディスは背後に来ていた黒髪の青年に話しかける。
「私が海に落ちた時、慣れたように泳いで助けてくれたわよね」
フリートは頭をかきながら、隣に寄る。
「騎士団の訓練で遠泳があった。あとは親父が海好きで、小さい頃に何度か連れて行ってもらっていて、そこで教わった」
リディスは目を瞬かせて、フリートを見上げる。少し気恥しそうな表情をしていた。
「この海の先には、見たことがない国や土地が広がっている。世界を見るには、船に乗る機会もあるだろうから、何かあったとき泳げた方がいいって。……ただのこじつけだろうが」
「お父様、常に先を見ているお方よね」
第67回Twitter300字SS参加作品。お題『泳ぐ』。
リディス視点で第6章以降の話となります。