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白き雪の地で誓った想い (300字SS)
私が顔を上げると、冷たいものが顔に降りかかる。空からは数え切れないほどの雪が降っていた。
地面は白く染められていく。かつて血が流れた地にも関わらず、それがなかったかのような白さだ。
「先に行くぞ」
「待って」
黒髪の青年に慌てて追いつくと、二人で並んで歩き出した。
「お礼参りしたいって、物好きだよな」
「今しかできないと思って」
「何も残っていないのに?」
天井が大きく空いた祠の前に辿り着く。そこで感覚を研ぎ澄ますと、雪の冷たさの中に何かを感じ取れた。
「いいえ、どんな状況であっても、精霊も想いは残る」
かつて共に戦った精霊は消えない。そこで抱いた感情も消えない。
彼と共に歩こうと思った、その想いも。
・2019年3月21日開催の第8回Text-Revolutions内有志企画「第7回 300字SSポストカードラリー」寄稿作品
・時間軸:本編完結後
・コメント:リディスとフリートが訪れた地での話。本編を読み切っていると深い意味がわかるかと。