あとがき
『この小説を執筆するにあたり、最低でも一度は筆を置かなければならない時期がくる。それでもその後に再び手にとって、最後まで書き抜けますか?』
それは連載を始める前に自分自身に問いかけた言葉でした。
結果としては約三年という長期に渡る月日が経過してしまいましたが、無事に完結することができました。
これも読者の皆様や、応援してくださった創作仲間たちがいたからです。本当にありがとうございました。
読んでくださった皆様に多少なりとも何か心の中に残って頂ければ、私としてはこれ以上の喜びはありません。
構想当初は百万字近い小説になるとは思わないまま書き始め、進めるうちにどんどん話が広がっていき、気が付けば大台の手前まで近づいていました。おそらく書いている本人がこの文字数に一番驚いています。
なぜここまで長くなったのかと考えてみると、おそらく登場人物たち一人一人の物語をじっくりと書きたかったからだと思いました。
特にロカセナとミディスラシールという二人の存在。
物語の影の主人公である二人が最後にどうなるかで、読了感もまったく違ったものになっていたかと思います。かなり悩みながら彼らについては書きましたので、少しでも良かったと思える内容であってほしいです。
リディスとフリートは思った以上に非常にじれったく、手を焼きながら書いていましたが、最後はきちんとまとまってくれました。フリートが騎士としての務めを無事に果たしてくれて、ほっとしています。またリディスが精神的にも成長したのを見られて、とても嬉しくて、ついつい涙が溜まったりもしました。
メリッグやトル、ルーズニルは、陰ながら色々と動いてくれて本当に助かりました。メリッグは当初書きにくいキャラでしたが、最終的には頼れる素敵なお姉さんになり、書いて良かったなと思うキャラになりました。
他にも多数のキャラを登場させましたが、それぞれの未来が少しでも垣間見られて読み終えてくだされば幸いです。
タイトルの意味、テーマ、描写、登場人物たちへの想いや未来など、書きたいことはすべて書きました。
完結する前は色々とあとがきで書く予定でしたが、今はもう感謝の言葉しか思い浮かびません。
この三年間、長く感じた時期もありましたが、あっという間だったと思っています。
私生活で諸事情があり、数ヶ月、計二回筆を置きましたが、その間でも読んでくださる方がいらっしゃり、非常に励みになりました。紆余曲折ありつつも、こうして再び小説を書き続けられる環境に戻ってこられて嬉しく思います。
この物語を書いていて、私は本当に書くのが好きなんだなと再確認しました。離れて戻ってくる度に物語を綴るのが楽しくて、早く彼女、彼らの進む道を見たいと思いました。
登場人物たちの人生を書き抜くのはたしかに大変ですが、皆が最終的に切り開いた道を見ることができたため、ここまで書いて本当に良かったと思っています。
この作品を通じて出会った読者様にも本当に感謝しています。
こんなにも長い作品に目を止め、最後まで付き合ってくださり、嬉しい限りです。頂いたコメント等、どれも励みになり成長する糧となっています。そんな皆様にとって、少しでも読了感がよければ幸いです。
また励みの言葉をかけてくださった創作仲間、素敵なイラストを描いて頂いた絵師様たち、特に表紙絵の依頼を快く引き受けてくださった麻葉紗綾様には本当に何度感謝の言葉を出しても出し切れない想いです。
ここまで素敵なイラストを描いて頂いて、最後まで頑張らないわけにはいかないだろう!と奮起したものです。
今後の執筆予定としては番外編や後日談などは考えていますが、おまけ的な要素が強いため、ここで一区切りとなります。
もしご興味があれば、完結後しばらく時間をおきますが、そちらも読んでいただければ幸いです。
おそらく今後ここまで長い小説は書かないかと思います。
『魔宝樹の鍵』は私の執筆人生の中で最も長い小説として、自分の中では語り継がれるでしょう。
そのような小説を共に読み、作者の背中を押してくれた皆様に感謝をしながら、終わりとさせて頂きたいと思います。
約三年間、そして百万字近い『魔宝樹の鍵』を最後までお読み頂き、本当にありがとうございました。
物語当初から追ってくれた方、途中から追いかけてくれた方、完結後に一気読みしてくださった方、すべての方々にお礼を申し上げます。
願わくば、またどこかでお会いできますように――。
桐谷瑞香 (二○一四・五・二四)