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人間失格~仁義なき復讐~  作者: 猫塚ルイ


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第90話

雨に煙る都庁舎は、もはや行政の象徴ではなく、街を呪い殺す巨大な黒い墓標だった。


エントランスに陣取るのは、影山が密かに育て上げた組織の最終防衛線――通称『百合の葬列』。


彼らは感情を遮断し、視覚情報を直接脳へ転送する特殊ヘルメットを装着した、生体兵器に近い存在だ。


「志摩、正面は俺が引き受ける。あんたは予備の非常階段から制御室へ向かってくれ!」


「無茶言うな!相手は軍隊並みの装備だぞ!」


「……俺の脳には、まだ奴らの『リズム』が残ってる。…見えるんだよ、奴らが引き金を引くタイミングが!」


地底で情報の濁流に呑まれた副作用か


俺の視界には、敵が放つ不可視の殺意が「ノイズ」の歪みとして映し出されていた。


俺は脇差を抜き、正面から突っ込んだ。


ダダダダッ!と掃射される消音サブマシンガンの弾丸。


俺は最小限の動きでその弾道をかわし、最短距離で先頭の男の懐へ潜り込む。


「……遅えんだよ」


脇差の柄頭でヘルメットのバイザーを叩き割り、意識を奪う。


一人、また一人と、弾丸の雨を潜り抜けながら、俺は「赤い光」の網を切り裂いていった。


「…な、何なんだあいつは……!人間の動きじゃない!」


葬列の指揮官が狼狽し、通信機に向かって叫ぶ。


俺の脳内では、都庁のアンテナから放たれる「共振パルス」が、神経を逆撫でするような音を立てて響き続けていた。


最上階へ近づくほど、その圧力は増し、鼻から熱い血が滴り落ちる。


一方、志摩は非常階段を駆け上がり、予備の通信室へ滑り込んでいた。


『黒嵜、聞こえるか!アンテナのメインブースターに到達した。だが、物理的な破壊じゃダメだ。このシステムは新宿中の住民の「心拍」と同期してやがる。一気に止めれば、反動で数千人の心臓が止まるぞ!』


「……なら、どうすればいい!」


『……「中和」だ。奴らの冷酷なパルスを打ち消す、正反対の波形…和貴、お前の声を、この街の「鼓動」として流すしかねえ』


俺は最上階の展望室、その中心にある発信核の前に辿り着いた。


そこには、拘束を解かれた影山が、自らをシステムの一部としてプラグに繋ぎ、不敵に笑って待ち構えていた。


「……来ましたね、黒嵜君。君の声で、この街を救えると本気で思っているのですか?」


「救うんじゃねえ。……叩き起こすんだよ。二度寝するには、まだ早すぎるだろ?」


俺はマイクスタンドを掴み、影山の喉元に脇差を突きつけた。


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