表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人間失格~仁義なき復讐~  作者: 猫塚ルイ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

76/100

第76話

地下道の空気が、一変した。


志摩の警告通り、地上に繋がる無数の通気口が、外側から鋼鉄のプレートで次々と溶接封鎖されていく音が響く。


密閉された地下空間。


そこへ、組織が用意した「掃除」の時間が訪れた。


「……兄貴、なんか変な匂いがしねえか?」


山城が鼻を啜りながら、ライトの光を天井に向ける。


通気口の隙間から、無色無臭に近い


だが喉を微かに焼くような「白い煙」が音もなく流れ込んでいた。


「催涙ガスじゃねえ……神経ガスだ。源蔵さん!隔壁を閉めろ!」


「わかってる!だが、ここはボロだ。完全に遮断するのは無理だぞ!」


源蔵が手動のハンドルを回し、通路を分断する重い鉄扉を閉じていく。


だが、目に見えない死の気配は、錆びた配管の隙間を縫って容赦なく浸透してくる。


地下に潜伏していた数百人の住人たちに、パニックが広がり始めた。


「落ち着け!濡れたタオルを口に当てろ! 高い場所に移動するんだ!」


俺の声が反響するが、ガスの濃度は刻一刻と増していく。


このままでは、反撃の狼煙を上げる前に全員が静かな死を迎えることになる。


『黒嵜、聞こえるか!』


志摩からのノイズ混じりの通信が入る。


『ガスの供給源は、都庁前の地下駐車場に停められた三台の大型特殊車両だ。そこを止めない限り、お前たちは全滅する』


『…だが、地上は完全に封鎖されている。今外に出れば、狙撃兵の餌食だぞ』


「……外がダメなら、もっと深い場所を通るまでだ」


俺は源蔵に視線を送った。


源蔵は一瞬躊躇したが、重い腰を上げた。


「……和貴。一つだけ、地図に載ってねえ地下水路がある。新宿駅の真下、戦前の古い暗渠だ。そこを通れば駐車場の下まで行けるが……増水してりゃ一巻の終わりだぞ」


「雨が降ってる…チャンスは今しかねえ」


俺は山城に、地下の住人たちの避難を任せた。


「山城、お前はみんなを一番奥の防空壕へ連れて行け。そこはガスが届きにくい。俺が供給源を止めてくるまで、誰も死なせるな」


「兄貴、一人で行く気ですか!?無茶っすよ!」


「……俺は一人のほうが動きやすい。お前は『新宿の未来』を守れ。それがお前の仕事だ」


俺は脇差を背中に固定し、源蔵が指し示した床の重い石板を抉じ開けた。


下から立ち上る、泥と腐敗の匂い。


俺は迷わず、暗黒の激流へと身を投じた。


地上では、死のガスが街を飲み込もうとし、地下では一人の男が激流に抗いながら、敵の心臓部を目指す。


残された時間は、あと2280時間


新宿の地下で、決死の逆流が始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ