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人間失格~仁義なき復讐~  作者: 猫塚ルイ


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第74話

新宿の地上では、異様な光景が広がっていた。


「再開発に伴う安全点検」という名目で、主要な交差点には高いフェンスが設置され


黒いバイザーで顔を隠した特別警備隊が24時間体制で街を巡回し始めている。


それは治安維持というより、巨大な檻の鍵を閉めていく作業に近かった。


「兄貴、上の連中、本気ですよ。さっき偵察に行かせた奴の話じゃ、歌舞伎町に入る全ての車が検問を受けてる。物資の運び込みが、これまでの倍以上の時間がかかるようになってます」


地下の作戦室――


埃を被った通信機が並ぶ狭い部屋で、山城が顔を歪めた。


「物資だけじゃない。……奴らは『音』で俺たちを追い詰めるつもりだ」


俺は源蔵が指摘した壁の微かな振動を指差した。


志摩から暗号通信が入る。


『黒嵜、公安の内部で動きがあった。奴らは最新型の地中レーダーを導入したらしい。地下10メートルまでの空洞と、そこにある動体の「心拍数」まで正確に割り出す』


『……今のお前たちの規模だと、あと数日で場所を特定されるぞ』


「……徹底してやがるな」


組織は、新宿という街を単に壊すのではない。


そこに潜む反抗の種を「一粒残らず」デジタルで選別し、抹殺しようとしているのだ。


「源蔵さん。この地下道のさらに下、昔の廃坑道は生きてるか?」


俺の問いに、源蔵は渋い顔で首を振った。


「あそこはガスが溜まってて、人間が長居できる場所じゃねえ。だが、レーダーの目を誤魔化すには、それなりの『ノイズ』が必要だ」


「ノイズか……。なら、俺にいい考えがある」


俺は山城と源蔵を呼び寄せ、作戦を伝えた。


「山城、街中のジャンク屋から古いスピーカーとモーターをかき集めろ。源蔵さんはそれを、地下のあちこちにある鉄管に取り付けてくれ。……100年前のメトロノームみたいにな」


作戦は単純だ。


街の至る所に「偽の心拍音」をバラ撒き、レーダーを攪乱する。


組織が一点に絞り込もうとする


その瞬間、俺たちは千の影となって闇に散る。


地上では、着々と「死の更地」への準備が進む。


だが、地下では何千という「偽の鼓動」が、組織の神経を逆撫でするように響き始めた。


残された時間は、あと2328時間


黒い百合の刺客たちが、ついにマンホールの蓋に手をかけようとしていた。


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