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人間失格~仁義なき復讐~  作者: 猫塚ルイ


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第7話

ビルの壁面を滑り降り、志摩が手配していた黒塗りのワンボックス車に放り込まれた。


タイヤが悲鳴を上げ、急発進の衝撃で俺の体は床に叩きつけられる。


背後からは、組員たちの怒号と、何発もの乾いた銃声が遠ざかっていくのが聞こえた。


「……志摩。警察が暴力団の若頭を拉致して、タダで済むと思ってんのか」


俺は口の中の鉄の味を吐き出し、座席に背中を預けた。


全身の傷が、アドレナリンが切れるとともにズキズキと痛み出す。


「拉致じゃない、保護と言え。それと、さっきも言ったが今の俺は『警察』じゃない。ただのクビ寸前の男だ」


ハンドルを握る志摩は、バックミラー越しに鋭い視線を送ってきた。


「お前が親父を殺せば、そこで終わりだった。真実は闇に消え、お前はただの反逆者として一生追われる身になっただろうよ」


「今だって似たようなもんだろ」


「いや、違う。お前にはまだ、カードが残っている」


車は都心の喧騒を離れ、入り組んだ下町の倉庫街へと入っていく。


志摩が車を止めたのは、看板も出ていない錆びついたシャッターの前だった。


中に入ると、そこには最新のモニターや通信機器が所狭しと並んでいた。


「ここが俺の……いや、俺たちの『潜伏先』だ。警察のネットワークからも独立している」


志摩はモニターの一つを叩いた。


そこに映し出されたのは、榊原組が関与していると思われる、海外のペーパーカンパニーのリストだった。


「拓海が消された本当の理由は、これだ。榊原組は単なる暴力団じゃない。政財界の『汚れ物』を洗浄する巨大な洗濯機になっている。そして、その洗濯機を回しているのは、お前の親父だけじゃない」


志摩の言葉に、俺の眉間が歪む。


拓海は、その巨大な洗濯機の歯車に挟まって、潰されたというのか。


「和貴。お前の親父……榊原英雄は、ある男と定期的に連絡を取っている。そいつは、お前のよく知る人物のはずだ」


志摩が画面を切り替えると、一人の男の写真が大きく表示された。


その顔を見た瞬間、俺の心臓が不快な拍動を刻んだ。


それは、組の顧問弁護士であり、俺が幼い頃から知恵を借りてきた、兄貴分のような存在だった。


「……まさか。あいつが?」


その時、倉庫の入り口で鈍い衝撃音が響いた。


志摩が素早く腰の銃を抜く。


防犯カメラの映像には、全身を黒いタクティカルウェアで固めた集団が


音もなくシャッターをこじ開けようとしている姿が映っていた。


「早いな……。警察の特殊部隊か?」


「いや、違う。動きがもっと荒っぽい。……『掃除屋』だ。お前の親父が、本気で俺たちを消しに来た」


志摩が予備のマガジンを俺に放り投げる。


「黒嵜、死ぬ気で戦え。ここを生き延びなきゃ、復讐の入り口にすら立てないぞ」


俺はドスを捨て、志摩から渡された拳銃を握り締めた。


手のひらに伝わる冷たい金属の感触が、俺に告げている。


もう、後戻りできる道なんて、この世界のどこにも残っていないのだと。


「……安心しろ。地獄の入り口なら、もうとっくに通り過ぎた」


俺は銃の安全装置を外し、暗闇の中、最初の敵に向けて引き金を引いた。


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