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人間失格~仁義なき復讐~  作者: 猫塚ルイ


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第66話

噴き出す煙が視界を白く染め上げ、肺の奥を熱く焼く。


意識が遠のく中、俺は山城の体を抱え、壁を伝って出口を探した。


「……逃がしはしないよ。それは君たちの『運命』なのだから」


白仮面の男の声が、頭蓋骨を直接叩くように響く。


倒れ込む寸前、指先に触れたのは冷たい鉄の感触ではなく


ぬるりとした「水」の感覚だった。


床に隠された隠し通路が開き、俺たちは重力に引かれるまま、さらなる深淵へと落下した。


目が覚めたとき、そこは地下刑務所の冷酷な空間とは全く別の、異様な場所だった。


広大な石造りの回廊。壁には「黒い百合」の紋章が等間隔に刻まれ、燭台の火が揺らめいている。


「ここは…どこだ……」


山城が、装置を無理やり引き剥がした額を押さえながら立ち上がる。


「分からねえ。だが、ただの地下施設じゃねえことだけは確かだ」


回廊の壁には、古い写真や絵画が並んでいた。


そこには、明治、大正、昭和……


時代を動かしてきた政治家や軍人たちが、一様に「黒い百合」のピンバッジを胸に付けて写っている。


そして、その最奥。


まだ若く、ぎらついた眼光を放つ親父と


若き日の大河内が、一人の老人の前に膝をついている写真があった。


「……親父」


写真の中の親父は、今にもドスを抜きそうな、殺気立った表情をしていた。


その隣に並ぶ大河内は、すでに怪物の片鱗を見せ、冷酷に微笑んでいる。


『黒い百合は、枯れることで次の一輪を咲かせる。榊原、お前が盗んだのは、ただの資金ではない。この組織の「意志」そのものだ』


背後から響いたのは、録音された親父の声だった。


回廊のスピーカーが、三十年前の「裏切り」の夜の音声を再生し始める。


『……黙れ、大河内!国を守るためだと?笑わせるな。あんたたちがやっているのは、ただの「間引き」だ。俺は、こんな血塗られた種で咲く花なんざ、見たくもねえ!』


親父の怒号。


直後に響く銃声と、肉を断つ音。

 

「親父さんは……俺たちに言ってたことと、同じことを言ってたんだな」


山城が震える声で呟く。


その時、回廊の先にある重厚な扉が、音もなく開いた。


そこには、白仮面を脱ぎ捨てた男が立っていた。


その素顔を見た瞬間、俺の心臓が凍りついた。


そこにいたのは、志摩でもなく、阿久津でもない。


死んだはずの、そして俺がこの世で最も信頼していた男――。


「……和貴。ようやく、ここまで辿り着いたな」

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