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人間失格~仁義なき復讐~  作者: 猫塚ルイ


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第25話

降り注ぐ弾丸の嵐が、鉄格子を叩き、火花を散らす。


俺は親父の体を抱きかかえたまま、ひっくり返した大テーブルの影に滑り込んだ。


親父の体は驚くほど重く、そして急速に冷えていく。


「…親父!しっかりしろ、おい!」


「……な…情けない声を……出すな……」


親父は血を吐きながら、俺の腕を強く掴んだ。


その指先には、まだ俺を突き放そうとする力が残っている。


「和貴、逃げろ。…お前が死ねば、拓海の……死は、ただの犬死にだ……」


親父が俺の胸ぐらを掴み、その耳元で掠れた声を絞り出す。


「……本部ビル…の、親父の椅子の下だ。…そこに、お前への…『最後の遺言』がある……」


それが、親父の最期の言葉だった。


掴んでいた手が力なく解け、コンクリートの床に落ちる。


関東最大の極道組織を率いた男の終焉は、あまりにも静かで、あまりにも血生臭かった。


「黒嵜!ぼさっとするな、来るぞ!」


志摩が中臣を盾にしながら、俺の方へ転がり込んできた。


中臣は腰が抜け、股間を濡らしながら「助けてくれ、金ならいくらでも出す」と醜く喚いている。


「……志摩。親父が死んだ」


「……ああ。だが、俺たちはまだ生きてる。生きなきゃならないんだよ」


志摩は奪った閃光弾のピンを抜いた。


「これを投げたら、裏の非常口へ走るぞ。……中臣、お前も連れて行く。お前には、拓海の墓の前で土下座してもらう必要があるからな」


「やめろ!撃て、早く撃てと言ってるだろ!」


中臣の叫びに呼応するように、黒服たちの射撃が激しさを増す。


俺は親父の亡骸から目を離し、傍らに落ちていた親父のドスを拾い上げた。


自分のと合わせて二振りの刃。


榊原の看板は、今、俺の背中で砕け散った。


「志摩……合図をしろ」


閃光弾が弾け、世界が白く塗り潰される。


俺は視界を奪われた暗殺者たちの間を、親父のドスを振るいながら駆け抜けた。


斬って、斬って、斬り開く。


工場の外へ飛び出した瞬間、冷たい夜風が俺の頬を叩いた。


雨は雪へと変わり始めていた。


俺の心はもう、この奥多摩の山々よりも深く凍りついている。


親父を殺し、拓海を失い、俺は本当の「一人」になった。


だが、親父が遺した「最後の遺言」。


それが何であれ、俺はそれを手にするまで、死ぬわけにはいかない。


俺は中臣の髪を掴んで引きずりながら、闇の深淵へと、志摩と共に消えた。


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