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人間失格~仁義なき復讐~  作者: 猫塚ルイ


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第22話

開かれた鉄扉の先には、およそ廃工場とは思えない異様な光景が広がっていた。


埃っぽいコンクリートの床には真っ赤な絨毯が敷かれ、中央には高級な長テーブルが置かれている。


その上には、冷え切ったフランス料理と、最高級のヴィンテージワイン。


テーブルの主座には、榊原の親父が悠然と座っていた。


その隣には、銀髪を整え、隙のないスーツを纏った男――


中臣代議士が、不快そうにハンカチで鼻を押さえている。


「よく来たな、和貴」


親父が手招きをする。


周囲の暗がりには、サブマシンガンを構えた黒服たちが、微動だにせず俺と志摩をロックしていた。


「……飯を食いに来たんじゃねえ。親父、あんたの首を取りに来たんだ」


俺は絨毯を泥靴で汚しながら、テーブルの対面に立った。


志摩は俺の背後で、いつでも銃を抜けるよう身構えている。


「相変わらず情けない男だ、榊原組長。こんな野良犬一匹に、これほどの準備が必要だったのかね」


中臣が冷笑を浮かべ、俺をゴミを見るような目で一瞥した。


「黒嵜君と言ったかな。君が持っている『ゴミ』を渡しなさい。そうすれば、君の弟分の未亡人に、一生遊んで暮らせるだけの見舞金を約束しよう」


「……ゴミだと?」


俺の喉の奥から、低いうなり声が漏れた。


「拓海が命を懸けて守ったものを、ゴミだと抜かしたか」


「そうだ。政治という巨大な歯車にとって、一人の極道の命など油差しの一滴にもならん。榊原組長の教育がなっていないのか」


中臣がワイングラスを傾けたその瞬間、親父がゆっくりと立ち上がった。


「和貴。拓海を殺したのは、俺の意志だ。組織が国と寝るためには、潔癖な正義感は邪魔だったんだよ。お前も、いずれは分かってくれると思っていたが……」


「…分かってたまるかよ」


俺は懐から、血と泥に汚れたあのICレコーダーを取り出し、テーブルに叩きつけた。


「あんたは、俺たちに『筋』を教えた。裏切るな、家族を大事にしろってな。……一番最初に筋を曲げたのは、あんたじゃねえか、親父!」


「……悲しいな、和貴」


親父の目が、一瞬だけ鋭く光った。


それが合図だった。


工場の天井から、巨大な鉄格子の檻が轟音と共に落下してきた。


俺と志摩、そして中臣と親父。


テーブルを囲む四人を、この「鉄の檻」が完全に閉じ込める。


「なっ…榊原!何の真似だ!」


中臣が驚愕して立ち上がる。


周囲の黒服たちも動揺し、銃口を檻へ向けた。


「代議士。和貴は俺の息子だ。…こいつの教育の仕上げは、親である俺が、誰にも邪魔されずにやらねばならんのでね」


親父がジャケットを脱ぎ捨て、ワイシャツの袖を捲り上げた。


その両腕には、俺と同じ昇り龍の刺青が、怒りに狂ったように蠢いている。


「さあ、和貴。殺し合おう。……勝った方だけが、この檻を出れる」


狂気の晩餐が終わり、真の地獄が幕を開けた。

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