【第八話 多摩丘陵の神隠し】
ケンカしていたはずの健人と亮くんが同時に神隠しのように失踪…
一体二人に何が?そして探せど探せど見つからない彼らはどこにいるのか?
夜の学校の職員室。集まっていたのは担任の水野と、豊岡亮の母親だった。
「うちの亮はどこ?白状しなさい」
「どこと言われましても…」
なんとこの夜、健人と亮くんが同時に行方をくらませたのだ。
「どうせお宅の子が逆恨みして亮をどこかに連れ去ったんでしょ?早く返しなさいよ」
「すみません…」
謝る彩花を制止して一歩出る。
「今は揉めてる時ではありません。子どもたちの安全を最優先して協力しましょう」
「はぁ?何が協力よ?あんたらもグルなんでしょ?心当たりのある場所、言いなさい」
「いや、家を出たのは2人の意志ですよ」
「なんでそんな言い切れるのよ」
「あなたの性格からして亮くんにGPS持たせてないわけがない。なのに居場所が分からない」
「それはお宅の子が電源を切ったから…」
「いえ、強引に電源を切ったり壊されたりしても、どこで途絶えたかは分かる。なのにココにいるという事は全く居場所の検討がついていない。つまり亮くんはスマホを家に置いて出て行った…それはどう考えても家出ですよ」
「ウチの子に限ってそんな…」
「先生、警察に捜索願いは出しましたか」
「え?警察?それはまだ…」
「なぜ?」
担任はチラッとザマスの方を見る。やはりそういう事か。
「先生。対応が遅れると、万が一の事が起こるかもしれません。これはもうウチらだけで解決できる問題じゃ無いです。何かあったら責任問題に…」
「そ…そうですね…」
スマホを取り出しようやく警察に捜索願いを出す。
「彩花、俺たちは2人が行きそうな場所を探そう。先生は教室に残って連絡係を。ザマス…豊岡さんは近所を継続して探してください」
僕と彩花は、もう一度近くの道路、駅、駐車場、河川敷、深夜営業のスーパーまでしらみつぶしに調べてまわる。その間にも警察や学校からは非常な連絡が入る。
「鉄道会社やバス会社に問い合わせてみましたが、そのような子どもは一切見てないそうです」
「国道や橋の監視カメラにも2人の姿は映ってなかったです」
「林の中も調べてますが、いる気配はありません」
家からどこかへ出ようとすると必ず通るはずの多摩丘陵の急坂や都道41号線、多摩川にかかる橋など一切その影すら映っていなかった。
「健人!」
「亮くん」
声が枯れても諦めない。彼の身にもし何かが起きたら絶対一生後悔する。全力で探す…その一方で、なぜか母親のことを思い出した。デパートのトイレや学校の登下校…僕が目に付かない所に行くのを母はいつも怖れているようだった。夜になるとよく仕事で家を留守にしたが、たった一度、花火大会のため抜け出そうとしたら、玄関前に母の仕事仲間と称する人が見張っていて面食らった事も…異常だとは思うが、でも今ならそこまでして子どもを守ろうという気持ちが少し理解できる。
結局、日が変わる頃になってもついに見つからなかった。
「家出したとしても、ココまで見つからないのは、本当に神隠しとしか…」
「もしかして多摩川に!?」
彩花の顔は青ざめている。
「落ち着け」
「…私のせいで…」
「大丈夫。賢いアイツの事だ、必ずどこかで無事でいる」
「でも…」
「健人を信じよう」
――連絡があったのは深夜2時。警察から健人と亮くんが見つかったと連絡があった。
2人はなんと家から歩いて10分、百草園駅前のコンビニで保護された。深夜にも関わらず小学生らしい子が大量の食料と飲料を買っていたのを見て不審に思ったコンビニ店員が通報したのだ。
「健人!!…無事でよかった」彩花は健人を抱きしめる。
涙ぐむ姉の腕を振り払うように顔を背け、健人は黙りこくる。
「どこにいたんだよ?この辺は片っ端から探したはずなのに…」
徹底的に調べ尽くしたはずの場所に、忽然と姿を現した事に喜びより驚きが勝る。
「何があったの?教えて」
「…今は言えない。とにかく…今回の事は俺が悪いんだ。俺が家から逃げようって誘った…」
その言葉に、ザマスはいつもの威勢を取り戻す。
「ほらやっぱり!どういうつもりですか?亮を連れ出してむりやり家出に付き合わせるなんて犯罪ですよ。お巡りさん、この子を逮捕して下さい」
ふと彩花の目が見開いた。その視線の先にはグッと唇を噛む健人がいた。
「あんたたちも。よくもウチの亮を侮辱してくれたわね。謝罪しなさい」
「……」
彩花は無言を貫いた。きっと今度こそ健人を信じようと思っている。だからその場しのぎの謝罪は出来ない、絶対。
「なんとか言ったらどうなの?ウチの子は中学受験で大事な時期なんです!受験に失敗したらどう責任をとってくれるんですか」
「……」
「何黙ってんのよ!」
――彩花はずっと前からこの問題の根本的な原因に気づいている…だが彼女は自分が子供であるがゆえに黙っている。正論をぶつければ、大人がそれを力でねじ伏せ、事態がより悪くなるから。
――健人も事実を知っている。だけど友達を守るために黙っている。姉に向けられる心ない言葉に怒り狂いそうになりながら、今キレれば全てが水の泡になると唇を噛んで耐えている。
――僕は、大人として、保護者として、そんな二人を守りたい。そして何より、ただただ申し訳なさそうに震えて頭を垂れている亮くんの想いが痛い。他人の家庭にどこまで踏み込むべきか、それは難しい問題だけれども少なくとも彼には、僕が感じてきた自虐感…例えば『僕という存在が母を苦しめてしまったんじゃないか』という負い目を引きずって生きて欲しくない。
――だから、闘うことにしよう。
「彩花!大人の相手は大人に任せてくれないか」
「…え?」
僕は一歩前へ出た。
「またあなた?いい加減にしなさい」
「いい加減にするのはあなたです」
「…何ですって?」
「そもそもですが、健人を家出に誘ったのは亮くんからじゃないですか」
「!!」
「は?この期に及んで言いがかり?ちょっと先生からも言ってください」
「…え、私は…」
担任教師はオロオロしている。僕はそれを無視して亮に近寄る。
「気になってたんですよ。なぜあなたたちが警察へ失踪届を出すのを躊躇したのか…病院へ連れて行くのを避けたのか…」
「!?」
彩花は急に話が飛んだことにキョトンとしている。だが、それ以外の人間は薄々この言葉の意味を分かっているようなリアクションだ。
「亮くん、ごめんね。腕見せてもらっていい」
「…ダメ…」
「ちょっとウチの子に何する気?嫌がってるじゃないの…先生なんとか言って!」
「あ…えぇっと」
無視して亮くんに話しかける。
「今、はっきりさせないと」
「ダメよ」
「今は亮くんに聞いてるんだ!!」
あたりが静まり返る。
「亮くん、君はお母さんを守ろうとして隠し事をしているね?でもコレは隠し続けてはいけない事だ」
「…」
「今このままにしたら、きっと君もお母さんも一生後悔し続ける事になる。本当の意味で救う事にはならないんだよ」
――そう、問題を先送りにして今も惨めな亡霊と向き合い続ける僕のように。
「大丈夫!おじさんを信じて」
僕は手のひらを広げて差し出す。そしてその目を見つめる。
……一歩…その一歩は…亮くん、君が自ら踏み出さないといけないんだ。
すると、亮はおそるおそる自らの腕をさしだした。僕はゆっくりその袖をめくっていく。するとその裏に無数のアザが露わになった。
「これって…」
「え…そ、それは…」
「教室で見た時、なんでこんな真夏なのに長袖なんだろうと思いまして。それと帰り際の歩き方も気になってました…あなた、亮くんに日常的に暴力ふるってますね」
「…」
「え、全然気づかなかった…」と担任教師はわざとらしく責任逃れのようにつぶやいた。だが、それを聞き流す。
「あなた、首の下など気づかれにくいところを狙ってDVしていますね」
「…」
「だがそうやって目立たないところを狙っていても、絶対アザに気づかれてしまう授業があります。ケンカが起きたあの日、毎週土曜日の3限目に行われていた学年全体での水泳です。だからその授業だけは体調不良を理由に欠席させていた。記録を調べれば分かるはずです」
「わ、わたしは知らない」と、また担任教師が言い訳を重ねた。
「ここからは憶測です。こうした不幸なキッカケながら保健室で知り合った2人はすぐに仲良くなった。だがやがて健人は亮くんの傷とその原因に気づいた」
「…」
「で、健人。一度は先生にこの状況を報告しようとしたんだろ?」
静かにうつむく健人。すると亮が口を開いた。
「…ごめんなさい。健人が、僕の腕の傷に気づいて、それはお母さん?って聞いてきて…」
『それはお母さんが?』
『…なんで?』
『お母さんがやったんだ。違ったら、違うって即答するもん』
『この事は言わないで…』
『…俺には母親がいないから分からないけど、さすがにこんなになるまで殴るやつ親じゃねぇと思う』
『違う!悪いのは僕なんだ。お母さんの期待に応えられない僕が悪いんだ…だからこの事は黙ってて…健人、なぁ?友達だよね?』
『友達だから…友達だからほっとけないんだよ』
『はぁ?何でだよ!』
豊岡亮は涙ながらに頭を下げた。
「殴ったのは僕の方なんだ…ごめんなさい」
「!!」
「でも健人は全部自分のせいにして。僕がお母さんに怒られないように…また傷が増えないようにって…」
「亮…」
「あの日、素直に病院に連れて行かなかったこと、やたら僕たちに怒鳴っていたのも全てが自分に火の粉が向かないようにするため。亮くんはあなたの事を守ろうとし、健人は亮くんを守ろうとした…なのに大人であるあなたは自分の保身に走った」
亮はそれでも健気に母をかばう。
「おじさん、悪いのは僕なんだ。だからお母さんを責めないで……」
それ以上は何も言えなかった。ただ亮の肩に手を添えた。
「ごめんなさい、お母さん…ごめんなさい…」
その言葉に亮の母親は泣き崩れる。
「亮…」
「今、この問題に向き合わないと、亮くんはずっとお母さんの問題を自分のせいだと責め続けることになる。先はないんです、お願いします」
「ごめんなさい…亮の教育に夫が無関心で。だから私がなんとかしなきゃって…最初は授業でついていけない所を家で教えてただけだった。だけど成績が伸び始めると、自分も認められた気がして…そしたら塾も家庭教師もって。気がついたら亮の成績が私の成績になっていった…亮の時間を奪って、成績が悪いと自分を責める気持ちを亮にぶつけるように…ほんとごめん…ごめんね、亮」
すると担任教師は他人事のように、亮の母親に冷たい罵声を浴びせる。
「ひどい…亮くんに暴力を振るってたなんて…」
「いや。先生、前々から気づいてましたよね?DVのこと。でもクレーマー気質の親を相手に面倒ゴトに巻き込まれたくない。だから見て見ぬふりした」
「…」
「それだけじゃない。学習に支障が出始めた健人も、家族で起きたストレスを抱え少年が非行に走ったという陳腐なストーリーに当てはめて保健室に閉じ込めた。あなたが問題を放置したことでトラブルは大きくなったんです」
健人は涙を拭いながら声を震わせる。
「姉ちゃん、ごめん。俺、悔しくて…何も姉ちゃん悪くないのに…俺のせいで、あんな責められて」
「私はいいの。そのかわり本当のことを話して」
「…亮がもう限界だって。成績が悪かったからもう自分には生きる価値がないって。死んじゃうって思った…亮を守りたかった」
「…うん」
「…亮は友達だから」
「そうか。ちゃんと守ったじゃん」
家出で踏みとどまったのは健人の説得があったからかもしれない。児童相談所による調査が住むまで亮くんは警察により保護されることになった。
家に帰る頃、気の早い秋の虫の声が響く里山、その空は白み始めていた。ダイニングテーブルには無言の鉄鍋と、しばらく放置されシナシナになったカット野菜たちが主の帰りを待っていた。
「ねぇ、すき焼きにしない?」
彩花は冷蔵庫から、パックに整然と並んだ薄切り肉と卵を取り出し、ダイニングテーブルに並べる。
「俺も腹減った」
「は?今、朝の4時だぞ。せめてしゃぶしゃぶにしよう」
そんな40代の意見は相変わらず空気のように無視されたが、正直、僕も無性にお腹が空いていた。鉄鍋に焼けた肉と割り下の甘い香りが漂い、張り詰めた気持ちがほぐされ、気がつくと席についていた。
「意外と朝に食うすき焼きも悪くないな…」
「…あのさ…」
「…」
「実は私、亮くんの家庭でDVがあるんじゃないかって噂は前々から聞いてたの…なのに確信もないのにそんな事言い出せなくて。だからおじさんが切り込んだ時、ほんとドキドキした」
「あぁ、実は自分も…ハハハ」
「は?じゃあ、勘であんな事言ったの?」
「いや、ある程度の確証はあったけど、最後の最後は袖めくるまで分からなかった…」
「マジか…」
「ってか健人、そういえばどこにいたんだよ?この辺探し回っても全然見つからなかったんだけど」
「たしかに。神隠しかと思った」
「あぁ。ほら、そこの地下壕。鉄格子してある」
「え!すぐそこじゃん」
「で、あんまり腹減ったもんだから食料調達しようってコンビニ行ったらすぐ捕まっちゃってさ」
「灯台下暗しってやつか…全然ノーマークだったな…」
多摩丘陵には、戦時中に立川飛行場の物資などを空襲から守るためこうした地下壕がそこかしこに掘られている。崩落事故が多発し立入禁止になっていたが、鉄格子はコツをつかめば隙間から簡単に侵入できるので格好の遊び場だった…僕も一度、遊んでるのを母に見つかってこっぴどく叱られた覚えがある。
「あのさ…」
「…」
「おじさん、ありがとうな。俺のこと最後まで信じてくれて」
「当たり前だ。仲間だろ」
彩花はコンロの火加減を見つめている。
「私、反省だな…ずっと近くにいたのに何もわかってあげられなかった…私の知らない健人がいるんだなって」
「姉ちゃん…」
「むしろそういう部分があるからお互いを大切に出来るんじゃないか?」
「…?」
「だってお互い知らない部分があるから理解しようと努力ができるし、本当の意味で尊重し合えるんだよ。勝手に相手のこと知ったつもりになるより何倍もいいと思うけどな」
「おじさんの家族論…」
「そう」
「フフフ…説得力ないな」
「たしかに」
朝日が森の上から庭を照らし始めた。
「それでいうともう一つ、可能性の話だけど、健人について一つ調べたい事があって」
「調べたい事?」
「ディスレクシアかもしれない」
「ディス…」
「ディスレクシア。文字を読んだり文章を読解するのが苦手な発達障がい。人口の6~7%はいるとされてるんだ。でも一緒にリフォームとかやっていると、むしろ計算や立体造形は異常に得意だし、学校の勉強に追いつけないってそれぐらいしか無いなって」
そうした障害があると小学生高学年になると特に数学の文章題なども増え、学習進度に遅れが出やすいという報告もある。それを聞いた彩花は思い当たるところがあるようだ。
「俺、大学では映画学部にいたんだよ。それでスピルバーグがそうだったって話聞いたことあって」
「じゃあ、俺は…」
「勉強が出来ないんじゃない、勉強のやり方が違ってたんだ。少なくとも健人は、誰にも負けない才能がある」
――ふと昔、全く同じ言葉を母さんにかけられた事を思い出した。それは英語のスピーチコンテスト。
『宏樹はすごいね。だってこんな素敵なスピーチを書けるんだから。…じゃあ、私に向かって練習してご覧?』
『は?ヤダよ』
『いいから!ほら!』
なぜかスピーチの聞き役をかってでた母は、僕の拙い英語を繰り返し聞いてはイントネーションを細かく修正。結果としてコンテストで優勝することが出来た。大層喜んだ母と、その日もお祝いにすき焼きを食べたっけ。この経験が無ければアメリカへ留学しようなど考えもしなかっただろう。その時の表彰状は今まさに目の前、棚の上に飾られている。…そういえば、あの時、母がネイティブ並みに英語が得意だったのに驚いた記憶がある。なんでこんな大切な記憶を忘れちゃってたんだろう。
その後、学校側にディスレクシアの可能性を伝えたところ、すぐに健人のための特別な授業プログラムを組んでくれる事になった。これまでの事への後ろめたさが推進力になったのかもしれない…。その際、幼稚園の名札にあった「ながせみさき」という児童が小学校に在籍していなかったか確認してもらったが記録は見つからず。さらに近隣の幼稚園に通った記録はつかめなかった。となると「黒田百合子」「ながせみさき」への残された手がかりはアレしかない…
「お届けものです」
夏休みも明けた頃、玄関口からがなり声が響いた。僕は待ってましたとばかりに郵便局員を迎え入れ、差し出された封筒と引き換えに乱雑なサインを書き殴ると、すぐさま居間へと戻り封を開けた。中からは領収書と共に、一枚のDVDと円盤状の物体が出てきた。
――依頼していた8ミリフィルムのダビングサービスだ。
それは僕が物心ついた頃には既に家の棚に並んでいた。だが8ミリフィルムというものだと知ったのはつい先日。VHSカメラが普及する80年代より前、一般の人が映像を残すほぼ唯一の手段だった。比較的高価で、専ら家族の誕生日や入学式など大切な時を記録するために使われていたという。早速、昔使っていたDVDデッキをテレビにつなぎ…(そう、デジタル化した現代、DVDを再生するのも一苦労なのだ)再生ボタンを押す。
少しピンボケした映像に映るのはこの家の居間だろうか。1歳ぐらいの赤ちゃんを抱えた女性が、不意打ちで撮られたせいかカメラに向かって不機嫌に怒っている。…次のカットも同じく居間。さっきの子が今度は母親の足につかまり立ちしている。不機嫌だった母親も一転大はしゃぎ。カメラの揺れからも撮る人の喜びが伝わってくる。だけど、何がそんなに嬉しいのだろう…?
次のカット。どこかの海岸だろうか、滲んだ色味でもわかる南国のような鮮やかな砂浜と海。奥にはゴツゴツと特徴的な大岩が大小並んでいてそこだけは日本の海らしい荒々しさを感じさせる。服装からして女の子のようだ…少し大きくなり自力で歩けるようになっている。波打ち際を歩く母親の周りをよちよちクルクルと走り回るカワイイ姿…こちらも笑みがこぼれる。一方の母親はやっぱりカメラが苦手なのか、必死で顔を背けている。
だが時々見切れるように映り込むその母親の顔を見て、僕は息をのんだ…それはまぎれもなくパスポートの女『黒田百合子』であった。
すると次のシーンで女の子は少し大きくなっていて、庭に置かれたビニールプールで楽しそうに水遊びをしている。次は誕生日だろうか。吹き消すケーキのロウソクの数は3本。そして、再び時間が飛び、ワンピースを着ておめかしした黒田百合子が現れた。手を引かれているのはさっきの女の子…随分大きくなり幼稚園の制服に身を包んでいる。入園式だろうか…すると一瞬だけ画角が乱れ、家の窓ガラスに映った何者の影が見える。男性のようだ。
「僕の母・渥美真理に似た女性、黒田百合子には娘がいた…」
新たな手がかりと共に、新たな疑問が芽生える。
これを撮った人は誰なんだろう?
8ミリフィルムに映る謎の家族…その正体をたどる手がかりは意外なところに??