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第51話 賢者杯─決勝

賢者杯・決勝戦──。


 会場の空気が張り詰める。

 中央の舞台に立つのは、無詠唱で全試合を即決着させてきた絶対王者・アメルノア・ランカスター。

 そしてその対面に立つのが俺、ラインハルト・ファーレンガルト。


「では、賢者杯の頂点を決める最終決戦をただいま、開始させて頂きます。」


 「決勝戦──開始ッ!!」


 審判の合図と同時、まず飛んできたのはアメルノアの火球。

 ただの火球ではない。圧縮され、極限まで高められた魔力を有するそれは、一撃で試合を終わらせる威力を持っていた。


 だが、俺は即座に無詠唱で氷の盾を展開。爆ぜる炎を受け止める。


 アメルノアは構わず連続で魔術を放ってくる。火の槍、灼熱の斬撃、火柱、爆砕弾──

 魔術の嵐が止まらない。が、その魔術の波を、俺は必要最低限の魔術で撃ち落とし、弾き返す。


 魔力の量は俺の方が遥かに上だろう。


 だが、俺は魔術相性を考え状況を正確に判断し、魔術に意味を持たせる。


 「っ……!」


 アメルノアが歯を食いしばり、舞台を跳ぶ。地を蹴って横へ、縦へ。隙間を縫って距離を詰めようとする。


 俺は風で足元を滑らせて位置を調整し、氷の刃を弾丸のように飛ばす。アメルノアは火の盾を展開して防ぐも、その余波が衣を裂く。


 「……楽しいじゃない!ラインハルト……!」


 彼女の声に笑みが混じる。次の瞬間、轟音と共に巨大な火球が生まれた。いや、もはや球ではない。炎の嵐だ。

 熱気が観客席まで届き、思わずどよめきが起きる。


 俺はそれを上空へ誘導し、地を這うように水蒸気を纏わせる。

 大地を砕くような轟音のあと、舞台が蒸気で覆われた。


 ──視界が途切れる。


 だが、それは俺の誘導だ。蒸気の中で音を封じ、視界を奪い、俺は氷を練る。


 静かに──だが確実に。


 アメルノアも気づいたのか、瞬間的に広範囲の火撃を放つ。


 「そこだ!」


 霧の向こうに立つアメルノアを正確に捉え、俺は氷槍を一斉に放つ。

 アメルノアが気づいた時には、彼女の身体を包む防御障壁が赤く光っていた。


 ──決着。


 蒸気が晴れていく中、静まり返る会場に、審判の声が響いた。


 「勝者──ラインハルト・ファーレンガルト!!」


 次の瞬間、コロシアム全体が揺れるほどの大歓声が巻き起こる。

 拍手、歓声、興奮の叫びがこだまする。


 アメルノアは舞台に膝をつき、肩で息をしながら、俺を見上げた。

彼女は、悔しそうに、しかし確かに笑った。


 「……ここまでやるなんてね。……まったく、油断してたわね。来年は負けないわよ。」


 俺は笑って応えた。


 「はは、じゃあ今度はアメルノアも本気を出してくれよ?」


そう言うとアメルノアに少し睨まれた。




 観客席が、割れるような歓声と拍手に包まれている。

 俺は静かに一礼しながら、舞台上で息を整える。アメルノアも笑みを浮かべながら起き上がり、横に並んだ。


 「準優勝……ね。」


 そう呟いてから、彼女は観客席に向かって手を振った。

 会場の熱気は冷めず、誰もが興奮冷めやらぬ様子で立ち上がり、次々に拍手を送ってくる。


 とはいえ──


 「表彰式は明日の戦神杯の後にまとめて行われます!戦神杯もお楽しみに!」

 そうアナウンスが入った瞬間、場の雰囲気が切り替わる。観客たちの意識は、自然と「次」に向かっていた。


 ──戦神杯。


 学院祭、三日目の目玉。剣術のみで競い合う、最も過激で人気のある大会。


 参加者は剣術上級ばかりの実力者揃い。その中にはもちろん特待生の仲間も参加する。


 イーディスにエルトリオ。そして、ルシルゼーレ。


 (あの三人と一つの舞台に立つのか……)


 俺は観客の熱狂の中、ゆっくりと控え室へと引き上げる。


 今日の勝利に酔う暇などない。

 明日は剣の咆哮がコロシアムに響き渡る。


 ──戦神杯。剣術最強を決める、最終日に差しかかろうとしていた。

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