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第9話 言葉の重さは受け取り方次第

 今日も一日、気合いを入れて頑張るとしますかね。


 ドアを開けて教室に入ると、今日は一段と騒がしい。俺を見るなり、より騒がしさが増した気がする。


 何だ何だ?俺の悪口でも言っているのか?


 すぐに席につく。ただ、今日は小テストがある。


「はい、席について〜。小テスト始めるよ~。名簿順に並んで〜。早くしないと解く時間なくなるよー。スクールバスの人の席は空けてねー」


 来た。朝定番の数学の小テストだ。


 満点合格じゃないと抜けられない。合格するまで毎日いつもよりも30分くらい前に来ないと行けないのが正直怠い。


 一回で抜けられたら、1,2週間はないので、今日で抜けたい。


 名簿順に並ぶと、ちょうど俺の隣りに月陰さんが来る。


 見知った仲なので、コミュニケーションの練習だと思い、毎回挨拶を交わしている。


「よっ、おはよう」


「…………おはようございます………」


 普段と異なり、小テストが始まる前だというのにまだ騒がしい。何か余計に騒がしくなったようだ。


 耳を澄ませても「やっぱり」とか「そうに違いない」とか曖昧な言葉しか聞き取れない。


「静かに、解く時間なくなってもいいの?」


 先生がそう一言だけ言うと、一気に静かになる。そりゃそうだ。解く時間は少しでもあったほうが良い。何せ小テストが朝の貴重な時間を奪っているからな。


 考え事をしていると壁に掛けられた時計の長針がちょうど一周し、


「始め!」


という声とともに一斉に紙を表にさせ問題を解き始めた。




 小テストが終わって、自分の席に戻り、単語帳を開く。朝のHR(ホームルーム)まで単語帳を眺めて待つのが俺の日課だ。話し相手などいない。


 因みに、英単語の小テストもHRの前に行われるが、これは時間を取らないため、何のイベントでもない。毎日単語帳を見ているせいか簡単に答えられる。以前は0点ばかりだったが。


 単語帳を眺めているとHRが始まる。終始特別な連絡がなく、聞き流していたが、ある一言に身体がピクッと反応してしまう。


「あっ、今日席替えあるから、よろしく〜。今回は自由に決めても良いぞ~。ただ、あまりにも男子だけとか女子だけとか偏った場所が合ったら、変えてもらうからな~」


 ……席替えには嫌な思い出しかない。毎回、「うわ~、最悪なんだけど」とか「マジハズレだわ~」とか聞かされる身にもなってくれ。


 例え、それが俺に対しての言葉じゃなくても、刺さっちゃうから。




 放課後に差し掛かる。帰りのHRの時間を使って席替えをする。


 席替えといっても、座りたい席に座るだけだ。人混みを避けながら、目的の場所に移動する。


 窓側の最後尾の席だ。暇なときは何時でも左手の窓を見られる。夏場は暑く、冬場は寒いが、今はちょうど良い季節だ。


 俺の席を避けるかのように、席が埋まっていく。後ろの席は人気のはずだが。偶然か必然か、俺の周りに知り合いが集まった。


 前の席がヨシナリ、右隣りが(つき)さんだ。月陰(ガチイン)さんだと呼びにくいので、今は月さんと呼んでいる。


 ふっ、周りが陽キャじゃなくて助かった。これで陽キャの圧で圧死することがない。


「よろしく〜」


 軽く挨拶する。そこら辺の奴らのマネをしてみた。こういう行為が人間関係には欠かせなさそうだ。


「えぇ、よろしくお願いします。孔明さん」


「……よろしく」


 今回の席替えは上手くいったようだ。暫くは人間関係にギクシャクしなくて最高だ。




 そう思っていた時期がありました。


「………明智君ってもしかしてモテるの?」


 月さん、何て殺傷力の高い質問をするんだ。


 俺達、ただの雑談をしていただけだよな。さっきまで、好きな本の話しとかしていなかったか?時でも飛ばされたのか?


 思わず、自分の顔に手を当ててしまう。


 制御できないナニカが溢れてくる。


 見れば分かるだろ!カノジョなんて大層なもの、今まで一人もいないと言っても過言ではないかもしれない。


 小学1年生のときの話しは相手からしたらノーカンだろ?なら、俺もそうさ。


 そもそも、今の、現在の話しだ。どこをどう見たらモテているように見えるんだよ。


「俺が?モテる?ないない。あるわけがない。知っているでしょ。俺にカノジョいないくらい。何?それとも嫌味?俺をいじめて楽しい?」


 心の弱い部分を刺激され、つい考えた言葉が全て出てしまい、自分自身の舵を取れなくなる。


「……そういう意図はなかった。そう受け取ってしまったなら、ごめん」


 自分の思考に冷水をかけ、一気に熱を冷まさせる。


 こういうやらかしたときにこそ、コミュ力が試される。冷静になった思考で過去の自分をフォローする。


「いや、こちらこそごめん。そういう意図がないことくらい分かっているつもりだったけど、ついカッとなって言ってしまった。申し訳ない。ただ、何でそう思ったのか聞いても良いか?」


 本当に疑問だ。心当たりがなさ過ぎる。


 少しした後、月さんが口を開く。


「………何となく」


 一瞬、その言葉は俺の理解の範疇を超えてしまっていた。


「何となく……。何となく!?……えっ!!、何となく!?」


 ちょっとだけ戸惑ってしまったが、まぁ、そんなこともあるかと思い、気を取り直す。


「まぁ、過去は置いといて、今は見ての通り、モテているわけない。ネット小説とかならまだしも、こんな陰気くさい俺みたいな奴がモテるはずないじゃないか。こんな俺を好きになるやつはおかしいやつしかいないだろ」


 自分で言っていて悲しくなるが、これが俺の俺自身への客観的評価だ。


「………そう。そんなだからモテない」


「えっ?」


 そう言い捨てて月さんは帰ってしまった。脳の大部分が理解を拒否するが、一部が勝手に理解してしまう。


『そんなだからモテない』


 他人が評価したそれは、事実と遜色ない。


 嘘を吐く必要がないから。


 自分が評価する分にはまだ希望があるが、他人の評価は希望がない。


 その言葉の現実味は杭として俺の心臓に刺さった。

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