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第8話 事実は小説よりホラーなり

「ん?人のことには口を出すが、自分のことに口を出されるとムカつくのかなぁ?ねぇ、そういうことだよねぇ」


 言い出したら止まらない。こういうところだぞ。俺に友達も彼女もいないのは。落ち着けぇ。


「それってぇ、子どもっぽいよねぇ。あっ、まだ子どもだったかぁ。そうかぁ、子どもだもんねぇ。うんうん、仕方ないかぁ。そういう態度がダブスタって気づけたらもう少し成長できるんじゃないかな。『年相応』に」


 思っていても、全てを口に出すな!俺!


「外見だけ整えても中身が伴っていない自分を見ていて虚しくならない?自分の外見をエサに釣られた魚見ていて楽しい?楽しいか。だって自分の内面に釣られたと勘違いしているもんな」


 ここまでマシンガンのように言葉が出てくると、自分でも何を言っているのか分からなくなってきている。


「美人は3日で飽きないしブスに1日目はないとは言うが、それって性格含めての話しで、外見だけの話しじゃないんだよね」


「別に君のことはよく知らないけど、少なくとも良い性格には見えない。実に勿体ない。まぁ、時間だけは十分にある。焦ることはない」


 何様だよ。俺はこいつの親でも保護者でも先生でもない。


 何とか喉元まで出てきたその言葉に続く追撃を止めると、周りが見えてくる。何人か他の生徒がこちらを見ている。こっち見んな。


 俺の想定外の言葉で彼女は絶句しているようだ。俺も予想外だよ。


 俯いていて、表情が見えない。心なしか、肩が震えているような。


 ローファーを履きながら心を整え、言葉を出す。


「あ~、俺の性格、かなり悪いんだわ。すまん。言い過ぎた。こんな短時間のやりとりで性格なんて分かりようもない。嘘だと思ってさっきの発言は聞き流してくれ」


 反応がない。


「……何度も言うが職員室はここと真反対の場所だぞ。じゃあ、俺はもう時間が(勿体)ないから行かせてもらうわ。この時間の電車逃したくないんで」


 気持ちを切り替えて立ち去ろうとするが、急に手首を掴まれる。爪が食い込んで痛いイタいイタイ。


「ちょっ。痛いって。爪刺さってるって。力強っ。マジで」


 顔を少し上げ、整えられた栗色の前髪の隙間から見える黒い目が真っ直ぐこちらを捉える。


「ハッハハッははあははあっははは」


 ぶつぶつと小さく低い声で笑い声を上げている。いくら何でも怖すぎる。アニメかドラマの身過ぎで俺は幻覚でも見ているんじゃないか?


「離せって」


 手を離そうとするが、俺の力に追従して力を入れているのか、ただ腕を振るだけじゃ剥がせない。


 しょうがない。こんなときには、原始からあるこの技を使うしかない。


「あっ、土方先生!」


 俺がそういうと、彼女はスッと振り返る。


 その瞬間、力が僅かに弱くなり、俺は手を払って駆け出す。こういうのをミスディレクションって言うんだっけ?たまにはこの手の知識も役に立つもんだな。


「じゃあな」


 後ろを振り返らず逃走する。




 高校が見えなくなった位置で、一息つく。深呼吸を繰り返しながら、歩き始める。


「あ~、二重の意味でドキドキしたわ〜」


 さっきのことで、自分の女性経験の無さを実感した。


 俺もまだまだガキってことだ。




 家に着き、普段通りのことをして、普段通りに寝る。


 明日の朝には今日の出来事を忘れてしまっているだろう。

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