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3.何をされても構いません。

私はサイラス様の優しい言葉に堰を切ったようように不安を話した。


「前世の辛い記憶の夢を見ることも少なくなりました。でも、最近ルブリス様のことを夢に見るのです。私が体の自由が効かず、押し倒された時のことです。あの時はサイラス様が現れて、力が漲り彼を撃退できました。しかし、サイラス様がいらっしゃってくれなかったら私はどうなってたのでしょうか。あなたを失うようなことを彼からされていた気がするのです。あの時は、ぼんやりする中でも必死だったので怖くありませんでした。でも、思い返すと怖くて仕方ありません。」


私はルブリス様が何を悩んでいるかいつも考えていたのに、彼は私のサイラス様しか愛せないという気持ちを無視したのだ。

前世でも男の人から押し倒される経験などしたことがなかったので、あの時は一瞬何が起きたのかさえ分からなかった。


「イザベラ、大丈夫です。私は本当はあなたを怖がらせた上に、あなたの心を支配している彼が憎くて仕方がありません。イザベラに怖い思いをさせて申し訳ございませんでした。彼を遠ざけることなんていくらでも出来たのに私の判断ミスです。不謹慎ですが、イザベラが私を失うのを恐れてくれたことが嬉しいです。最低な感情を抱いてしまいごめんなさい。私の思いもよらぬところで、色々悩んでいたのですね。夫婦になったら一緒に寝ることも怖がっていましたよね。安心してください。イザベラが嫌がることは一切しないと私は誓います。」


私がサイラス様のことも怖がっていると勘違いされるのは嫌だった。

私は彼のことが大好きで、彼以外の男性に迫られたのが怖かったのだ。


「私はサイラス様になら何をされても構いません。」


「イザベラ、そんなことを言うのはダメですよ。あと、1年は結婚できないのです。私の理性が飛びそうになることを言わないでください。」


「そんなつもりはありませんでした。ただ、思ったままのことを口にしてしまいました。」


「イザベラ、私はイザベラ限定の蜜蜂になりそうです。」


「それはダメです。蜜蜂の仕事は怖いです。」


私がそう言うと、彼は私に口づけをしようとした。

目を瞑ろうとした時、私の作った編みぐるみが見えた。


「サイラス様、私のプレゼントをここまで持ってきてくれたのですか。」


「はい、いつもイザベラの編みぐるみを抱っこして寝ています。そして、今こんなことがしたかったです。」

サイラス様が私の編みぐるみと彼の編みぐるみにキスをさせるので、私は恥ずかしくなってしまった。


「すみません、相変わらず空気が読めませんでした。サイラス様にお願いがあるのです。ルイ国に戻ったら、平民の方々のお家を回ってもよろしいでしょうか?できれば、皆さんとお話がしてみたいのです。毛糸を持っていって編みぐるみを編みながらお話しをしてプレゼントして帰るみたいなことをしたいのですが、可能でしょうか?」


ビアンカ様が編みぐるみは流行が作れると言っていた。

しかしその話を聞いた時、私がしたかったのは流行が作りたかったことではないと気がついたのだ。


私はルイ国の人ともっと話がしたい。

編みぐるみの需要があるのなら、私にできるプレゼントとして贈りたいのだ。


「イザベラ、貴族令嬢との社交や、花嫁修行に加え私の仕事の手伝いまであなたはしてくれています。普段会わない平民の話を聞きたいというのはイザベラらしいです。ライ国でも土地区画整理事業で平民街を回っていたようですね。」

私はライ国の平民街を回っていた時に、平民の大人や幼い子となら自然に話せていた。


「ルブリス様や私とカールがやっていた時よりも、土地区画事業はエドワード王太子殿下に引き継いで驚く程進みましたね。私たちがしていたのは、結局こう言うことがしたいという宣伝だけで導入部分もできていなかったと感じました。前世でエドワード王太子は街を綺麗にするような仕事がしたかったのです。志のある方に、私たちの思いつきのような仕事が叶うわけもありません。ルイ国の平民街を回りたいというのは完全な私の我儘です。ライ国で平民街を回っていた時、思いのほか打ち解けて話せたり色々な人の考えに触れて楽しかったのです。」


「イザベラ、確かにエドワード王太子殿下の仕事は素晴らしかったです。しかしながら、イザベラが自ら歩いて街を回るという方法をとったからこそ多くの平民の要望を聞けたのでしょう。イザベラがルイ国民の声を聞きたいと思ってくれることは嬉しいです。この編みぐるみは、心がこもっていて貰うと幸せな気分になります。しかし、とても手間がかかっていることもわかります。その場で編んでプレゼントするということは不可能なのではないのでしょうか?」


私は前世で貧しい方の庶民だった。

貴族の方よりも、平民の方の気持ちの方が寄り添いやすい。

サイラス様が直接平民の方にお話をする機会はない。


でも、彼は彼らの気持ちを知りたいと思っているはずだ。

それならば私が彼らの気持ちを聞いて、彼のお仕事に少しでも役に立ててもらえたらと実は考えていたりもする。

それと彼らに私のことをサイラス様の隣に置いて良い存在だと認めて貰いたい。


「私は編み物が得意で、人の拳くらいの大きさの人形なら5分くらいで作れます。できれば知り合った方に渡したりして、仲良くなった記念にしたいのです。それに自分の汚名を返上したいのです。人の評判を気にしすぎているのは分かっています。でも、私は男を手玉にとる不埒な女と思われたままでいたくないのです。私が一途にサイラス様を思っていることを汚されたくはないのです。私と話せば、私が男を手玉にとるような能力がないことをわかってもらえる気がするのです。それに、ルイ国の街が綺麗なのはサイラス様が昔、土地区画事業を始めたからだと聞きました。あなたの作った街を一度自分の足で回りたいのです。」


私が話終わるのを待たずに、私は彼に抱きしめられていた。









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