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19.前世でデブでブスだったから油断していた。

「廊下を散歩しながら、赤ちゃんの名前を考えていたのです。一生使う名前ですよ、私の独断で決めて良いのかについても悩み始めています。イザベラ様、何か良い案はありますか?」


「あの、生まれた赤ちゃんに決めてもらってはどうでしょうか?」


私は自分で言った後に、自分の発言がおかしくなっていることに気がついた。

今、私は動揺していてまともな考えができなくなっている。


「イザベラ様、あなた赤ちゃんというものが全く分かっていませんね。あと、1年間はパパ、ママと言った言葉しか喋れませんよ。あなたのことだから母上のように自分で子供を育てたいと言いそうだと思っていましたが、乳母にお任せした方が良いかもしれませんね」


私はライアン様の言葉にショックを受けた。

子供を自分で育てることもできないかもしれない。


前世の世界が自分で子供を育てるのが当たり前の世界だったからか、私も当然そのつもりでいた。


しかし未熟な私に子供を育てるようなことができるのだろうか。

乳母に任せた方が、しっかりとした子供が育つ気がする。


「ちなみにサイラス兄上は子育てのエキスパートだったりします。兄上は仕事も幼い頃からできましたが、妹2人の面倒もよく見ていました」

明らかに明るい口調で私に語りかけてきたライアン様は、私を励ましてくれようとしている気がした。


「そうなのですか、微笑ましいですね」


「イザベラ様、あなたは兄上の母上の子育てに対するサポートが純粋な気持ちによるものだと思っていますね。全ては計算ですよ。次期国王である王太子を最終的に選ぶのは父上でした。そして、父上は母上にメロメロです。母上の意見が通りやすいことを兄上は知っています。確かに兄上は優秀ですが、一番上の兄とは12歳も離れています。サイラス兄上を次期国王に選ぶということは、2人の年の離れた兄のプライドをズタズタにすることと等しいです。現に、サイラス兄上が王太子に選ばれるなり、2人はさっさと他国の王女と結婚しています。自国で10歳以上も離れた弟に負けた兄として、サイラス兄上のサポートをするのは男のプライドが許さないのでしょう」


「そういえば、上2人のお兄様は行事の時くらいしかルイ国に戻られませんね」


「そうです。男とはとても繊細な生き物なのです。イザベラ様はむやみやたらに親切にして、相手の心を虜にしながら、自分には兄上しかいないということを伝える拷問を繰り返す悪女になってますよ」


ライアン様はルブリス様とフィリップ王太子殿下のことを話しているのだろう。


きっと言いづらいことだろうことを、私にわざわざ言ってくれている。

これは、これからの私に必要な助言だからしっかりと心に刻まなければいけない。


前世でデブでブスだから油断していた。

今日、フィリップ様が一目惚れしたようなことを言ってきた。


今の私の外見だと、そのように思われてしまうリスクがあることを自覚した。


私はサイラス様以外の人には、気持ちを寄せられたくない。

自分がもっとしっかりしないと、一番大切なサイラス様を悲しませる結果になってしまう。


「私が悪かったのですね。申し訳ございませんでした」

私が謝るとライアン様は急に優しい口調になった。

おそらく私が落ち込み過ぎているから、口調を和らげたのだろう。


「そういえば、イザベラ様の発言から狩猟大会がなくなりましたが、サイラス兄上は最初に参加した狩猟大会で獲物を母上に捧げたのです。当然貴族令嬢に獲物を捧げなければいけないと思っていた上の兄2人はサイラス兄上にしてやられたと思ったと思います。サイラス兄上が母上に獲物を捧げた行為は、母に日頃の感謝を伝えるような行為というように尊く扱われました。しばらく自分の母親に獲物を捧げるような貴族令息が続出しましたよ。二番煎じは逆効果だと思うのが、私の個人的意見ですけどね。そのようにサイラス兄上は突然、常識を覆す方法をとることがあります。あなたの愛する彼はとても危険なところがあるのですよ。ちなみにフィリップ王太子殿下も危険な男ですね。今回、イザベラ様に本心を伝えたことで私は彼を危険な男判定しました」


行き止まりになると、上に上がる階段が見えた。

私はライアン様の大切な日に、お気持ちを煩わせてしまったことに申し訳なくなった。


「送って頂きありがとうございました。それから、改めてお子様の誕生おめでとうございます」


この階段を上がると王妃の寝室に繋がっているということだろう。


「私はイザベラ様の部屋から出るところを誰かに見られては困るので、この通路を折り返して戻ります。イザベラ様はこの隠し通路を今日知ったことも秘密にしてください。サイラス兄上がこの通路を通って、あなたの寝室に現れたときは必ず驚いたふりをするのですよ。では、失礼します」


そう言ってライアン王子は通路を折り返して行った。

私が階段を上がって上にある扉を開けると私の部屋のベットの下に出た。


「ここからサイラス様が出てきたら、確かにびっくりするかも⋯⋯」

私はベットに頭をぶつけないようにしながら、ベット下から這い出て、シーツを被って眠りにつくことにした。







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