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17.そこで開発した遊びが1人かくれんぼです。

部屋に向かう、廊下を歩きながら私は動揺していた。

どうするのが正解だったのかもわからない。


明日からフィリップ王太子殿下に普通に接するのが正解だということだけは分かる。

でも、彼がララアと婚約する以上、彼の告白のことは一生秘密にしなければならない。


サイラス様に秘密にしなければいけないことができたことに心が苦しくなる。


「イザベラ様、寝巻きで廊下を歩いてはいけないと言いましたよね。こちらに来てください」

向かいから歩いてきたライアン様に、唐突に部屋に引っ張りこまれた。


「ここは、サイラス様の執務室ですか?」

そこは毎日のようにサイラス様が仕事をしている彼の執務室だった。


「そうですよ。実はここから王妃の寝室、現在のイザベラ様の寝室に行けます」


ライアン様の言葉に私は驚いてしまう、ここから私の寝室へはそれなりの距離がある。


「そうなんですか?」


「私がここの隠し通路を知っていることは兄上には秘密にしてくださいね。大々、国王になる人間にしか知らされない隠し通路です。私はこの隠し通路を6歳の頃1人かくれんぼをしていた時に見つけました」


ライアン様が青の背表紙の本を抜くと、本棚が動いて本棚の下に床下収納のような部分が現れた。

そこをの扉を彼が開けると、地下に階段が続いている。


「中は真っ暗ではないのですね」

地下であまり人が入ることがなさそうな場所なのに、ほのかに明るい場所だった。


「感想はそこですか? 私がなぜここを知っているか聞いてくると思いました。階段気をつけてくださいね」

ライアン様が手を差し伸べてくれたので、私はその手を取り足元に気をつけて階段を降りた。


「あの、どうしてこの隠し通路の存在に気がついたのですか?」

私は彼が聞いて欲しそうだった質問をした。


「4歳の時の私は孤独を極めていました。6人も兄弟がいるのに何故か不思議だと思われるでしょう。サイラス兄上の上の2人の兄は年が離れています。他国を見ても分かるように王子は2人くらいが適正です。2人のどちらかが王位につくと思われていました。そこに現れたのが天才サイラス・ルイです。彼は5歳の時に国内の土地区画整理の計画案を出しました。道路を広く取り、道路の雪かきは国が担ったりする法を提案したのも彼です。それ以外にも彼は続々と政策を提案しました。あまりの天才の出現に、サイラス兄上が王位につくべきという声が貴族達からあがりました。そしてそれを聞いた野心家の3歳レイラは、2歳上のサイラス兄上が王位を狙えるなら自分も狙えるとばかりに政治に興味を持ち始めます。平和に過ごしたかっただけの私を推す貴族まで出てきて、ただ兄上に遊んで貰うような幼少期を望んでた私は孤独を極めました。そこで開発した遊びが1人かくれんぼです」


「1人でかくれんぼができるなんて凄いですね。鬼は誰がやるのですか?」


遊びを開発できるなんて尊敬する。

そういう新しい発想ができるようになれば、私もサイラス様の役に少しは立てるだろうか。


「良い質問です。鬼は勝手にこちらで選定します。私がこの通路を見つけた時の鬼は父上でした。母上は実はサイラス兄上が久しぶりの子だったので乳母を使わず自分で育てると言いました。意味がわからないですね、乳母の仕事を奪ってます。でも、王妃が自分で子育てをしているというのは話題になり、貴族間でしばらく流行しましたよ。でも、母上は母が子を自分で育てるといったことが貴族間で流行してしまったので、引っ込みがつかなくなりました。母上は大変でもその後に続く私を含む3人の子も自分で子育てしています。当然、その間父上の仕事のサポートはできなくなります。父上は毎日徹夜で執務室で仕事をしていると言っていました。それにも関わらず、なぜ立て続けに子供ができるのかという謎がこの通路にあったのです。私は初めてこの通路を見つけた時、良いかくれんぼの場所だとしか思ってませんでした。するとその通路を通ってくる人がいたのです、父上でした。昼間から子作りをしていたのかは不明ですが、私は思いもよらず隠し通路を見つけてしまっていたことを知りました。そして、その時父上にこの通路は国王になる人間にしか伝えられない通路だから、この通路の存在はもう忘れるように言われました」


ライアン様が早口で捲し立ててくるので、私は必死に彼の話を聞いた。


「忘れるように言われて、忘れられるものなのですか?」


私には忘れたいことがたくさんある。


前世での犯罪まがいの虐めにあった記憶とルブリス様に押し倒された記憶だ。


それと申し訳ないが、フィリップ様の告白も忘れてしまいたい。


これから親戚になるかもしれないのに、彼は私と気まずくなるとは思わないのだろうか。




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