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12.誘拐されないかハラハラしました。

私は王宮に戻るとサイラス様の執務室に行った

彼の側にいられる時が私にとっては何より幸せな時だ。


サイラス様に街の雪掻きボランティアを募ったことと、フィリップ王太子殿下を3年生として受け入れ卒業資格を与えてはどうかと提案した。


「イザベラ、とても良い考えだと思います。それとこちらに来てください」


サイラス様は応接セットのソファーに座って私に手招きしてくる。

私が戸惑っていると彼は机の上を手で差し示した。


「イザベラ、私はあのような感じのことがしたいです」

机の上を見ると私の作ったサイラス様型編みぐるみの上に、私型の編みぐるみが座っていた。


「分かりました」


私は思いもよらなかったプレゼントの編みぐるみの使い方をされて、ドギマギしてしまう。

彼が座っている上に、ゆっくりと横座りすると緊張してきてしまった。


「あの重くはないですか?」

私が恐る恐るいうとサイラス様がふわっと私を抱きしめてくれた。


「軽くて驚きです。美味しいお菓子があるので食べますか?」


「いえ、胸がいっぱいで食べられません」

私は彼の顔が近くにあってドキドキしてしまい思わず顔を伏せた。


「イザベラ、ルイ国の人々のことやフィリップ王太子のこと色々考えていて凄いと思います。でも、あなたはまた人の為に心をすり減らしていませんか?」


「そのようなことはありません。今日、ルイ国の方が私のことを、うちのイザベラ様と言ってくれたりして嬉しかったです。」


「イザベラはもう合わせると3年はルイ国にいるのですよ。もう、あなたの優しさや温かさは国民に通じています。イザベラがルイ国のアカデミーの送辞でルイ国の人間を温かいと言ってくれましたよね。私もそう思います。この国の人間は年の半分は雪と戦わなければなりません。半年間は誰かに助けられたり、助けたりを繰り返しています。そういった中で仲間意識のようなものが芽生えているように思います。イザベラのことも、自慢の身内のように考えている国民が多いのです。今日は、フィリップ王太子殿下も一緒だったのですよね。うちのイザベラ様はモテモテと言うようなことをいわれませんでしたか? 国民はイザベラを傷つけるつもりで言っているわけではなく、イザベラを誇らしく思って言ってしまっています」


サイラス様は、私が男を手玉に取っているとレイモンド様に言われて傷ついたことを気にしているようだった。

そして彼の予想通りのようなことを、私は今日老夫婦に言われて戸惑ってしまった。


「そのようなことを言われましたが、フィリップ様が上手に対応してくださいました。すみません。私が敏感すぎてネガティブ思考なのがいけないんです。すぐ、被害者妄想に陥ってしまって迷惑ですよね」


「迷惑ではありませんよ。私はその敏感なところがイザベラの魅力だと思っています。繊細なあなたは誰も気が付かないような人の痛みにも気がつき共感します。それによってフィリップ王太子殿下も救われたと思います。彼はサム国で鬱憤が溜まっていたのか、ルイ国ではかなり自由に振る舞っている気がします。実は昨晩ルブリス様からルイ国で演劇をやるから招待したいという手紙を頂いたのです。一緒にいたフィリップ様がそれを見て、イザベラ様にはサイラス国王陛下という運命の番がいるのにしつこい男ですねと微笑みながらいってきました」


私はルブリス様の名前が出てきて、急に不安な気持ちになった。

私にも彼から手紙が来て演劇のチケットが入っていた。


抱きしめてくれているサイラス様が与えてくれる温もりに集中すると、不安が消えていく気がした。

サイラス様が話を続けてくれるよう、私を見つめてくる彼を見つめ返す。


「そのようなやりとりがあったにも関わらず、今日彼はイザベラを追いかけて一緒に出掛けたというではありませんか。レイモンド様は本能のまま動く人間でわかりやすかったですが、フィリップ王太子殿下は本能を抑えられていた期間が長かったせいか突発的にする行動が読めません。私は2人が一緒に出かけたと聞いて、イザベラが彼に誘拐されないかハラハラしました。私も今日はこんな風にネガティブ思考に陥ってました」


「そうなのですか? サイラス様に心配をお掛けしたなら申し訳ございませんでした。私のダメなところを魅力だと言ってくれてありがとうございます。サイラス様もネガティブになることがあるんですね。私が誘拐されたいのはサイラス様だけです。他の人には絶対誘拐させません。私のサイラス様に誘拐された幸せな記憶を汚されたくありませんから」


「イザベラ、どうしてそのように可愛いことばかり言うのですか?イザベラが半年後に、私のイザベラになると思うと幸せです」


サイラス様が私を抱きしめる力を少し強くして、頬に軽くキスしてきたので照れてしまった。



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