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10.吸い込まれるような海色の瞳。

「イザベラ様ご一緒しても宜しいですか?」


平民の街を周りに出ようとした時にフィリップ王太子殿下が話しかけてきた。

彼は来月ルイ国のアカデミーに交換留学生として入学する予定だ。


「もちろんです。護衛騎士を増やせるかサイラス様に相談してきますので少しお待ちください」

私が言った言葉に、フィリップ王太子殿下はゆっくりと首を振った。


「僕は自分の身を自分で守れるだけの力を持っています。ただあなたについて行きたいだけなのです。ご迷惑はお掛けしませんよ」


フィリップ王太子殿下の剣術が一流なのは知っていた。

体を動かしたいとおっしゃったので、ルイ国の騎士団と訓練をしてもらうことにしたら彼の剣術はトップ棋士と同等だったのだ。


「フィリップ様に何かあったら大変なことになります。もし、誰かが飛びかかってきたら私を盾として使ってくださいね」

そういうと彼はにっこり笑って頷いた。


♢♢♢


「サム国の王子様まで、うちの美しい王妃様が好きなのですか?」


平民街の老夫婦のお宅に行くと、開口一番フィリップ様が声をかけられた。

当然かもしれない、私と彼が並ぶと彼に目が入ってしまうだろう。


彼はおとぎ話の王子様のように美しく、世界一裕福な国の王子として有名人なのだ。


私はまだ王妃ではないのに、こう言うことを言われるとなんと返して良いか戸惑った。


「イザベラ様が王妃になるのが待ち遠しいのですね。その気持ちは僕も理解できますよ。今あなたがたがイザベラ様に抱く気持ちと同じ感情を僕も持っています。彼女と接すると皆イザベラ様に好意を抱くほど、彼女は魅力的で美しい心を持っています。しかし、自分が男であるならばその気持ちは消し去るべきだと分かっています。イザベラ様の心にはサイラス国王陛下しか存在しません。そして、その一途な想いを大切にするのが、彼女に想いを寄せた人間のつとめだと僕は思います」


平民の前で腰をかがめ、目線を合わしながら話すフィリップ様の瞳には虜になった老夫婦が映っていた。

私はここまで腰の低い王族を見たことがない。


彼が兄であるレイモンド様のことで謝罪行脚していたと話していたことを思い出した。


「海色の瞳ですね⋯⋯」

私は思わず呟いてしまった。


海上貿易の盛んなサム国の王族の瞳の色を海色の瞳と皆は言う。

吸い込まれそうな深い海をフィリップ様の瞳に感じた。


「サム国のフィリップ王太子殿下の言うとおりです。ルブリス様がいつまでもうちのイザベラ様を想い続けているのが迷惑なのですよね。失礼なこと言ってしまい申し訳ございませんでした」


おばさまが言った言葉にそっとフィリップ王太子殿下が微笑む。


私はこのような完璧な対応をする、まだ11歳の彼を見て胸が苦しくなった。

ルブリス様は平民街を回る時、適当な感じで無礼だった。


彼の気の抜けた感じが上手いこと受け入れられたが、フィリップ王太子殿下は今も細心の注意を払いながら人と接しているのがわかる。


「おばさま、おじさまを作ってみました。宜しければお近づきの印に受け取ってください」

私は彼らと挨拶した後、彼らを模して作った編みぐるみを渡した。


「王妃様は天才ですか? 一生の宝物にします。もう、これは死んでも天国に持って行きたいものだわ。こんな心の籠った贈り物を頂いたのは、はじめてです」


私の作った編みぐるみ2体を嬉しそうに眺める彼らにホッとした。


王妃様と呼ばれることにストレスを感じてしまうのは私が未熟なせいだ。

私の作ったものを喜んでくれているのが嬉しくてたまらない。


「こんな素敵なイザベラ王妃を、フィリップ王太子殿下は好きにならずに済みますか? サム国と戦争になったりはしないのでしょうか?」

不安そうに尋ねてくるおじさまを見て、私は7年前本当にライ国とルイ国が戦争になりそうになったのだと再認識した。


「サム国とだけではなく、10年間ルイ国では戦争は起きません。もしルイ国が攻められたら、サム国は守りに行きます。そのような平和同盟を結ぶよう提案したのがイザベラ様です。安心して幸せを積み上げるような毎日を過ごしてください」


フィリップ様が優しく言った言葉に老夫婦が彼に恋に落ちているのがわかった。



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