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公式企画参加作品

GHOST OR STUDY

作者: 聡子

※フィクションです!母親の話は話半分で読んでください。

本家の話を知りたい方は、ご自身で後からネットサーフィンしてください(^^)

 秋ーーー


 食欲の秋

 読書の秋

 スポーツの秋


 うん、秋は良い。イベントがよりどりみどり。


 運動会

 文化祭

 合唱コンクール


 学校行事だって盛りだくさん。


 だけど、何よりも今一番楽しみなのは…

 それはやっぱり……


 スマホの画面に光る、クラスのグループチャット。それをみて一人ニヤける。

 まさか、そんなまさか!!!

 たった一行の文章。だけどそれが俺の胸を高鳴らせる。


 【”しらとりれいこ”が参加しました】


 クラス1、いや、学年1と言っても過言ではない、あの美人で人気な高嶺の花の白鳥さんが、なんと俺発案のクラスの親睦会に参加してくれるのだ!!!

 それは、きたる10月31日。中間テストのお疲れ様会、兼、ハロウィンパーティー!

 女子と一緒に遊ぶことすら初めてなのに、まさかあの白鳥さんも参加してくれるだなんて!ああ。同じクラスで良かった!白鳥さんを誘ってくれた学級委員のやつ、GOOD JOB!


 一体クラス会ではどんなコスプレをしてくれるのか…。ナース?警察官?それとも……。


 「ぐへへへ」


 嬉しさあまり、過激な妄想を…。つい、ニヤけた顔のまま心の声をこぼしてしまった。


 「え?何?気持ち悪いんだけど…。それより、ご飯中は携帯触っちゃダメっていつも言ってるでしょ?片付けなさい」


 あ、母さんいたの忘れてた。やべぇ、今のキモい顔見られた…。


 怪訝な顔をする母さんに気まずい感情を抱きながらも、急いで表情をポーカーフェイスに戻す。そしてスマホを机の端に置き、目の前のハンバーグを食べ進めた。


 「いや、何でもない…」


 何事もないように答えるのだが、母さんの不審がる視線がチクチクと刺さって来る。痛い…。


 あぁ、やってしまった…。これはやばい…。無視して、早く食べてしまおう…。


 「そういえば、ヒカル?中間テストはいつからなの?」


 俺の焦りも何のその。軽いため息をつき、中二病症状を完全スルーすることに決めた母さんは、同じくハンバーグを食べながらいつもの口調で話を続ける。


 「来週。運動会あったし、全然勉強してないから、これ食べたらすぐする予定」


 あ、やべぇ。テスト近いんだった。全然勉強してねえ…。


 本当はすっかり忘れていたのだが、何食わぬ顔で無難にそう返す。

 それにしても、運動会の後すぐテストとかまじで学校は鬼畜。

 だが、今はテストより、月末のハロウィーンパーティーだ!

 早く部屋に戻って、グルチャでいいから白鳥さんと会話したいぃぃ!!!

白鳥さんにどうやったら好印象をもってもらえるのか、それが俺の中で一番の最優先事項なのだから。


 取り敢えず、母さんには勉強しとくって言っておけば問題ないだろう…。


 「お母さん分かってるのよ。ヒカルの頭の中、どうせハロウィンにするとか言ってたクラス会でいっぱいなんでしょ?去年と同じでお友達とコスプレでもするの?」


 箸がとまる。

 やべぇ。母さん、エスパーか?


 「でもね?中間テスト、一学期みたいな点数とってきたら、そのクラス会欠席させるわよ。プラス、期末テストまで携帯没収するからね」


 冷たい声。凍てつく視線。


 やばい。それは困る。

 白鳥さんとハロウィンパーティーで仲良くなって、文化祭の準備とかでもっと距離縮めて、そんでもって、時期が来たら、絶対に告白して成功させるんだから!スマホがないとか、ホント勘弁!俺の完璧な予定が台無しになる!


 「大丈夫!これでも夜更かしで勉強しているんだから!」


 慌てて弁解するも、母さんの視線が痛い。暫くの沈黙の後、ため息混じりに急に語り出した。


 「お母さんね、ヒカルにジャックさんみたくなって欲しくないのよ」


 ん?誰それ?外国人の知り合いなんていたっけ??


 「ジャックさんって誰?」


 だが、俺の素朴な疑問がそんなにも意外だったのか、母さんは目をまん丸にして、口を大袈裟に大きくあける。


 「世界史とってるのに、ジャックさん習ってないの?ハロウィンの創始者よ!!」


 「???あ、あ〜。!!!ジャック・オー・ランタンのこと?」


 ジャックさんて、創始者て、何だよそれ!

 ジャック・オー・ランタンって、ハロウィンの日に飾るかぼちゃのことだから!

 と、一応一通り心の中で突っ込む。

 が、母さんは俺の困惑する顔に気づかず、話を続ける。


 「ハロウィンの歴史はね、ジャックさんの辛い過去からの戒めで始まったのよ…」


 「…??」


 なんだ?話が見えない…。


 「ジャックさんの生まれた国はね、九月が入学式だったの。ヒカルと同じで、第一志望校に合格したジャックさんは、受かったことに喜んで、勉強を全くしなかった」


 ん?ハロウィンやんね?何の話?ってか続くの??


 「それは、最初のテストの日。そう。10月31日。ジャックさんのスコアはなんとほぼ全て0点。そう、テストで惨敗してしまったのよ。そこから彼の転落人生が始まった…」


 「いや、ハロウィンってそんな感じやったっけ?」


 俺の声は届かない。


 「クラスメイトから笑われ、教師から叱咤を受けてしまったジャックさんは、不登校になり、その後学校を退学。仕事に就くも長く続かず、お酒に溺れる日々…」


 「いや、ジャックの年齢が高校生なら、未成年飲酒ってダメじゃね?」


 だが、母さんは無視。


 「お酒に酔いつぶれ千鳥足で歩いていたジャックさんは、一年後の10月31日の日に、目の前にあったカボチャにつまづき、床に頭を強くぶつけて、帰らぬ人に」


 「え?どういう状況?」


 「ジャックさんは、死者の世界で自分の怠惰を悔やんだの。あの時もっと勉強してたら、こんな人生ではなかったかもしれない…。だから、毎年10月31日にカボチャを持って子供たちの前に現れるようになった」


 「ねぇ、話変わってるくない?」


 「勉強をしていない子どもを見つけては、夜中に彼らの部屋に忍び込み手紙を残したのよ。ゴースト OR スタディ。勉強しないとお化けがやってくるぞ~って。沢山の子どもたちへとその戒めの手紙を送ったの。ある日、部屋へ忍び込むジャックさんを見た子供は気を失ってしまった。彼の顔は真っ白でまるで骸骨のような風貌をしていたから。ジャックさんを恐れた家族たちは、彼がこの世を去った原因となったかぼちゃを家の前に置いて彼が二度と入ってこられないようにしたの。これがハロウィンの本当の歴史なのよ…」


 「いや、トリック OR トリートだし!何だよその話!地味に怖い、ただの不審者の話じゃん!」


 「ほら、ヒカルも将来お酒に溺れて、未練たらたらでポックリ死にたくなんてないでしょ?だったら、コスプレ大会化した変なイベントに惑わされないで、ちゃんと勉強しなさい」


 母さんの話は意味不明。だが、俺に勉強させないと…、との強い意志は何となく感じ取れた。


 「分かったよ」


 とりあえず口先だけでも、母さんにそう答えることにした。




夕食後


 母さんの言いつけ通り、とりあえず勉強しようと机に向かう。

 が、


 〜〜〜♪


 急に鳴り出した着信を知らせる音楽。スマホの画面をみて、息を呑む。


 【しらとり れいこ 着信】


 えー!

 なんで?なんで?なんで?

 なんで何人もいる男性陣の中で俺に電話が!?

 いや、落ち着け…。もしかしたら、皆んなに電話しているのかも…。

 いや、それはないない!!白鳥さんはそんな軽い女の子ではないと信じたい!!


 「もしもし?」

 頭はパニック。だけど混乱よりも、白鳥さんへの好意が勝ってしまい、つい電話に出てしまった。

 「あ、もしもし?ヒカルくん、勉強中だった?ごめんね…」


 あぁ。なんて可愛らしいんだ。まるで鈴のような声…。やばい。このままとろけてしまいそう…。


 一人部屋でよかった。こんな顔誰にも見せられない。


 「大丈夫。どうした?」


 動揺を抑え、できるだけ平然とした声で答える。

 少し声が震えているような感じがするが、もし聞かれたら、電波が悪いってことにしよう。


 「あのね…」


 コンコン


 彼女の声と共に、誰かがドアをノックする音が聞こえた。

 母さんかも、と思い、「ちょっと待ってて」と白鳥さんに伝え、扉を開け外を確認する。

 だが、そこには誰もいなかった。


 空耳かな…??


 そう首を傾げた時、


 コンコン


 再度音が聞こえた。

 が、それは部屋のドアではなくて、ベランダの窓から。


 何だろう…?風の音?


 カーテンをシャッと勢いよく開ける。




 「ぎゃああああああああああああああああああ」




 暗い窓の外にいた人物を見て、それは大きな大きな悲鳴をつい上げてしまった。


 「え?え?大丈夫??」


 携帯画面から可愛い白鳥さんの声が漏れてくる。

 心臓が飛び出るほどの驚きと、恥ずかしさや情けなさの感情が入り乱れ、次第に顔が熱くなってきた。


 なんと、窓の外には懐中電灯で自身の顔を光らせている母さんがいたのだ。

 しかも、ペンか何かで丁寧に顔を白く塗っている。

 不審者かと思った…。怖い。怖すぎる。なんだよ、俺が一体何したっていうんだよ!!!


 白鳥さんの声はもう俺の耳に届いていなかった。怒りが頭を支配し、力任せに強く窓を開ける。


 「何?母さん?」


 「言ったばっかりじゃない」


 俺の低い声をもろともせず、あっけからんとした口調。そして、何か一枚の紙を手渡してきた。


 「え?」



 その紙にはこう書かれていた。



 【GHOST OR STUDY】


 「勉強しないと、お母さん化けて出てやるぞって…」



- FIN -

HAPPY HALLOWEEN!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 秋の公式企画から拝読させていただきました。 楽しい作品ありがとうございます。 お茶目なお母さんがかわいいです。
[良い点] ハロウィンにそんな由来があったなんて!お母さんがツボでした! こんなお母さんだったら、テストも面白く乗り切れそうですね。
感想一覧
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